プレンティ・プレンティ・ソウル/ミルト・ジャクソン | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

「ドコモ口座」を通じて銀行の預金が不正に引き出された問題。

これ、本当に大変なことだと思います。

 

このニュースを最初に知った時、私は「ドコモ口座」が乗っ取られるなどして

お金を引き出された話かと思っていました。

つまり、「ドコモ口座」を持っている人の問題で、

自分には全く無関係なことだと考えていたのです。

 

それが、よくよく聞けば「誰にでも起こり得る話」ではないですか!

これまでに明らかになっている被害は、

本人に「なりすました」何者かによってドコモ口座が開設され、

いつの間にか銀行口座から預金がそこに送られてしまう、というものです。

つまり「なりすました」犯人が作った、ある意味「ニセ口座」にお金が流れている状況なのです。

 

かなり単純化すると、背景としては3つのことがあるようです。

①ドコモ口座は本人確認するもの(免許証など)がなくてもメールアドレスだけで開設できた

②被害が確認された銀行のセキュリティが弱かった(ショートメールなどを使ういわゆる「2段階認証」がない)

③ユーザーの口座情報や暗証番号、生年月日などが知らない間に盗まれている

 

最も責められるべきはNTTドコモでしょう。

顧客を増やすために口座を開く手続きを簡単にした結果、

本人確認が不十分となり、悪意のあるユーザーによるなりすましを防げなかったことを

10日(木)の会見で認めているそうです。

 

スマホ決済などキャッシュレスサービスは今後、ますます進んでいくことでしょう。

今回のように銀行が様々な事業者と組んでお金の流れを作っていくことも

当然、増加すると思います。

それゆえに関係者が「あっちがセキュリティをやってくれるだろう」と油断せず

協力し合って安心できるシステムを作って欲しいと思います。

 

今回は(おそらく)軽いノリで「なりすました」ジャズ・ミュージシャンの演奏を聴いてみましょう。

ミルト・ジャクソン(vib)の「プレンティ・プレンティ・ソウル」に参加している

キャノンボール・アダレイ(as)の登場です。

 

このアルバムではミルトの9重奏団と6重奏団のセッションが収められています。

両方のアレンジを若きクインシー・ジョーンズが行っているのが特徴。

気の利いた仕掛けをしつつ、参加したプレイヤーの個性が生きるようなアレンジが

随所に施されています。

ミルト自身の演奏もモダン・ジャズ・カルテットのきっちりとした演奏とは違い、

ブルージーでかなり奔放なものになっています。

 

キャノンボールは契約の関係でロニー・ピーターズという変名を使って参加しましたが、

すぐに彼だとわかるサウンドがあります。

あっさり分かる「なりすまし」ではありますが、当時は契約がそれほどうるさくなかったのか

キャノンボールは他の作品でも変名を使っています。

 ↓

https://ameblo.jp/slowboat/entry-10769363609.html

 

ちょっとした遊び心も感じられる「なりすまし」は許せる、かな・・・。

 

1957年1月5日と7日の録音。

 

Milt Jackson(vib)

Ronnie Peters(as)※Cannonball Adderley

Frank Foster(ts)

Lucky Thompson(ts)

Sahib Shihab(bs)

Joe Newman(tp)

Jimmy Cleveland(tb)

Horace Silver(p)

Percy Heath(b)

Oscar Pettiford(b)

Art Blakey(ds)

 

①Plenty,Plenty,Soul

ミルトとクインシーが共作したブルース。

冒頭、ホーン陣によってやや大仰なテーマが提示されます。

これにミルトのバイブラフォンを重ねるのがクインシーらしいところ。

シンプルなブルースにハッとさせる響きを持たせてくれるのです。

最初のソロはホレス・シルヴァーによるピアノですが、

これも単にピアノに渡すのではなく、

ホーンとピアノによるコール・アンド・レスポンスを経てからというアレンジがクインシーらしい。

非常に自然にソロの世界に入っていけるのです。

この後、ジミー・クリーブランド(tb)らのソロも入りますが、

やはり聴きものはロニー・ピーターズ、ではなくキャノンボールです。

とにかくビッグ・トーンでねちっこくブルースを歌いあげる演奏は目立ちます。

他のプレイヤーよりも「仕掛けてやろう」という熱意が見え見えで

かえって清々しいくらいです。

これを受けてバンド全体が燃え上がり、ブレイキー(ds)の煽りと共に

ホーンのアンサンブルが鳴り響いてリーダーのミルトのソロにつなぎます。

ここでもホーンとのコール・アンド・レスポンスを挟んでミルトの長尺ソロにつなぐという

なかなか憎いアレンジ。

ミルトが5分10秒過ぎからブレイキーと息を合わせてテンポを速めていくところなど

ブルース魂とスリルが混ぜ合わさって最高です。

ミルトのソウルをうまく引き出したメンバーとクインシーに感謝したくなります。

 

③Heartstrings

ミルトのオリジナル・バラッド。

非常に短いホーン・アンサンブルがやむと、ミルトからスローなメロディが提示されます。

バラッドで数多くの名演があるミルトですが、ソウルの表出と一音一音の説得力という点で

これは最高の一つに数えられるのではないでしょうか。

スローな中で時に強打が迫ってくるのが特徴で、

ギリギリのところでバランスを崩さないセンスが素晴らしい。

続いてキャノンボールのソロ。こちらは彼らしいソウルフルな演奏で

ややテンポを上げながら音数も多くグイグイと前に進んでいきます。

しかし、最後はテンポを落として詩情は失わずにリーダーに巧みにつないでいく。

やはり一流のプレイです。

これを受けたミルトはスピードを上げたソロを展開し、

その確信に満ちたプレイに圧倒されます。

最後はメロディに戻りながら独奏を挟んでエンディングへ。

独奏のスペースを与えたのはクインシーの仕掛けだと推測しますが、

見事にはまっています。

 

ドコモ口座の被害は、11日午前0時までに確認されただけで

全国12の銀行で73件、合わせて1990万円に上るそうです。

いつのまにかお金が引き出されているわけですから、実際の被害はもっと大きいでしょう。

 

バーチャル空間上で気軽に「なりすまし」ができる時代。

便利になった一方で、悪意のあるものに対して常に構えなくてはいけないのは困ったことです。

記帳しに行こうかな・・・。