(『新・人間革命』第6巻より編集)
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〈宝土〉 22
彼らの衣服は、泥にまみれ、子どもたちは裸足である。
伸一は、案内役の商社の駐在員に通訳を頼み、彼らと語り合った。
最初に伸一は、日本からやって来たことを告げた。しかし、皆、日本がどこにあるのか、知らなかった。
二人の子どもは、将来、何になりたいかを尋ねると、彼らは、すかさず「軍人!」と答えて、銃を撃つまねをした。
若者たちは、ここで観光客に飲料水などを売り、生計を立てているという。彼らの希望は、もっと豊かになることであった。
伸一は言った。
「豊かな暮らしを求めるのは、人間として当然の思いです。そして、そのために大切なのは、向上心をもって、人一倍、努力することだと思う。
たとえば、商売をする場合でも、お客は、どんなものを必要としているのか、より良い品物を仕入れるにはどうすればよいか、どんなサービスをすれば買った人に喜んでもらえるかなどを、よく考え、工夫することが大事です。
世界のどの国を見ても、人生で成功を収めた人は、みんな必死になって勉強し、努力し、苦労をいとわずに働いています。
イラクの大地には石油が眠っている。しかし、採掘しなければ使うことができない。
同じように、人間の心の中にも、幸福のダイヤモンドがある。
そのダイヤを採掘するのは、あきらめたり、落胆したりせずに、懸命に努力し続けることです。
そこに知恵がわき、工夫が生まれ、困難の壁を破る道が開かれる。
要は、真剣な一念です。苦労した分だけ、成功という実りが約束される。だから私は、あえて皆さんに、『努力せよ。苦労せよ』と言いたのです」
出会ったイラクの青年たちは、真剣な表情で、山本伸一の話を聞いていた。