Live!/ジム・ホール | スロウ・ボートのジャズ日誌

スロウ・ボートのジャズ日誌

ジャズを聴き始めて早30年以上。これまで集めてきた作品に改めて耳を傾け、レビューを書いていきたいと考えています。1人のファンとして、作品の歴史的な価値や話題性よりも、どれだけ「聴き応えがあるか」にこだわっていきます。

 

分かりやすい・・・・。

最近、世の中を眺めていて「悪い意味」でそう思います。

 

18日(金)、経営破綻した健康器具販売会社「ジャパンライフ」の元会長、

山口隆祥容疑者(78)が逮捕されました。

「ジャパンライフ」は高いもので数百万円する磁気治療器のオーナーになれば、

そのレンタル収入によって年に6%の高い配当金を得られるとうたっていました。

 

高齢者を中心に出資を募っていたのですが、

実は「ジャパンライフ」は大幅な債務超過に陥っていることを隠していました。

配当の見込みがないのに顧客を勧誘していた疑いが強く、

被害総額は2000億円に上ると警視庁はみているそうです。

 

「ジャパンライフ」はずいぶん長い間、疑いが持たれている会社でした。

既に消費者庁が違法な訪問販売などを問題視し、4回にわたって業務の一時停止命令を出しています。

3年前の2017年12月には、資金繰りに行き詰って銀行取引が停止にもなっているのです。

 

それがなぜ「いま」の逮捕なのか。

正直、安倍政権の退陣と関係があるように思えます。

既に報道で取り上げられている通り、2015年に山口会長のもとに届いた

あの「桜を見る会」の招待状が顧客の勧誘に使われていたからです。

 

招待状が印刷された資料には

「内閣総理大臣から山口会長に『桜を見る会』のご招待状が届きました」と書かれ、

政権と山口会長が近い関係にあるという印象をセミナーで与えていました。

安倍総理は去年12月の国会で

「山口氏とは1対1のような形で会ったことはなく、個人的な関係は一切ない」

と述べていますが・・・。

 

政権に都合が悪いものの逮捕は「先延ばし」され、首相退陣が決まったらすぐに警視庁も動き出す。

新政権発足からわずか2日後、朝7時半の逮捕を受けて

午前中には官房長官が「桜を見る会の再調査はしない」と記者会見で表明する。

フタをしたい事実を長引かせず、すぐに忘れさせるための

何とも「分かりやすく」、つまらない展開ではありませんか。

 

こうした「底の浅い」話にはもう飽き飽きしました。

次々に重要なことを生煮えのまま「終わらせ」て、

必要な課題解決を先送りしていくのは前政権の得意技でした。

 

私たちは新しい政権が立ち上がったこの機会に

「分かりやすい話が消費され、そのまま終わる習慣」が続かないように注意しなくてはいけません。

政権とあやしい会社がつながった事情こそが問い続けられるべきで、

そこは「分かりにくいが、大切な話」なのです。

権力側の姑息なストーリーの流れに乗っかってはいけません。

 

分かりにくいものに、大切なことがある・・・・。

今回はそんなジャズを聴いてみましょう。

ジム・ホール(g)の「Live!」です。

 

ジム・ホール(1930-2013)は非常に高い評価を受けているギタリストですが、

派手さはありません。

バリバリ弾きまくるのではなく、「間」を生かすなど「静寂」にも注意を払った人です。

「大衆受けする」スタイルではなく、パット・メセニーをはじめ

同業のギタリストに絶大な影響を与えた功績が大きいと言えるでしょう。

 

「Live!」もまた、彼の代表作の一つでありながら

「分かりやすくはない」1枚と言えるでしょう。

ギターとベース、ドラムスによるトリオという編成。

ホールの繊細なギターが引っ張るわけですから、センセーショナルな内容にはなりません。

しかし、聴きこむほどにすごさが伝わってくるのです。

非常に濃密なインタープレイと、時に顔を出す「過激さ」。

本当に円熟した大人の演奏がここにあります。

 

1975年6月、カナダのトロントでのライブ録音。

ベースとドラムはカナダのミュージシャンで、非常に素晴らしいプレイをしています。

 

Jim Hall(g)

Don Thompson(b)

Terry Clarke(ds)

 

①Angel Eyes

物憂いムードを持つスタンダード。

この曲が冒頭というのもちょっと驚きですが、予想通り(?)スタートは地味!

