第十話 はじめての抱っこ
ここ最近落ち着いている。そう私は思っていました。毎日母乳を届け、コロナ禍のため時間制限のある面会時間をたった1人通い続ける。主人はもうこの頃は育休も終わり、出社していました。仕事が終わってから面会に行っていたようです。仕事が休みの日は2人で面会に行きましたが、コロナ禍であるため入れるのは1人だけ。制限時間めいっぱい双子と触れ合って、主人と交代していました。NICUにいくと、まだ双子は1番広くて薄暗い場所にいて、大きな大きな保育器に入っています。まだ妊娠週数でいうと30週をこえたくらい。なのにもう生誕1ヶ月を過ぎていました。不思議な感じ。相変わらず自発呼吸はないのでお口に人工呼吸器を装着し、母乳を飲ませるためのチューブがお鼻に入っていました。それでもおめ目をぱっちりあけて、動く姿にとても癒されました。この頃は、毎日NICUにつくと、今日は何gでした、と体重を教えてくれました。日々増えていく体重に喜びながら通う日々。飲むミルクの量も毎日少しずつ増え、毎日毎日記録していました。ほんとに、少しずつしか増えないんですけどね。特に問題が起きることも無く、状態は落ち着いていました。この頃、やっとはじめての抱っこが叶いました。普段は保育器の中に横になっている双子に、そっと手をあてるだけしか出来ません。でもこの手をあてて包み込んであげるのが大事だそうです。名前を呼びながら、たくさん触れました。未熟児で産まれると耳が聞こえていないこともあるそうですが、検査はまだまだ先。聞こえている、と信じ、たくさん話しかけました。初めての抱っこは、当然ほんの数分。色んな管が付いているので、簡単ではありません。私が椅子に座って、看護師さんがクッションに包まれたハヤテくんをそっと渡してくれました。軽い本当に軽い1キロにも満たなかった体重の時だったので、全然ずっしりでは無かったです。でも可愛いやっと抱っこできたたくさん管が繋がっていて、そーっと抱っこすることしか出来ないのですが、ものすごく幸せな時間でした。音ちゃんは、また後日抱っこさせてもらいました。意味はわかっていないのでしょうが、その時の写真には、片手をあげてカメラ目線で挨拶する音ちゃんが写っています。すぐに保育器に戻る我が子。やっぱりまだ暖かい保育器の中にいないといけないわけです。でも、抱っこはもっともっと先の話だと思っていたのでとても嬉しかったです。幸せな気持ちで数日過ごしましたが、第4の関門がやってきてしまいました。話には聞いていましたが、やっぱりうちの子たちにも発症してしまいました。未熟児網膜症これからが更に長い戦いになります。とても辛く、何度も死にたいと思いました。早く産んでしまったがために起きる病気どうかどうか神様2人から視力を奪わないで毎日毎日祈りました。