会社の承継の準備(事業に関わってない株主の整理) | 「儲け」のためにできること

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先日、とある知り合いの社長から会社の株主が多数おり、

整理をしたいとのご相談を受けました。


株主の方が保有している株式を会社が買い取っていきたいということです。
理由を聞くと、ゆくゆくは会社を大きくしたいので株式を社員にも買ってもらいたい。

そのために金庫株として買いやすい状況を作ってあげたいということでした。


「現状の把握」と「やることの決定(誰からいくらで買うか?)」を考えました。

まず、会社の株主状況は以下のとおりです。

 


業歴が長い家族経営特有の、会社に関わっていない株主がわんさかいます。
会社に関わっている株主はA(社長)・B(会長)・K(取締役)の3名です。
なお、A・B・Kそれぞれに家族関係はありません。
※AとKは、ゆくゆくは親子関係になる予定らしいです(現在進行中)

よって今回は、CからJまでの会社に関わっていない株主の26,500株を

会社が買い取ることとしました。

いざ取り掛かろうとすると、ここで問題が発生しました。
1.FからJまでの所在が不明
2. 株式を評価してみると株価が0円

1については専門家に頼んで所在は分かりました。
しかし、2についてはどう頑張っても株価が出てきません。

実はこの会社は債務超過で自己資本がマイナスだったのです。
会社法上、会社が株主から買い取るには配当可能限度額を上限とするという制約を受けます。


配当可能限度額とは、その他資本剰余金+その他利益剰余金で計算されます。

基本的に自己資本がマイナスだと、配当可能限度額は0となってしまいます。
会社が株主から株式を買い取る行為は、出資の払い戻しとされ、

配当ができない会社は出資の払い戻しとされる株式の買い取りをすることができないのです。


したがって、まず会社が株式を買い取ることはそもそも無理だったということが判明しました。

ここで私は、社長の以下の提案をしました。
株式を買うのは会社ではなく社長(株価は1株50円・総額132万5千円)
・買った株式は最終的に後継者となるKにあげる(社員に買わせない)

理由としては以下のようなものがあります。
・株価が0円とはいえ、タダで譲れとは言えないので手続料代わりとして1株50円
(Fには60万円払うが、仮に税務署に贈与と認定されても税金はかからない!)
社員に買わせると急に辞めたり亡くなったりしたときに手間がかかる
(社員には株より絶対に高い給与!)

・最終的にKに集約させ、他の株主を気にすることなく経営できる環境を作ることが

 社長のやるべき事業承継の準備だと思う
(中小企業は社長=株主が一番経営しやすい!)

後日社長から連絡があり、不本意だが所在が不明だった株主を探す手間(時間やお金)がかかったことを考えると、

Kにはその思いをさせたくないという気持ちになったそうです。

このように株式がたくさんの株主に渡ってしまった原因は、この会社の場合には相続にあります。
現在、所有者不明の不動産(空地や空家)が問題になっているように、

株主名簿に行方の分からない株主や故人が載っている会社も存在します。

今後、後継者不足により事業を辞めたりM&Aで売却したりする会社が増えてくることが予測されます。
その際に株式(株主状況)はとても重要になってくることとなるため、

株主の整理を今のうちから行っておいてはいかがでしょうか?

 

担当:堺 友樹