相続放棄は慎重に! | 「儲け」のためにできること

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先日、相続のご相談に来所されたお客様のお話です。


ご主人が亡くなって、奥様と娘さん2人が相続人です。


娘さん2人は、亡き父の財産(自宅と預金。借金はなし)はすべて母に相続してほしいという気持ちがあり、

2人そろって家庭裁判所に相続放棄の手続きをしたそうです。

これで全ての財産が母に相続されると思ったところ、実はそうではないことが後からわかり、

びっくりして相談にみえました。

娘さん:「どうやら、私たち娘2人が相続放棄をしたことによって、

相続人は母と父の兄弟になったと言われたが本当でしょうか?

ちなみに父の両親はすでに亡くなっています」

江原:「なるほど~、それは本当ですね。お父様の兄弟はいらっしゃいますか?

又、すでに亡くなっている方はいますか?その場合、

亡くなった兄弟にお子様はいらっしゃいますか?」

娘さん:「父以外の兄弟は3人いて、1人はすでに亡くなっていて子供が2人います」

江原:「相続人になるのは生きている兄弟2人と、

すでに亡くなっている兄弟の子供2人の合計4人なので、

お母様も含めて相続人は全部で5人ですね。

その方たちの連絡先などはわかりますか?」

娘さん:「一部の方は疎遠になっていて連絡先はわかりません・・・」



家庭裁判所に相続放棄の取消しについて相談しましたが、

すでに放棄の申請が受理されており、脅迫や詐欺ではないため、

今回のケースでの取消は難しいとのことでした。

さて、どうしましょう???
亡き父の財産を全て母が相続するためには相続人全員の同意が必要となります。

具体的には、母が全ての財産を相続するという内容を記載した「遺産分割協議書」に

相続人全員の署名捺印が必要となります。

まずは、相続人全員と連絡をとり事情を説明することから始めました。

相続人の住所を調査し、娘さんからお手紙を送付してもらいました。

 

幸い、全ての相続人に連絡がとれ、相続権を主張されることもなく、

無事に遺産分割協議書に署名捺印をしていただくことができました。

 

兄弟の相続権は全体の4分の1あるため、相続権を主張された場合、

母は全部の財産を相続することができませんでした。


今回の場合、娘さん2人は家庭裁判所に相続放棄をせず

「遺産分割協議書」に「相続人 ○○(娘さん2人)は財産を取得しない」

記載して署名捺印する(実質放棄)をすれば全ての財産を母が相続することができました。


相続人となる順番は決まっていて、

第一順位は子供、第二順位は父母(又は祖父母)、第三順位は兄弟姉妹となります。

 

先の順位の相続人が相続放棄をすることによって相続権は次の順位に移ることになるので、

第一順位である娘さん2人が相続放棄したことにより、

第二順位の父母に相続権が移りましたが、

すでに亡くなっているので、第三順位の兄弟姉妹に相続権が移ってしまったという訳です。


相続放棄をすることにより税金計算にも影響が出る可能性がありますので、

どのような影響が出るのか慎重に検討したうえで相続放棄をする必要がありますね。


担当:江原智恵子