○立春詩の案内を続けている。今回案内するのは、元稹の『詠廿四氣詩・立春正月節』詩である。これまで立春詩を73首も案内しているが、その中に、元稹の作品がまだ一つも無いと言うのも、また珍しい。
〇元稹の『詠廿四氣詩・立春正月節』詩は、次の通り。
【原文】
詠廿四氣詩・立春正月節
元稹
春冬移律呂
天地換星霜
冰泮游魚躍
和風待柳芳
早梅迎雨水
殘雪怯朝陽
萬物含新意
同歡聖日長
【書き下し文】
廿四氣詩を詠む・立春正月節
元稹
春冬は律呂を移し、
天地は星霜を換ふ。
冰泮に游魚の躍り、
和風は柳芳を待つ。
早梅は雨水を迎へ、
殘雪は朝陽に怯ゆ。
萬物の新意を含み、
同歡する聖日は長し。
【我が儘勝手な私訳】
冬から春へと、季節は律呂(音階)を変調して、
自然も冬から春へと、衣替えしている。
川では氷が融けて、小魚たちが泳ぎ回り、
春風は柳の枝をそよぎ靡かせている。
寒梅は春雨に打たれて輝きを増し、
遠山に残っている雪は、春の陽気に怯える日々となった。
立春の今日、萬物は新しい時代を迎え、
立春の祝日である今日一日は、見るもの聞くものが多く、日が何とも長い。
○さすが元稹、立春はこうあるべきだと詠じてみせる。それがまた、何とも格好良い。 詩人は生まれながらにして詩人である。そう判じるしかない。