一瞬の出会いであったが、彼らの魂に”何か”を植えつけたかったのである | くにまさのブログ

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 (『新・人間革命』第4巻より編集)

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   〈春嵐〉 9

 

 夕方、伸一が会場に到着すると、青年部の役員が、元気に会場の整理にあたっていた。

 

 「ゴクロウサマデス!アシモトニ、気ヲツケテクダサイ」

 

 見れば、数人のアメリカ人らしいメンバーがいた。黄色の腕章をつけ、大柄な体で機敏に行動している。

 

 八戸支部の組織は、米軍基地のある三沢を擁していることから、アメリカ人のメンバーも誕生しており、その数は五十人ほどにのぼっていたのである。

 

 「オー、サンキュー! 本当にご苦労様」

 

 伸一はこう言うと、右手を目の位置まで上げて敬礼をして見せ、それから、力を込めて握手を交わした。

 

 伸一が、一人ひとりの手を強く握り締めると、彼らはさらに強い力で握り返した。

 

 軍務が終わって帰国すれば、今度はアメリカの天地で、広宣流布の先駆けとなる、大切な創価の宝ともいうべき青年たちである

 

 一瞬の出会いではあったが、伸一は彼らの魂に”何か”を植えつけたかったのである。

 

 強く、強く握手を交わした伸一の手は、赤く腫れた。しかし、そこに、熱い心が通い合った。

 

 

 八戸結成大会の終了後の懇談の折、彼は支部の幹部に、家族のことを尋ねた。

 

 すると、支部の婦人部長になった、笠山愛子という婦人が、申し訳なさそうに言った。

 

 「主人は出張で、今日は参加することができませんでした・・・」

 

 

 翌朝、彼が宿泊した旅館に、笠山愛子たちが訪ねてきた。

 

 笠山は、伸一に会うと、「実は、主人のことですが・・・」と切り出した