★★★☆☆(星3)
<My Opinion>
本書は歌舞伎町案内人である李小牧と加藤嘉一の対談録。といっても李小牧という人物を知らなかったので、「歌舞伎町より愛をこめて」と「歌舞伎町の中国女」という以前の著作を読んでみた。なるほど、1988年に来日して以来、20年以上歌舞伎町に立ち続けている日本人も驚きの歌舞伎町案内人。日中両国で徹底的に現地化した2人の対談ということで、かなり興味引かれて読んでみた。
しかし、両者はさすがに活躍するフィールドが違いすぎて深い対談はできていない。李氏は作家ではなく、あくまで案内人という立場だから「政治から性事まで幅広く扱うことができることが強み」と自ら書いている。そうはいってもやはり専門は「性事」。加藤氏の専門はどちらかと言えば「政治」だからこのような対談になるのも無理もない。とはいえ、この対談はとても斬新であり、企画したメディア総合研究所の編集者のユニークな視点は評価したい。
本書では加藤氏の議論の対談の運び方の巧みさに改めて感心した。さすがに中国で言論活動を展開しているだけあって言葉選びや議論の切り替えしが上手だ。例えば李氏の質問に対するこの件。
李:加藤さんが感じた日中のセックス観の違いも聞きたいよ。日本と中国、どっちの国の女性が良かった?
加藤:すいません。僕は李さんほど経験豊富じゃないし、仮に豊富だったとしても、李さんほど何のためらいもなく、むしろ話したそうに性の話をするには性格がシャイ過ぎるかなって思います。「日中の女性」という問題に関しては、僕にもそれなりにイメージ・感想というものがあるので、少し冷静になって分析しますね。(P99)
自らのイメージを壊さないように、かつ李氏のドストレートな質問に対して自分のフィールドにできる限りひきつけるカタチで答えているところはさすがに鍛えれられていると感じた。
最後に両者の価値観が現れていた印象的な箇所を抜書きしておく。
<Memo>
その国の良さを理解できない人というのは頑張ってない人だと思うんですよ。例えば五年間も日本にいるのに日本が大嫌い、合わないと言っている人、いっぱいいますけど、そういう人に限って日本語があまり喋れなかったり、日本の文化を理解しようとしていなかったりする。(P86 李)
どっちがいいかという議論にはしたくないですね。どっちでもいいんですよ。会社に入りたければ入ればいいし、個人で仕事をしたければすればいいし。僕が言いたいのは、どちらか一方が当たり前の価値観になっちゃうと、社会としては極めて危ないということなんです。世の中には複数の選択肢があって当たり前なんですよ。そういった選択する権利を授けられているんですよ、国民ひとりひとりには。ただ、なんとなくこっちが正しいという道が「空気」に乗ってやってきて、それを無視できないというのが悲惨な状況。(P159 加藤)
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