(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈早春〉 35
(つづき)
仏法では「随方毘尼(ずいほうびに)」を説き、仏法の本義を違わない限り、その地域や時代の風俗、習慣に従うべきであるとしている。
この原理を各国のメンバーがよく理解し、深く社会に根を張り、その国の繁栄と幸福の実現に取り組んでいくことだ。
ともあれ、メンバーを守るためにも、自分が各国の指導者と会い、学会の真実を訴え抜いていこうと、伸一は思った。
一行は、山本伸一を中心に、ホテルで香港の組織の検討に入った。明二十六日に開催が予定されている、香港の支部大会で、幾つかの地区を結成することになっていたのである。
また、香港支部長の岡郁代が、夫の仕事の関係で、支部結成から四カ月の前年六月に帰国したため、後任の支部長の人事も考える必要があった。
皆で協議した結果、・・・ 新支部長については、今後、さらに検討を重ね、別の機会に任命することにした。
明けて二十六日は、支部大会に先立ち、大会の会場である九竜(カオルン)の立信ビルで教学の口頭試問が行われた。
受験者が会場に行くと、入り口には、日本に帰ったはずの岡郁代が立っていた。
彼女は、山本会長が出席しての香港の支部大会が行われると聞き、日本から駆けつけてきたのだ。
そして教学試験も実施されることを知ると、受験者が来たら、わずかな時間でも教学を教えようと、会場の前に待機していたのである。
岡は、日本に住んではいたが、香港の支部長として、少しでも地元のメンバーの役にたちたいとの、強い思いがあった。
彼女は、集って来た受験者に、・・・語句や宗教批判の原理を説明するとともに、自信をもって受験するよう励ました。
メンバーは、もう会うこともできないのではないかと思っていた支部長の”特別講義”に、決意を新たにし、勇んで試験に臨んだのである。