(『新・人間革命』第8巻より編集)
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〈布陣〉 2
伸一の会長就任以来、学会は上昇に次ぐ上昇を重ね、大発展していることは間違いなかった。
それだけに、次の飛躍のためには、さらに、各地に本部、総支部の布陣を整え、組織の強化を図る必要があることはわかっていた。
しかし、伸一は、もっと重要な課題があることを痛感していた。
それは、殉難をも恐れず、民衆の幸福と人類の平和に生涯を捧げた、牧口常三郎と戸田城聖の精神を、いかにして永遠のものにしていくかということであった。
彼は、学会が発展するにつれて、幹部のなかに、その精神が希薄になっていきつつあることに、憂慮を覚えたのである。
たとえば、学会のため、広宣流布のために、自分が何をするのかではなく、
できあがった組織の上に乗っかり、学会に何かしてもらうこと期待する幹部が出始めていることを、彼は感じとっていた。
また、学会のなかで、より高い役職に就くことが、立身出世であるかのように勘違いし、いわゆる”偉くなる”ことに執心し、人事のたびごとに一喜一憂している者もいた。
名聞名利の心をいだき、自分のために学会を利用しようとする者が幹部になれば、会員が不幸である。
やがては、学会自体が蝕まれ、内部から崩壊していく要因となることは必定である。
伸一は、未来の発展のために、この兆候の根を断ち、まず幹部の胸中に、学会精神をみなぎらせることから始めようと、秘かに決意していたのである。
五月三日、第二十五回本部総会の日を迎えた。
午前七時、アメリカ総支部、東南アジア総支部など、海外のメンバーが入場すると、既に、人で埋まった場内から、大きな拍手がわき起こった。
・・・入場してくるメンバーの姿を目にした参加者は、誰もが広宣流布の世界的な広がりを実感していた。