★★★★★(星5)
<My Opinion>
タイトルに「営業」と入った本を読んだのは人生でほぼ初めてかもしれない。大前研一氏の主張は以前から共感できるところ多く、本書もかなりの期待感を持ちながら読んだ。実際にその期待は外れなかった。大前氏が実際に執筆している箇所は全体の5分の1くらいで、後の部分は氏が学長を務めているビジネス・ブレークスルー大学の教授陣がテーマ毎に書いているがテーマ別の内容も一級。テーマは下記の通り。
第一章 営業のプロフェッショナル化
第二章 問題解決型営業のすすめ
第三章 営業のマーケティングマインド
第四章 営業のセルフ・マネジメント力
第五章 営業チーム力の向上
執筆者全員がコンサルタント出身であり、こらからの「営業」のあるべき姿がアカデミックかつ体系的に整理されている。もちろん浮世離れした理論ではなくて、現場の営業担当者が行動指針とできるような地に足のついたものだ。営業活動は没頭すればするほど、視野狭窄に陥りやすい。本書は日々の営業活動の理想形を提示してくれる羅針盤である。
以下参考になった箇所をメモ。
<Memo>
売った買ったの短期的なつきあいではなく、顧客の庭で考え、信頼を勝ち得、長期的な関係を築くことが大切です。顧客の求めているものを実現するために、障害は何か、どうすれば解決できるのかを、顧客の立場になって、脳に汗をかきながら考え抜き、問題解決について提案できなくてはなりません。顧客主義を徹底し、組織の利己主義を抑え込み、期待を上回るレベルで問題解決を提案し続けることにより、顧客の信認は増します。そしてあるとき、営業が単なる業者からパートナーに変わる瞬間が訪れます、このとき初めて営業は、真のプロフェッショナルになれるのです。(大前研一P5)
以前から「顧客の顧客」に関する情報が重要であることはいわれていましたが、現実に「顧客の顧客」のところまで足を運んで情報収集している営業担当者はなかなかいないものです。特に代理店販売を中心に行っている企業の場合、ほんの数パーセントのエンド・ユーザーの求めているニーズしか理解していないのではないでしょうか。(斉藤顕一P63)
私にいわせれば、モノが売れないのではなく、売るためにはどうすればよいのかを考える力が足りないのです。それは思考停止であり、怠慢です。営業は「体力勝負」に加えて「頭脳勝負」の時代に入ったことを理解しなければなりません。繰り返しますが、これからの時代は営業が主役になるべきです。企業が生き残り、さらに発展していけるかどうかは、営業担当者一人ひとりの考える力をどれくらい伸ばせるか、そして常に時代に即した営業体制の構築を「学び続ける組織」にできるかにかかっているといえるでしょう。(斉藤顕一P81)
コモディティ化した商品を売ろうとする場合、顧客はより安く、より有利な条件で買おうとします。逆に、営業担当者はより高く、より有利な条件で売ろうとします。両者は絶えず相反する利益を追求する緊張関係に置かれていて、そのせめぎ合いのなかで着地点を探りあいます。営業担当者にとっては、それが自分自身の結果として常に表れるわけですから気苦労が絶えません。(川上真史P124)
一般的にコンピテンシー(※)・レベルは次の五段階で示すことができます。
レベル1 だれかから指示されたことをそのとおりに確実に実行しているレベル
レベル2 ある状況に置いてやるべき当然のことを自主的に実行しているレベル
レベル3 状況を的確に判断することで、その状況のなかでできうるアプローチのなかから、最適なものを選び出し、実行しているレベル。
レベル4 閉塞状況、困難な状況でもあきらめず、打破する方法を独自の工夫で考え出し、実行しているレベル。
レベル5 パラダイム転換し、すべての成果がそこに集まるような独自で新しい状況をつくっているレベル。
(川上真史P141)
(※)その時々の状況に応じて、最も効果的に成果につなげる方策を考えて実践する力
- 大前研一と考える 営業学/ビジネス・ブレークスルー大学大学院 ビジネススクール教授陣 大前 研一
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