(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈早春〉 31
当初の予定では、一行はニューデリーで一泊することになっていたが、ここでは泊まらず、そのまま訪問地である香港に行くことにした。
テヘランを経て、・・・ さらに、次の経由地のタイのバンコクに到着したのは朝であった。
バンコクの空港で、伸一はタイのメンバーと会うことになっていた。
前年の二月にバンコクを訪問し、支部を結成した時には、メンバーは二十数世帯であったが、今では、二百世帯に迫る勢いであった。
「どうも、ご苦労様!」
伸一は、笑顔で語りかけた。
飛行機の給油の時間を使っての激励であり、立ち話の語らいとなった。時間はわずか十五分ほどしかなかった。
しかし、伸一は、力の限り、メンバーを一人ひとり励ましたあと、最後にこう語った。
「バンコク支部の発展は目覚ましいものがある。アジアの希望です。
しかし、タイにあっては、組織を大きくすることより、小さくとも、皆が団結して、仲良く、明るく、楽しんで信心に励んでいくことです。
時が来れば花は開く。焦る必要はありません。むしろ、一人ひとりが功徳を受けて、幸福になっていくことが大事です。
それが私の願いです。では、またお会いしましょう。お元気で!」
この日、バンコク支部の婦人部長のアン・ミヤコ・ライズも、一行と一緒に、香港に行くことになっていた。
伸一は、タイのメンバーが明るい笑顔の花を咲かせていたなかで、彼女だけが、思い詰めた表情をしていることが気になっていた。