1970年代終わりから「探偵物語(1983年)」の頃まで、女優としてのイメージが大きかった、 薬師丸ひろ子 さんですが、この「Woman ~Wの悲劇より~(1984年)」を経て、アルバム「夢十話」を発表するくらいまでになると、歌手としても絶頂期に入っていたように思います。
このライブ演奏は当時の数多い映像の中でも、トップクラスに入るもので、グランド・オーケストラをバックに、彼女の素晴らしい表情に加えて、美しく見事な歌唱になっています。いつ聴いても、とても感動します。
時を越える華麗な演奏とは、まさにこのようなものを言うのでしょう。
1970年代には、ポール・モーリア、リチャード・クレーダーマンなど、数多くのグランド・オーケストラが大編成のストリングスの美しさを競っていました。
そうしたポピュラー・オーケストラの流麗な演奏には、それまでの時代を背景とするクラシック系奏者の持つ、高い演奏技術が支えになっていたといわれています。
ここでの演奏の背後で、オーケストラを率いてピアノを弾いておられるのは、たしか編曲も担当されている服部克久先生ではないでしょうか。
薬師丸ひろ子 「 Woman-Wの悲劇 」(1988)
現代の商業音楽では、さまざまなコストの制約を受けることもあって、ストリングス・セクションは、ほとんどシンセサイザーに置き換わってしまいました。今となってはアイドルと呼ばれる人たちが、このような伴奏で歌える機会は、もう無いかもしれません。
普通に身近な音楽において、リアルな奏者が次第に消えていくなかで、習得するのに長い期間を要する生楽器の演奏技術や、その表現としての音楽は失われてほしくないと願っています。
そのためには、聴いている私たちの側でも、本当に良いものを聞き分けることができるようになるための、良い音楽経験を重ねていきたいものですね。
(2009-11-08 17:21:23)