月曜日の一歩(2) | 交心空間

交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇

 駅前に出て空を見上げると、妻が言ったとおり雨が降りだした。会社まで十
分くらい歩かなくてはいけない。雨足はひどくなり、道行く人々が次第に傘を
さしはじめている。俺は、走る気もしなければ、カバンを頭の上にかざそうと
もせず、立ち止まったまま雨が点から点線に変わるのを見ていた。
 ふと顔を横に向けると、古めかしい喫茶店があった。
「こんなとこに喫茶店あったかな」
 眉をひそめながらつぶやいた。週五日の往き帰り、もう十二年もこの道を歩
いているのに、その存在に気づかず前を通りすぎていたのか。情けない発見と
強まる雨に後押しされて、とにかくその喫茶店に飛び込んだ。長居する気はな
いが、戸口の窓際を避けて奥まで進み、カウンターの一番端っこに座った。


                             《つづく》


【これまでの展開】
月曜日の一歩(1)