交心空間

◇ 希有な脚本家の創作模様 ◇


テーマ:

 ドラマ論や作品の打ち合わせとは別に、ライ麦畑さんから、もうひとつ相談
を受けました。今年大学に入学したというのに、すでに将来構想をもっており
「脚本家一本で食べていきたい」と考えているようです。


 私の場合……
 システムエンジニア(電気工事会社の情報システム部員)と脚本家(日本脚
本家連盟・日本放送作家協会在籍)というふたつの顔をもっています。いわゆ
る「二足のワラジ」です。
 ぼんやりとですが、私もライ麦畑さんと同様の気持ちをもち、学生時代に将
来を考えたことがあります。当時、NHKで番組スタッフのアルバイトをした
り、自分が企画するコンサート内で披露した物語と音楽の融合から「脚本を書
きたい」と、番組ディレクターに相談したことがあります。そのとき、脚本に
ついては『たった一言のアドバイス』(2005年11月16日掲載)でも伝えてよう
に「どれだけの人間性が描けるか」の一言でした。併せて仕事の観点から、銀
行員とシンガー・ソングライターの顔をもつ小椋桂や、作家であり会社員でも
あった開高健の話を聞きました。あるいは、脚本家志望なら勤務体系の良いと
ころ、つまりマスコミ就職で現場だと自分の時間を作るのが難しい。一見近道
のようだが自分の時間が取れないとなると、それは返って遠回りである。など
の話も聞きました。
 結果、二十五歳で一般企業に就職し、そのときがきたら脚本家として再スタ
ートしても遅くないと判断しました。そして、昼間はサラリーマンとしてプロ
グラム開発を行う傍ら、夜や休みの日はドラマ雑誌による独学で脚本執筆を続
けたのです。


 ──意志の強さと、いかに才能を発揮し、チャンスをどう活かすか。


 三十歳のとき、NHK広島のラジオドラマ脚本コンクールに応募した作品で
最優秀賞をいただきました。それを機にドラマ脚本、ミュージカル脚本、バラ
エティ番組や歌謡番組などの構成・台本をいただくようになり、多いときは月
に五本ぐらい抱え、時間をやりくりしてこなしました。このころですかね、少
しは現実的に「一本立ちしようか」と考えたのは。


 ──もの書き収入で生活できるか。


 当時はまだ脚本家連盟にも放送作家協会にも加入していませんでした。です
から仕事はあっても原稿料も安く、協会員規定の半額以下です。現実問題、こ
れでは生活できません。考えた末、私の判断は「まだ早い」でした。
 サラリーマンをしていたので収入は安定していましたし、執筆時間は調整で
きたので、ある意味それが一本立ち決心のブレーキになったともいえます。反
面、私の場合そのスタイル(二足のワラジ)だからこそ執筆を続けられたとも
思っています。
 脚本家連盟・放送作家協会の会員に推薦され加入したのは三十八歳のときで
した。新たな仕事として、脚本コンクールの審査員や脚本講師、民間放送局へ
の進出なども舞い込みました。とはいうものの四十近くあるいは四十代に突入
すると、昼間の仕事である会社では責任範囲の拡がりと後継者の育成がのしか
かります。以来十年になりますが、いまだに二足のワラジを履いています。


 ──もう若くないがゆえ、地方であるがゆえ。


 中央(東京)進出には歳をとりすぎました。私を育ててくれた広島にも愛着
があります。地方には地方の放送のあり方があり、その中でそこそこの仕事を
こなしています。放送だけではもの足らないと思い、四十代半ばから出版も視
野に入れて動きだしたので時間は結構費やされます。「二足のワラジに甘んじ
てしまった」といえばそうかもしれませんが、自分の選んだ道におもしろさは
感じています。


 ──決断のときは、また訪れる。


 どの時期にどんな決断をするかは人それぞれでしょう。ただ、二足のワラジ
を履き続けた私がいえるのは、『いずれの選択肢も現実論でなくては判断の対
象にしなかった』ということです。
 人生はまだ続いています。とはいうものの、このスタイルをいつまでも続け
る気はありません。サラリーマンには「定年制度」があるのです。さらに企業
によっては、一定年齢に達すると「選択定年」を選ぶ権利も得られます。
 そういったことから私の場合「いつかはもの書き一本の生活になる」と、腹
をくくしかないでしょう……。

AD
いいね!した人  |  コメント(0)  |  リブログ(0)

坂本 博さんの読者になろう

ブログの更新情報が受け取れて、アクセスが簡単になります

AD

ブログをはじめる

たくさんの芸能人・有名人が
書いているAmebaブログを
無料で簡単にはじめることができます。

公式トップブロガーへ応募

多くの方にご紹介したいブログを
執筆する方を「公式トップブロガー」
として認定しております。

芸能人・有名人ブログを開設

Amebaブログでは、芸能人・有名人ブログを
ご希望される著名人の方/事務所様を
随時募集しております。