まだ議論できてないダイバーシティ・ネタいろいろ | スクール・ダイバーシティ

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成蹊高校生徒会の1パートとして活動しています。あらゆる多様性に気づく繊細さ、すべての多様性を受け止める寛容さ、疎外や差別とは対極にあるこんな価値観を少しでも広く共有したいと思って活動しています。

 それについてみんなで話してみたい、という感じのニュースや出来事はたくさんあるのですが、なかなかまとまった時間が取れないでいます。で、このまま忘れてしまうのはもったいないので、今回は、そんなダイバーシティ・ネタをメモ的に列挙しておきたいと思います。

*知的障がいを持つ家族がいるという話、知的障がいを持つ人たちが働く施設での職員による暴力という話。なんかダイバーシティの活動でこの問題にアプローチできないかということで、いくつかの映画が話題に上がりました。以前、ダイバーシティ内部の勉強会で議論した作品として『アイ・アム・サム』などは、あらためて宣伝して上映会・ディスカッションにもっていけるかもしれません。かなり時間をかけて話したし、踏み込んだ考察も少なくないのではないかと。こちらを参照していただければと思います。http://ameblo.jp/sksd14/entry-11988856455.html

 そのほか、『くちづけ』『マレフィセント』などの作品が上がりました。もちろん『フォレスト・ガンプ』も外せないでしょう。あと、新しいものとしてすぐに思い浮かぶのは『チョコレート・ドーナッツ』もたくさんの人たちとその内容について話をしてみたいと思わせる作品です。また、このブログで取り上げたこともある『ものすごくうるさくて、ありえないほど近い』も同じように議論したい作品です。
http://ameblo.jp/sksd14/entry-12026156982.html

*障がいを持つ人自身の話としてポジティブなのはミライロ社長垣内俊哉さんのトーク。垣内さんは生まれつき骨が弱い病気で、車イス生活です。ここには少しだけその言葉を引いておきますが、ぜひ全文を。垣内さんの発想、ダイバーシティな頭の使い方はキレキレです。http://www.huffingtonpost.jp/2015/04/22/mirairo-106cm-kakiuchi_n_7123204.html

 「私はずーっと、探してきました。歩けなくてもできることを。しかし、(社会に出て)気づかされたのは、歩けないからできることでした。“歩けるようになろう。歩けなくてもできることを探そう”ではなく、“歩けないからできることを探そう”。そんな考えかたを広げていこうと思いました。多様な視点、経験、感性。歩けないからこそ、見えないからこそ、聞こえないからこそ、人と違うからこそ、できることがある。気づけることがある。伝えられることがある。バリアをバリューに変えていく。そんな社会が、これから必要だろうと私たちは考えています。…障がいがあることは、ときに価値になり、プラスにもなり、強みにもなると思います。障がいを取り除いていくだけじゃない。障がいを価値に変えていく。バリアをバリューにしていく、そんなアプローチがこれから必要だろうと思います。」

 素晴らしいですよね、とくにわたしたちのような活動をやってるグループにとってはこれ以上ないくらいのトークだと思います。でも、垣内さんの発想がおもしろいのはここからです。「いいこと言ってる」というレベルから離陸するという感じでしょうか。「バリアをバリューへ」は夢見がちな言葉遊びではありません―それはそれで好きなんですけどね。ちょっとこの数字を見てください。25%、6%、2%、4000万―なんだと思います?これは、日本で65歳以上の人、障がいを持つ人、そして3歳未満の子どもの割合と総数、つまりさまざまな「バリア」によって何か生活上の手助け必要としている人たち、少なくともその可能性が高い人たちの割合、総数であって、それは、経済活動のフィールドになりうるのだ、というわけです。 
 垣内さんはポエマーではありません。垣内さんにとってバリアをバリューに読み替えるということは、「それで食っていく、食わしていく」という現実でもあるからです。でも、そこには同時にスルーパスを通すような心地よさもあるのではないでしょうか。そして、そんなこんなで、ダイバーシティな発想と実践にたしかな継続の道筋が示されていくのだと思います。
 もう少しだけ引用を重ねて、このくだりを締めたいと思います。「ユニバーサルデザイン」という発想について。90年代に生まれたというこの言葉の含意を知らなかったことは恥ずかしいけど、今、このタイミングで知ったことで一気にモチベーションにつなげられそうな気がしています。

