(『新・人間革命』第7巻より編集)
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〈萌芽〉 38
(つづき)
しかし、それを、そのまま、ほかの国に当てはめて考えるべきではありません。全く事情が違います。
立正安国の精神とは、それぞれが、慈悲や生命の尊厳など、仏法で説かれた哲理を自身の生き方の根幹として、
人びとが幸福に暮らせる社会の実現に、平和社会の建設に、取り組んでいくことです。
それは、何も政治に限られたことではなく、文化・教育など、あらゆる分野にわたって、仏法者として社会に貢献していくことを意味します。
そして、その基本は、教団として何かを行う場合もあるでしょうが、むしろ、個人個人の自発的な行動が中心となります」
一言に広宣流布といっても、その進め方は、それぞれの国情によって異なってくる。
日本でそうしてきたからといって、国情を考えずに、ほかの国でも、同じことをすれば、将来、取り返しのつかない失敗を犯してしまう場合もある。
伸一は、前々から、そのことを心配していたのである。
翌十四日の夜、彼はホテルで、春山富夫・栄美子の夫妻と懇談した。ニューヨーク支部長になった富夫に、揺るがぬ信心を打ち込んでおきたいと思ったからである。
伸一は、春山の仕事の様子などを尋ねたあと、諄々と語り始めた。
「あなたが、現在の商社で、有望視され、期待されていることは間違いないでしょう。
しかし、大切なことは、企業の規模や資産を評価するような尺度で、学会を推し量ることは間違いであるということです。
企業の最大の目的は利潤の追求です。
それに対して学会の目的は、世界の民衆を幸福にしていくことであり、人類の永遠の平和を打ち立てるということです。
(つづく)