(『新・人間革命』第5巻より編集)
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〈勝利〉 10
伸一は、午前九時に会場に到着すると、青年部長の秋月英介(前、第5代秋谷会長)や男子部長の谷田昇一らの青年部の幹部に語りかけた。
「さあ、新しい時代の開幕だ!戸田先生も、きっと喜んでおられるよ」
彼は、スタンドが既に参加者で埋まっているのを見ると、控室に入るやいなや、秋月たちに尋ねた。
「役員は何時に集合しているの」
「ほとんどの部門が午前六時です」
「そうか、食事は?」
「各人、必ず朝食をとってから来るように、徹底してあります」
「あとで、役員のメンバーに、パンと牛乳を、それから、『大変にありがとうございました』と伝えてください。
では、方面の参加メンバーで、一番早い列車は何時に着いたの」
「まず、東北関係の第一陣として、百三十八名が午前四時二十分に上野駅に到着しました」
「夜行列車か。疲れているだろうな。体調の悪い人は出ていないね」
「そういう連絡は入っておりません」
「それは、よかった。みんな疲れているだろうから、今日は、私の話も簡潔にして早めに終わろう」
伸一は、さらに、矢継ぎ早に皆の状況を質問していった。
この日は、多くの大学教授、作家、各新聞社の編集局長など、各界から百人ほどの来賓が出席していた。
学会の真実の姿を知ってもらおうとの思いで、青年部が招待したのである。
晴れ渡った大空に包まれて、集い会った崇高な使命を胸にもつ青年たちは、世紀を開く歴史的な瞬間を、固唾を飲んで待っていた。