SIS日記 -8ページ目

SIS日記

NPO法人SIS(シス)スタッフによるリレー形式の日記です。
「こころが動いたこと」や「共有したいささやかな出来事」など
スタッフの「想い」を定期的に更新していきます。
どうぞお楽しみに!

ひきこもりを考えるヒント  連載-7
 

            
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼    ほっとするという安堵感、ゆったりするという脱力感、のびのびするという開放感、気兼ねなく振る舞えるという自在感、必要以上に意欲や感情を殺して周囲に合わせなくていい、ここにいることに条件をつけられなくてすむという安心感、誰にも攻撃されないという安全感、いつきてもこれらの雰囲気が変わらないという安定感……これらの諸感覚、自分が自分のままでいられるという諸感覚を「ある」の感覚(存在感覚)と呼ぶことができる。それはまた、一般的に自分らしさの感覚と呼ばれているものとも重なる。居場所とはそのような自分らしさ、「ある」の感覚が保証される場所を指している。
  (『居場所』芹沢俊介編「養育事典」より)
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

  その場所に居れば、安堵できる、ゆったりできる、のびのびでき、自在に振る舞える、安心できて安全で、いつでも安定した場所である。『居場所』について、丸ごと、余すところがないほどわかりやすい説明は無いでしょう。そして、上記のなにか一つが欠けたとしたら、『居場所』はその色合いを変えてしまうでしょう。
 上記にある、『「ある」の感覚(存在感覚)』という言葉については、ひきこもりを考える大事なキーワードです。ここではとりあえず、『自分らしさの感覚』としておきます。

 さて、そうすると、〝ひきこもり〟を始めた人は『居場所』を見失ったんだと思います。それまで我慢したり、努力や工夫をしてきたけれども、どうにもならなくなった。頭ではそれではいけないと思っていても、心(精神)がついて行けなくなった。そこで、やむにやまれず、緊急退避してしまった。

 この緊急退避行動が、ひきこもりの入口だと考えられます。入念に計画し、先々のことをよく考慮したわけではないと思います。だから、本人としてみれば説明もしにくいと思われます。そもそも「居場所」を見失ったとしても、その「居場所」というものは自己感覚であって、誰かに伝えることもしにくいものです。ただ、そのまま放置していれば限界になってしまい、自分がどうにかなってしまう、そういう感覚があるだろうと思います。

  緊急退避行動がひきこもりの第一段階だとするならば、ひきこもりには次の段階があるのでしょうか。ある、と私は思います。第二段階があり、第三段階があると思います。それは、次回から書きたいと思います。そこまでしっかり把握すると、ひきこもりの全体像が見えてくると思います。それから、「そんなことで逃げ出すのは弱さの証拠だ」「甘えているんだ」という見方についても考えたいと思います。では、次回に。  
(鮮)
 

※SISでは、ケースに応じた相談活動を行っています。
◎不登校やひきこもり、子どもや親に関わるご相談
◎職場や地域とのつきあいや人間関係に関わるご相談
など、専門的訓練を受けた SISカウンセラー がお話を伺います。
◎メール相談専用アドレス
  helpline@sis-oasis.com

 

ひきこもり問題・「コミュニケーションの困難」 連載-6

『白書』の調査データーを通して、ひきこもり経験者・当事者の生の声、感じ方、現在のようすなどさまざまな状態を取り上げてきました。『白書』は、かつてないほどの重要な素材を、鮮やかな切り口で資料化しています。今回は、人間関係やコミュニケーションで感じることがテーマです。