 「ユニバーサルデザインという言葉や考えかたは、対象を障がい者のみに限っていません。国籍、性別、年齢、障がいの有無に関わらず、みんなにとって心地よい環境、使いやすい―そうしたものを実現していきます。多くの建物、製品のほか、案内版ひとつとってもそう。webページひとつとってもそうです。様々なものを、みんなにとって使いやすい、快適であるものに変えていく、そんなお手伝いをしています。」


垣内さん

*「在日コリアン生徒意識調査」を取り上げた記事(毎日新聞)。この数字に何を見いだすか、ということだと思います。
http://mainichi.jp/articles/20160226/k00/00m/040/089000c
 「全国九つの朝鮮学校高級部と二つの民族学校の高校生と、外国にルーツを持ち大阪府内の公立高校に通う生徒の一部を対象に」1483人の回答を得たという調査は、おそらくヘイトスピーチが社会問題化して以降最大規模。彼ら高校生はヘイトデモ参加者をどう感じているのでしょうか?ぜひリンク先へ。
 調査を行った龍谷大金教授は人種差別撤廃法の必要性を訴えこう話しています。
「法整備や統計がなく差別がないことにされる一方で、排斥が堂々と行われている。在日コリアンを人間として平等に扱わないことが、日本の民主主義を壊している」

 差別をないことにしてしまいたい欲望、そもそもマイノリティなんかいないと思い込んでしまいたい欲望、そんなアンチ・ダイバーシティな社会的欲望に、こんな空気も絡んでいて、なんともいやな感じになっているような気がします。「われわれは、他人に対して残酷であることを隠さなくなってきている」(小田嶋隆『超・反知性主義入門』)。そんななか、この調査結果にはやはり希望を読み取りたいと思うのです。もちろん手放しにではなく。

*関連する記事として、これも挙げておきたいと思います。http://digital.asahi.com/sp/articles/DA3S12215834.html
在日三世の作家鄭義信さんの「焼肉ドラゴン」など三部作が、3~6月、東京・初台の新国立劇場で上演されるという記事です。これも今の社会的雰囲気をふまえてのことです。鄭さんは、こう言っています。「初演時とは違う反韓の空気が漂う今、あえてやる意味がある」。
 
*セクシャル・マイノリティにかかわるニュースをいくつか。まずは同性愛者向け難民施設がドイツで初めて開設というニュース。ドイツでは難民収容施設が過密状態にあり、性的少数者の人々が被害を受ける懸念が高まっていた。「国境を越えても偏見はなくならない」という現実に対応。http://www.afpbb.com/articles/-/3075413

*フィリピンの英雄のこの発言は残念としか言いようがありません。彼が敬虔なカトリック教徒で、同性婚に反対しているということとは次元が違うと思います。その後「同性愛者は動物以下の存在」というくだりについては発言を取り消したということですが、もう発言の事実は消えません。ちなみにナイキはすぐにパッキャオとの契約を打ち切っています。
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20160220-00000096-spnannex-fight

*「同性愛は個人的趣味」として支援を疑問視した杉並区議の発言が記事になっていましたが、まだここからやらないといけないの?という激しい脱力感とともに、あらためて、始まったばかりなのだということ思い出させてもらいました。下のリンクには石川大我さんのコメントもあります。
http://news.yahoo.co.jp/pickup/6191955
http://www.huffingtonpost.jp/2016/02/21/kobayashi-yumi-lgbt_n_9284098.html

*そんななか、ついにJリーグからもダイバーシティな取り組みが始まりました。サッカーJ3のFC琉球。那覇市の「性の多様性を尊重する都市・なは宣言」(レインボーなは宣言)に賛同して、今季ユニホーム左袖にレインボーカラーを入れることになりました。球団はこんなコメントも出してます。
 「チームにブラジル、韓国籍の選手も在籍している。性のみならず国籍や障がいなどを含めた全ての多様性を尊重することの大切さをサッカーを通じて発信したい」。これは応援するでしょ!
http://ryukyushimpo.jp/photo/entry-222183.html?utm_source=dlvr.it&utm_medium=twitter

では、また。

fc琉球