ギターのイントロからメロディがストレートに展開されます。

ホール独特の余韻をつけるプレイで、じっくりした流れはとてもトップを飾る曲には思えません。

そのままホールのソロに入ります。

これがある意味「過激」で、とても複雑なのです。

最初こそ同じようなフレーズを循環させるような「つぶやき系」のプレイですが、

3分30秒過ぎあたりからでしょうか、浮遊感のあるフレーズを織り交ぜ、

ギターによる空間をどんどん広げていきます。

ちょっと緊張感が高まってきたな、という4分10秒過ぎのところから

急にテンポを落とし、一気に空気を緩めます。

この緩急のある流れ、リズム陣も実に柔軟に対応して見事です。

ここで安心したところにもう一つの仕掛けが。

4分50秒ごろからでしょうか、急に音符を連発する独特のフレーズでグルーブを作り出し、

リズム陣も含めやや攻撃的な波に飲み込んでいくのです。

ホールらしからぬ(?)高速フレーズも飛び出し、

一気に「静かな興奮」の世界に入り込んでいきます。

分かりやすくはありませんが、聴きこむほどに「玄人の世界」ならではの驚きがある

ホールらしいプレイです。

ドン・トンプソンのよく歌うベース・ソロを挟み、再びスローなメロディへ。

メロディを「ポーン」と響くギターで歌い上げるユニークな世界に

最後まで浸ってください。

 

③Scrapple From The Apple

チャーリー・パーカーの曲。

こちらも「普通」ではありません。

スピーディなメロディからまずベース・ソロへ。

ドン・トンプソンが躍動的なソロを取っています。

このトリオのグルーブ作りに彼の果たしている役割は大きいでしょう。

バックのホールと時に会話しているようにも聴こえ、彼らの信頼感が伝わってきます。

続いて、ベースが外れて、ドラムとギターによる異色のデュオになります。

これが素晴らしい。

ホールのちょっとフレーズを弾いた後、微妙に開ける「間」と

テリー・クラークのブラッシュワークが見事に噛み合っています。

ホールは「シグナル的なトツトツ・フレーズ」で猛烈なスイング感を生み出すという

離れ業を行っており、このスリル感を味わうためだけでも

アルバムを手に取っていいでしょう。

やがてベースも加わり、トリオ編成になるとホールのギターも

スピードアップしていくのですが、

次第に一歩間違うとフリーになりそう、という抽象度の高い演奏に発展していきます。

バックのリズム隊も普通の4ビートではなく、

現代にも通じる複雑なアンサンブルが出来上がっていて、その先進性に驚きます。

ラスト、急にメロディが立ち上がるところも含め、「過激な」ベテランの味付けを堪能してください。

 

正直、私は最初このアルバムを聴いた時に良さがあまり分からなかったのですが、

改めて聴いてみてその深遠な世界に驚きました。

やはり、「本物」は時代を超えた説得力を持っていますし、

多少分かりにくくてもメッセージは伝わってくるのです。

 

考えてみると「分かりやすいストーリー」に飽き飽きしてきたのは、

「国民が舐められている」ことを示しているからでしょう。

「難しい話」に国民は見向きもせず、「取っつきやすい話題」しか聞こうとしないと

政治家が考えているからこそ、安易な動きに出るわけです。

 

これには、前政権が長期化する中でメディアの批判精神が

薄れたことも影響しているのでしょう。

潮目を変えるには私たちが「語り続ける」しかありません。