卑弥呼の鏡 | 古代文化研究所

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古代文化には、多くの疑問や問題が存在する。そういうものを日向国から検証していきたい。

○先日、2024年4月14日、朝日新聞文化欄に、次の記事が掲載された。

      奈良の古墳

      驚きの新発見続々

      100面超の銅鏡&長さ227㌢国産の蛇行鉄剣

   類例のない巨大な蛇行剣や盾形銅鏡の出土、100面を超える銅鏡

  の副葬の判明ーー。重要な発見が続く奈良の古墳を第一線で研究し

  ている考古学者二人が記者サロン「すごいぞ!奈良の古墳~富雄丸

  山古墳と桜井茶臼山古墳に迫る~」で、最新の研究成果について記

  者と語り合いました。

○この見出しと前置きなら、何も言及することは無い。ところが、実際、記事内容を読むと、次のように記録しているのに、驚き、呆れる。

   中国・魏王朝の歴史書「魏志倭人伝」には、239年に使者を送って

  きた邪馬台国の女王・卑弥呼に「銅鏡百枚」を与えたという記述があ

  ります。福永さんは、桜井茶臼山古墳で出土した鏡の半数以上が、卑

  弥呼の生前に中国からもたらされたものだとして、「邪馬台国と、古

  墳時代のヤマト政権が無関係とは考えにくい」と指摘しました。

○話が判るためには、この記事の冒頭部分が必要になるので、それも案内しておく。

   出演したのは、福永信哉・大阪大学大学院人文学研究科教授と、岡林

  孝作・奈良県立橿原考古学研究所学芸アドバイザー。歴史・文化財の取

  材を担当している奈良総局員の今井邦彦記者と、橿原支局長の清水健司

  記者が疑問をぶつけました。

○当古代文化研究所が、もし、疑問をぶつけるのであれば、まず最初に、本当に真面目に歴史を学ぶ姿勢があるかどうかだろう。それはこの記事の次の記録によって、確認される。

   中国・魏王朝の歴史書「魏志倭人伝」には、239年に使者を送って

  きた邪馬台国の女王・卑弥呼に「銅鏡百枚」を与えたという記述があ

  ります。

○一見、まともな表現のように見えるが、この人に日本の歴史を語る資格は無い。『中国・魏王朝の歴史書「魏志倭人伝」』と言う表現自体があり得ない。この表現には二重三重の誤りがある。そのことを、この記事を書いた今井邦彦・清水健司には理解されていない。

○まず、「魏志倭人伝」と言う歴史書は、この世には存在しない。日本で、「魏志倭人伝」と呼び称されるのは、わずか1986字の記録に過ぎない。原稿用紙にして、5枚弱。そんな代物を歴史書と呼ぶ方がどうかしている。真っ赤な嘘である。

○もっとも、日本では「魏志倭人伝」と言う呼称が一般化しているから、これはまあまあ許されるとしても、『中国・魏王朝の歴史書「魏志倭人伝」』と言う表現は、完全にアウトである。これは完全な誤解に基づくものと言わざるを得ない。

○邪馬台国や卑弥呼が記録されている書物は「三国志」と言って、中国の正史である。その三国志」第三十巻『烏丸鮮卑東夷伝』の最後の倭人条1986字が、いわゆる「魏志倭人伝」と言うことになる。

○朝日新聞は、それを、

  中国・魏王朝の歴史書「魏志倭人伝」

と案内するけれども、明らかに、それは誤りである。

○「三国志」を書いたのは、陳壽と言う史家である。陳壽が「三国志」を書いたのは晋の時代のことであって、その時、すでに魏国は滅亡している。陳壽は決して、魏国のために「三国志」をものしたわけではない。つまり、「魏志倭人伝」は魏王朝の歴史書では無い。

○もともと、中国の正史は、その王朝が滅んだ後に編集される。したがって、王朝の歴史書では無いことになる。どう考えても、『中国・魏王朝の歴史書「魏志倭人伝」』と言う表現は、あり得ない。

○また、記事中、

  福永さんは、桜井茶臼山古墳で出土した鏡の半数以上が、卑弥呼の生前に

  中国からもたらされたものだとして、「邪馬台国と、古墳時代のヤマト政

  権が無関係とは考えにくい」と指摘しました。

とあるけれども、それもおかしな話である。卑弥呼の鏡が桜井茶臼山古墳で出土した鏡であるなら、それは「銅鏡百枚」以下であるはずだろう。日本では、それこそ数百枚では利かないだけの枚数の銅鏡が出土している。出土しているだけで、その数である。出土していない数は、その数倍数十倍なのではないか。それが「卑弥呼の鏡と無関係とは考えにくい」とは到底、言えない。

○もう、こういう茶番を続ける時代では無い。こういう茶番を煽っているのが朝日新聞とNHKだと言うのが、何とも面白い。今回の新聞記事も、その一環に過ぎない。朝日新聞やNHKには文化が無いことの証拠である。

○第一、邪馬台国も卑弥呼も「三国志」に書かれた史実に過ぎない。したがって、「三国志」を離れて存在する邪馬台国論や卑弥呼論など、あり得ない。「三国志」を読むと、倭人条1986字の主題は、倭国三十国の案内であることが判る。それは次のように案内される。

  【渡海三国】
    ・狗邪韓国・対馬国・壱岐国
  【北九州四国】
    ・末廬国・伊都国・奴国・不弥国
  【中九州二十国】
    ・斯馬国・巳百支国・伊邪国・都支国・邇奴国・好古都国・不呼国
    ・姐奴国・対蘇国・蘇奴国・呼邑国・華奴蘇奴国・鬼国・為吾国・
    ・鬼奴国・邪馬国・躬臣国・巴利国・支惟国・烏奴国・(奴国)
  【南九州三国】
    ・投馬国・邪馬台国・狗奴国

○つまり、邪馬台国も卑弥呼も、すでに発見済みである。ご存じ無いのは、朝日新聞やNHKくらいのものである。ことわっておくが、考古学者先生に「三国志」は読めない。それが中国の史書である。もちろん、朝日新聞やNHKの記者に読めるはずも無い。

○こんないい加減な記事を書いてはいけない。それが上記の新聞記事である。文化の無さを露呈しているに過ぎない。それが朝日新聞の文化レベルである。