(『新・人間革命』第2巻より編集)
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〈錬磨〉 1
盛夏のまばゆい太陽が、”鍛え”の季節の到来を告げていた。
昭和三十五年七月二十二日、東京・台東体育館で、第二回婦人部大会が行われた。
婦人部大会が最初に開催されたのは、前年の七月二十八日のことであった。
当時、ただ一人の総務として、事実上、学会のいっさいの運営を担っていた山本伸一の提案によるものであった。
婦人部の場合、専業主婦が時間を有効に活用するためには、昼間を中心として活動を、さらに充実させる必要があった。
山本伸一は、女性の生活上の役割を深く考えながら、真実の”女性解放”に心を砕いていた。
女性の幸福なくして、本当の社会の繁栄はないからだ。
今回の第二回大会では、夫が戦死し、男児をつれて再婚した婦人の体験が語られた。
彼女は、再婚した相手の六人の子どもとの、人間関係に悩んでいた。しかも、染め物工場を経営する夫は、仕事に行き詰まり、ギャンブルに走っていた。
生活苦と子どもとの不仲の末に、夫婦喧嘩が続き、死を考えたことさえあった。
そんな時、知人から仏法の話を聞き、夫妻で入会。唱題を重ねるうちに、夫は賭け事をやめ、仕事にも精を出すようになった。
また、子どもたちとの不仲も解消し、念願の一家和楽が訪れたという体験である。
そこには、先妻の子どもにわけへだてなく愛情を注ぎ、夫をも包み込むに至った、一婦人の人間革命の歴史があったといってよい。
それは、胸中の太陽を輝かせ、不幸の宿命から解放された女性の蘇生の現実の姿であった。
会場からは盛んな拍手が送られた。
その体験は、一つの家庭という小さな世界の出来事にすぎない。しかし、それは、社会をも変えゆく無限の可能性を物語っている。
家庭とは、家族が共同でつくりあげていく価値創造の「庭」であり、明日への英気を培(つちか)う、安らぎと蘇生の「園」である。
また、人間を育みゆく豊かな土壌といえよう。