(『新・人間革命』第1巻より編集)
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〈旭日〉 7
彼は、会長に就任すると、直ちに、海外向けの英語版の書籍を発刊することにした。
こうして学会紹介書『ザ・ソウカガッカイ』が刷り上がったのは、伸一たちが海外に出発する直前であった。
伸一は、ただ一人、静かなワイキキの浜辺にたたずみながら、今、その世界広布の第一歩を踏み出した感慨を新たにした。
しかし、その思いは、すぐに憂慮に変わった。何よりも正木永安のことが気にかかっていたからである。
午前八時半ごろから、ホテルのテラスで、全員で朝食をとった。
その時、慌ただしい足音が響いた。
「先生!」
先頭で叫んでいるのは、正木永安であった。
「しかし、どうしてこんな問題が起こったんでしょうかね。原因を追究しておかないと、また間違いが起こりかねません」
怒りを含んだ口調で十条潔が言った。
伸一は、十条の言うこともよくわかった。
しかし、ハワイの同志と会い、既に問題が一段落した今、ミスについてとやかく考えることよりも、友をねぎらい、励ますことに、彼は少しでも多くの時間を使いたかった。
「今日の座談会で、またお会いしましょう。どうもありがとう」
ホテルを出発する前に、伸一は、案内役のハワイの友に尋ねた。
「座談会には、どんな服装で行ったらいいですか」
違和感なく現地との友に溶け込み、和やかな語らいをするための心配りである。