(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈萌芽〉 42 完
最初、富夫は、話は栄美子に任せ、彼は一言、「頑張りましょう!」と言うだけであったが、・・・。
そして、彼は後年、商社を退職し、学会本部の職員となり、SGI(創価学会インターナショナル)の発展に貢献していくことになるのである。
一夜明けて、一月十五日は、山本伸一がヨーロッパに発つ日であった。
伸一は、春山富夫の運転する車で、空港に向かった。
伸一は、出発までの間、見送りに来てくれた十数人のメンバーとロビーで懇談した。
清原かつが言った。
「ハワイは夏で暑かったし、ロサンゼルスは春の陽気、そして、ニューヨークは真冬でこの寒さ・・・。
日本を出発して、まだ一週間ぐらいしかたってないのに、一年間もたったような気がするわ」
それを聞くと、伸一は笑いながら言った。
「清原さん、ニューヨークにも春が来ていたよ。妙法の太陽に照らされて、たくさんの地涌の若芽が育ったじゃないか。
また、一週間で、春から冬まで体験できたというのは、それだけ世界が狭くなったということだよ。
これからも、交通手段は発達し、一日もあれば、世界中、どこへでも行けるようになる。
しかし、時間の溝は埋まっても、社会体制の溝、国家の溝が埋まらなければ、人間は交流することはできない」
「先生、次はアメリカには、いつ、おいでいただけるのでしょうか」
「また、すぐ来ます。実は来月、ワシントンでケネディ大統領と会うようになると思います」
この時、伸一の胸には、燦然と光り輝く、世界を結ぶ友情と平和の金の橋が、幾重にも、描かれていたのである。