プロトンM_Briz-M_with_AsiaSat-9


ロシア連邦宇宙局(Roscosmos)とインターナショナル・ローンチ・サービス(ILS)社は、モスクワ時間9月28日21時52分(UTC協定世界標準時9月28日18時52分、日本時間9月29日03時52分)、中国・香港に本社を置くASIASAT社(Asia Satellite Telecommunications Co.)の通信衛星「AsiaSat-9(アジアサット-9)」を搭載した、プロトンM/ブリーズM(Proton-M Briz-M(Phase.4))ロケットを、カザフスタン共和国にある
バイコヌール宇宙基地サイトLC-200/39発射施設から打ち上げた。

この発射台からは、9月17日に通信衛星「Amazonas-5」を搭載した、プロトンM/ブリーズM(Proton-M Briz-M(Phase.3))ロケットを打ち上げたばかり。


Proton-M_Briz-M_on_AsiaSat-9

打ち上げられたロケットは順調に飛行し、1分59秒後に第1段エンジンを分離、第2段エンジンのRD-0210×3基+ RD-0211×1基に点火。その後3分28秒に第2段エンジンを分離し、第3段RD-0212エンジンに点火。
打ち上げから9分31秒後に第3段エンジンを分離、第4段のBriz-M (Ph4) に点火された。


AsiaSat-9打ち上げ

その後、Briz-Mは順調に軌道修正を繰り返しながら、打ち上げから約9時間13分後に「AsiaSat-9」を予定の静止軌道に投入し、打ち上げは成功した。

Proton-M/Briz-M(Phase.4)と、Proton-M/Briz-M(Phase.3)は基本的なエンジン仕様は全て同じだが、Phase.3(フェイズ3)タイプは静止軌道専用として使われ、衛星質量は6150kgであるのに対し、Phase.4(フェイズ4)タイプは静止軌道へは最大6360kgで、更に地球を12時間で1周するモルニヤ軌道に6470kg、そして地球と月の引力圏(重力圏)を離脱する、惑星間軌道へは最大5650kgの打ち上げ能力を有する。

プロトンM/ブリーズMロケットの中でPhase.4タイプは、最も打ち上げ能力が高いため、今回の静止軌道への投入に要した時間は、前回より6時間ほど早くなった。
尚、Phase.4タイプの打ち上げは今回が2回目となるが、1回目は衛星の軌道投入に失敗しているので、初成功と言う事になる。




AsiaSat-9

通信衛星「AsiaSat-9」は、基本衛星バスにスペース・システムズローラル社(Space Systems/Loral)のSSL-1300を使用し、打ち上げ時質量6141kg、設計寿命15年で、高出力の28本のCバンドトランスポンダと、32本のKuバンドトランスポンダ、予備ペイロードのKaバンドトランスポンダを搭載し、現在、東経122.2°Eで稼働中の「AsiaSat-4(2003年打ち上げ)」と交替する予定となっている。


AsiaSat-9_footprint-map
「AsiaSat-9」のfootprint map

「AsiaSat-9」のCバンドは、中東ペルシャ湾から中国、北東ロシア、シベリア、日本、東南アジア、オーストラリア、ニュージーランドに至る超広域をカバーする。
またKuバンドは、5つのビームに分かれ、中国(East Asia)、モンゴル・スポット(Mongolia)、ミャンマー、インドネシア、オーストラリア/ニュージーランドをそれぞれカバーする。





ペタしてねペタしてね
悪天候と強風のため2日間延期された打ち上げは、雨が降る中、実施され、瞬く間に暗闇の雲の中に消えた――


ユナイテッド・ローンチ・アライアンス社(ULA)はアメリカ太平洋時間9月24日01時49分(UTC協定世界標準時同日05時49分、日本時間同日14時49分)、米国国家偵察局(NRO)の信号傍受情報収集衛星「'Trumpet-F/O-2 2'(USA-278, NROL-42, SBIRS HEO-4)」を載せたアトラスVロケット(Atlas-5型541タイプ)を、カリフォルニア州バンデンバーグ空軍基地のSLC-3E発射施設から打ち上げた。

アトラスVロケット-NROL-42打ち上げ

打ち上げられたロケットは順調に飛行し、強力な4本の補助スタートブースターは98秒後に燃え尽き、分離され、3分24秒後に第1段エンジンを分離。
先頭フェアリング部が投棄され、第2段エンジンに点火。衛星を繋いだままの第2段Centaur-5-SECエンジンが、燃焼と停止を繰り返し、最終的に'Trumpet-F/O-2(トランペットF/O-2シリーズ)'が運用されるMolniya(モルニア)軌道へ直接投入され、打ち上げは成功した。



