戸田先生が身をもって教えてくれた | くにまさのブログ

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(『新・人間革命』第1巻より編集)

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   〈慈光〉 14

 

 「先生、広島行きは、この際、中止になさってください。お願いいたします。どうか、しばらくの間、ご休養になってください」

 彼は、必死で懇願した。しかし、戸田は、毅然として言った。

 

 「そんなことができるものか。・・・ そうじゃないか。仏の使いとして、一度、決めたことがやめられるか。俺は、死んでも行くぞ。

 伸一、それがまことの信心ではないか。何を勘違いしているのだ!

 その烈々たる師の声は、今も彼に耳に響いていた。

 

 ”あの叫びこそ、戸田先生が身をもって私に教えてくれた、広宣流布の大指導者の生き方であった”

 

 ブラジルは、日本とはちょうど地球の反対にあり、最も遠く離れた国である。そこで、多くの同志が待っていることを考えると、伸一は、なんとしても行かなければならないと思った。

 そして、皆を励まし、命ある限り戦おうと心を定めた。

 胸中には、戸田の弟子としての闘魂が燃え盛っていた。

 

 伸一は、しばらくすると、ベッドから起き上がった。そして、椅子に座ると、お守り御本尊に向かい、真剣に題目を唱え始めた。

 

 大生命力を自身の内より引き出し、病魔を打ち破らんとする、ひたぶるな祈りであった。

 

 彼が唱題を終えると、ドアをノックする音がした。

 副理事長の十条潔であった。

 十条は、数日前から、山本会長のブラジル行きは、止めるべきではないかと、考え続けてきた。日を追うごとに、伸一の体調が悪化していることを感じていたからである。

 

 最初にニューヨーク入りしたころから、伸一の衰弱は、ことに激しくなったようで、目の下に隈さえ浮かんでいたのを十条は見逃さなかった。

 

 彼は悶々と考えた。

 

 

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