「ものづくり」は | 「ロジスティクス・物流・マネジメント日々雑感」篠原ロジスティクスオフィス 篠原和豊

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 日本の「ものづくり」は世界に冠たる地位を確保していた。しかし、全世界的な産業構造の変化によって国内生産よりも海外生産の方がコスト面で有利であることが常識となってきた。そして、国内の製造業の空洞化現象まで進んできた。しかし、もう一度、国内へという怪奇現象も見られるというのが現在とも言えます。

 同じ品物ならコストの安い海外でもいいのでないかは正論でしょう。他方で国内品は海外のどこで作るよりも品質面でも使用価値も何倍も高いというものであれば市場が支えてくれるという考えも多くの成功している企業に見られます。

 

 国家の基盤を築いた国策産業の鉄鋼などは再編は繰り返しましたがいまだに基幹産業の一つで寸。しかし、生活関連の衣料や雑貨あるいは食料などは簡単な物であればどこでも誰がやっても同じというくらいのものなのでしょうか、どんどん新興国に生産地が移行していきました。

 今日の朝日新聞「風」の欄の「バッグづくり勝ち抜く発想」という記事が目に入ってきました。


 何社もの有名ブランドのバッグを作っている韓国のシモンヌ社というところの何故、先端産業でもないのに勝ち抜くことができるのかということを書いたものです。


 発想の転換キーワード

 その一「先を見る目」

 その二「逆行が前進の力」

 その三「高コストこそその武器」

 その四「積み上げた13万個」

 それぞれのキーワードの中で事例が説明されていて分かりやすく書かれています。


 シモンヌ社の朴会長が商社で高級バッグを扱っていた当時、イタリアでも若い職人が少ないこと、すなわち苦労の多い匠の世界を嫌ってなり手がないのだと考えた。そして市場は新興国の経済成長が進み必ず大きくなると見た、それならば自分たちで作ってやろうというのが一つの発想「先を見る目」です。

 最初の第一歩は「お客さんはメードインイタリーに1000ドル払うんだ」という壁です。これに対しては「歴史が始まる時にはいつだって初めての人がいる。おれとおまえで歴史を作ろう」。とイタリアの経営者を口説いた逆境が前進の力というのが二つ目。

 単なる製造下請けではなく開発や検品、素材探しなど自社の社員が世界中を飛び回る、そんなコストは惜しまない「高コストこそ武器」という発想が三つ目。

 これまで作ったバッグの型は13万個、これがすべて残されているのが財産というものです。高級バッグの新しいデザインは過去の型に変化を加えて作られる、過去からの継続こそが財産であるという「積み上げた13万個」という発想です。


 さて、日本のものづくり企業にはこれよりも複雑な技術や経験を積み重ねた企業が多いはずです。あらゆる産業分野で国内での生き残り策も探せばいくらでもあるのでないかと考えさせられる記事でした。


シモンヌ社については下記の記事でも読むことができます。

http://www.chosunonline.com/article/20060514000009

今日のキーワード

“ものづくりには多くの財産がある”