(『新・人間革命』第2巻より編集)
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〈勇舞〉 1
新しき道は開かれた!
昭和三十五年十月、山本伸一が北・南米を歴訪した”平和への旅”は、創価の友の胸に希望の光を注ぎ、決意の炎を呼び起こした。
それまで、遠く太平洋を隔て、自分たちとは無縁と思っていたアメリカやブラジルが、今、最も身近な天地となって、同志の眼前に広がったのである。
伸一の帰国後、初の幹部会となる十月度の本部幹部会が十月三十一日、東京・千駄ヶ谷の東京体育館で行われた。
それは、世界広布への息吹みなぎる集いとなった。
アメリカ総支部長になった十条の抱負などが続き、会長・山本伸一の話となった。
「日蓮大聖人は、師子王は蟻の子を捕る時も、獰猛な野獣に挑む時も、”前三後一”といって、三歩前に、一歩後ろにという万全の構えで、
全精力を注ぐと仰せですが、これは、広宣流布の活動を進める私たちにも、相通ずる原理ではないかと思います。
そこで、十一月、十二月は、弘教に全力をあげ、一月は、徹底して同志の信心指導に力を注いでまいりたいと思います。
家庭指導、個人指導は、最も地道な目立たない活動ですが、信心の『根』を育てる作業といえます。
根が深く地中に伸びてこそ、天に向かって幹は伸び、葉も茂る。
同様に、一人ひとりの悩みに同苦し、疑問には的確に答え、希望と確信をもって、喜んで信心に励めるようにしていくことが、いっさいの源泉になります」
同志のなかへ、そして、その心のなかへー 山本伸一の話の主眼はそこにあった。
弘教が広がれば広がるほど、新たに入会した友にも、信心指導の手が差し伸べられなければならない。
信心した人が、一人の自立した信仰者として励めるようになってこそ、初めて弘教は完結するといってよい。