トランペット衛星NROL-42

「SBIRS HEO-4」の性能の詳細は公表されていないが、打ち上げ時質量240kg、高度2101km × 37748kmの超楕円軌道(Molniya軌道)で軌道傾斜角62.8°、1周するのに12時間掛かり、信号傍受位置は、ロシア、カナダ、北ヨーロッパ、グリーンランドの上空の北緯60°付近を通過する。
スパイ衛星の軌道


Molniya(モルニア)軌道で運用される'Trumpet-F/O-2(トランペットF/O-2シリーズ)'は、2014年12月13日に「SBIRS HEO-3」が打ち上げられており、その本来の目的は、「北極域の良好なカバレッジは、米国がロシアを観測しようとしている場合、特に北極海からのロシア潜水艦SLBMミサイル発射の可能性がある場合に特に重要である。」と、ハーバード・スミソニアン宇宙物理学センターの天文学者ジョナサン・マクダウェルは述べている。

しかし今回、ジョナサン・マクダウェル氏は更に付け加え、「衛星は、シグナルインテリジェンス(主に通信傍受)ペイロードと、追加のミサイル早期警戒ペイロードを搭載している。それはロシアばかりでなく、北朝鮮の通信傍受の見通しも良いだろうと言う事だ」とも述べている。

SBIRS-System_SBIRS-HEO-4打ち上げアトラスV

米国国家偵察局(NRO)は、この通信傍受システムは、米国と、各地に配備された軍隊、及び潜在的に致命的なミサイル発射が、“同盟国を目指している場合も警戒するため、常に警戒監視している”とし、米空軍は「SBIRS HEO-4」が、米軍の極地域ミサイル警戒能力の補充を完了したと言えるとしている。






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Proton-M_with_Amazonas-5
プロトンM/ブリーズM(Proton-M Briz-M(Phase.3))ロケット
第1段6基のRD-276エンジン

インターナショナル・ローンチ・サービス(ILS)社は、モスクワ時間9月11日22時23分(UTC協定世界標準時9月11日19時23分、日本時間9月12日04時23分)、スペインのヒスパサット社(Hispasat)の通信衛星「Amazonas-5(アマゾナス-5)」を搭載した、プロトンM/ブリーズM(Proton-M Briz-M(Phase.3))ロケットを、カザフスタン共和国にあるバイコヌール宇宙基地サイトLC-200/39発射施設から打ち上げた。


Proton-M_Briz-M_on_Amazonas-5

プロトンM/ブリーズMは、第1段に6つ強力なRD-276船外燃料タンクエンジンと、8S810Mの中央タンクから成り、中央タンクには酸化剤が搭載されている。

打ち上げられたロケットは順調に飛行し、1分59秒後に第1段エンジンを分離、第2段エンジンのRD-0210×3基+ RD-0211×1基に点火。その後3分28秒に第2段エンジンを分離し、第3段RD-0212エンジンに点火。
打ち上げから9分31秒後に第3段エンジンを分離、第4段のBriz-M (Ph3) に点火された。


Amazonas-5_onProton-M_Briz-M
第4段のBriz-Mエンジンによるトランスファー軌道から静止軌道への修正投入。

その後、Briz-Mは順調に軌道修正を繰り返しながら、打ち上げから約15時間31分後に「Amazonas-5」を予定の静止軌道に投入し、打ち上げは成功した。



Amazonas-5
通信衛星「Amazonas-5」

「Amazonas-5(アマゾナス-5)」は、基本衛星バスに米スペースシステムズ・ロラール社(Space Systems/Loral(SS/L))の大型衛星バス「SSL-1300」を使用し、打ち上げ時重量5900kgで、設計寿命は15年となっている。


Amazonas-5ブラジルビームとラテンアメリカビーム
「Amazonas-5」は、24本のKuバンドトランスポンダと、34本のKaバンドスポットビームトランスポンダを搭載し、西経61.0°Wの「Amazonas-2/3/4」の3機の衛星と同一軌道から、ブラジルやラテンアメリカのブロードバンド・インターネットサービス、テレビ放送、企業ネットワークなどの通信アプリケーション拡充に充てられる。




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