★★★★☆(星4)
<My Opinion>
タイトルが示す通り、本書はプロフェッショナル・コンサルタント(コンサルティング)が今後どうあるべきかについて書かれたものであるが、コンサルタントに限らずプロフェッショナル・ビジネスマンとしてのあるべき姿についても示唆に富む部分が多くある。
著者の波頭亮氏と冨山和彦氏はキャリアのスタートがトップ戦略系コンサルティングファーム(波頭氏はマッキンゼー、冨山氏はBCG)であるという共通点を持つ。20代の頃から積み重ねてきた豊富な現場経験に基づく提言や発言内容は開眼させられることが多かった。
コンサルタントの話は、「インテリ気取りで鼻につくことが多い」と言う人もいるが、私はそう感じない。優秀なコンサルタントは「頭の使い方」について徹底してトレーニングを積んでいるので、こういったその人達の会話を聞き、話の展開やテーマを追うだけで、普段自分の仕事で知的に怠惰になっている部分、足りない部分が見事に洗い出されてきて日々の業務改善に役立つ知恵を得ることができる。この本もそういう使い方ができる。さらに言えば、思考を整理して、自らの仕事を大局的に捉え直して再定義するきっかけも作ってくれる。何気ない対談の中にも本質的な部分の多い面白い本。星4つ。
以下参考になったところを抜書き。
<Memo>
●パラドックスを内包している経営の本質的な構造
「利益の追求」「バリューの創出」「組織による活動」というのが会社の3つの要件です。つまり、利潤追求は資本の本能であり、会社の本能。だから環境変化にミートしようとするし、顧客のニーズにミートしようとする。これは健全ないい本能です。儲かるほうへ行かないと目的は達成できないから。
ただし一方で会社には、もう一つ、厄介な本能があります。それは会社が人の集団、組織であるということから来ている、組織の本能です。組織の本能が求めるものは、自己増殖と変化の排除です。会社と違って資本の本能を持たず、組織の本能だけで動いている官僚組織を見れば一目瞭然でしょう。「そういうことは前例にありません」なんてことを言って新しいことは拒みながら、年々増殖し膨張しようとする。変化の排除と自己増殖。これが組織の本能なんです。
こうして会社は、資本の本能と組織の本能が二重螺旋のように絡んで動いていく。資本の本能が環境変化に合わせて事業分野や戦略スタイルを変えようと志向する。しかし、新しいことはやりたくないとする組織の本能が障害になるという中で、舵取りをするのが経営、マネジメントだということです。これが一番ベーシックな会社と経営に関する定義です。(波頭亮P35)
リーマンショックの本質とは、非代替的な経済資源であるインテリジェンスは、実は制御不能に陥ることもある、ということです。株式会社は、資本家が経営者を代理人として選んで、契約で資本家の目的である利潤の極大化を委託している、という仕組みです。そして希少資源である高度なインテリジェンスを持つ人材であれば、経営者として資本家と契約を結ぶ際に、極めて有利な条件を認めさせることができるわけです。たとえばリーマンブラザースのトップみたいに。具体的に言うと、リスクの大きな勝負を張って大儲けしたら50億円とか100億円とか、とんでもない額のお金が報酬として貰える。一方、失敗して500億円とか1000億円とかの損失を出しても、クビになるだけで済む。(波頭亮P38)
●クライアントとの関係は「どっちが考え尽くしたか」という真剣勝負
コンサルタントでも経営者でも、経営マターとか経済マターとかについて30分か1時間話をすると、相手の力量というか見識の深さ・広さというのはわかりますよね。それで相手に認めてもらえると最初のドアが開いて、次に2番目のドアが待っている。自社に関するクリティカルなイシューを投げかけたとき、どれくらいリアリティを持ってその話を理解し、問題意識を共有化できるかを判断される。(波頭亮P96)
●業界誌2年分を読み込めば業界の仕組みと構造が見えてくる
すごく具体的な話でいうと、どの業界でも業界新聞とか業界誌ってありますよね。私がよくやっていたのは、2年分を読むことでした。新しいクライアントが決まると。月刊誌2年分、24冊。1ページ目から最終ページまで全部読む。そうするとね、ターミノロジー(専門用語)だったり、業界の基礎的な仕組みだったりについてだいたい基礎知識ができる。業界誌って1年間の間にはだいたいの重要なテーマを取り上げるから、一通りのことがわかってくる。(波頭亮P128)
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