【8】人間関係やコミュニケーションで感じること 

(回答者913~937人、単一回答)
 「社会的スキルに自信がない」回答が「そう思う」「やや思う」を合わせると9割以上。「対人関係に漠然とした恐怖感がある」回答は、やはり9割以上。恐怖感よりもやや柔らかい表現の「人と話すのが苦手」は8割以上です。
 8つの項目それぞれに対する単一回答ですから、「社会的スキル」の項目、「人間関係に恐怖感」の項目、「話すのが苦手」の項目の3つは「自信がない」「恐怖だ」「苦手だ」と共に否定的な回答を選んだ可能性が大きいと思われます。
 しかし、反面、「いまよりも人と交流したい」は6割以上になっています。現状の自己意識が否定的であっても、未来への希望は前を向いているということです。「似た体験・経験をした人と交流したい」も同様です。7割近くの人が、「そう思う」「やや思う」と回答しています。

【9】人間関係やコミュニケーションについて……どう感じているか (自由記述9人) ここでも自由記述は9人と少ないですが、人間関係やコミュニケーションにかかわって何をどう感じ、悩んでいるか、たくさん手がかりがあります。


◆「就労作業自体には抵抗を感じないが、各場面でのコミュニケーション、休憩時間、昼食 時を想像すると身がすくむ」(1)のように、休み時間に場を共有する時に自分の「異質性」が露わになるのを怖れる気持ちが書かれています。

(2)の「仕事の付き合いとなるともっと怖い」も同質で、固定した集団で時間を過ごすことに恐怖する気持ちが語られています。

◆全体として、人間関係やコミュニケーションに対して怖れる気持ちが書かれています。

「身がすくむ」(1)

「人間関係が恐怖」(2)

「人と関わるのが苦手」(3)

「人間関係で対人恐怖となり、心が限界を迎えてしまった」(4)

「会話を避ける癖がついている」(5)

「人が苦手で失敗が怖い」(6)

「幼少期からコミュニケーションが不得手」(7)

「他者との距離感を喪失している」(8)

など。また、「対人恐怖があるから就労したくないのか、なくてもしたくないのか判断がつきません」(9)は、人間関係に怖れを抱きつつも自分が就労に足を踏み出せない理由は何か、かんたんに見極めがつかない心境が書かれています。


さて、ここまで〝ひきこもり状態〟の実際、ならびに当事者の声を取り上げてきました。「ひきこもり白書2021」の膨大で入念な調査に感謝いたします。
次回からは、もう少し踏み入って考えてみたいと思います。〝ひきこもり状態〟とは詰まるところ何であるのか、なぜそういう状態が起きるのか、その出口はあるのか、親はどうしたらよいのか、など。腰を入れて本格的に考えてみたいと思います。次回の準備の関係上、4~5日後に投稿を再開しますのでお願いします。
(鮮)

ひきこもり問題・「生きづらさ」 連載-5


  「白書」では、「生きづらさ」「コミュニケーションの困難」も聞いています。

【6】「生きづらさ」を感じるか……過去・現在 (回答者
1,679人、単一回答)
  「生きづらさ」を感じたことがあるか……アンケート回答1,679人のうち「現在感じる」87,4%、「過去感じていた」11,6%です。現在と過去を合わせると99%になります。


【7】「生きづらさ」の理由……それはどのようなものか (自由記述人)
 「生きづらさ」の理由についての自由記述は9人のみです。どんな風に生きづらいのかを書くこと自体が難しい面があるように思えます。しかし、書かれたことから浮かび上がってくることに、いくつかの特徴があると思います。それを整理してみました。

◆家族・両親との関係から……自分の現状を「理解してもらえない」
(1)、親の思い通りにならないと怒鳴り散らす(2)など、身近な家族との人間関係による生きづらさ。

◆人が怖い、好きでない……人間で嫌な思いをさんざんしてきたから、もう誰とも関わりたくなどない
(3)、自傷しながら生きてきた。人の視線が苦手(6)、自分の不安をうまく表現できない。他人が怖い(7)など、表現しにくいが「人が怖い、好きでない」状態が蓄積され継続されている。

◆発達障害の困難……発達障害で日常生活に困難を感じる場面が多い
(5)のように、「発達障害」の特性が日常的に「生きづらさ」をもたらしている。

◆漠然とした自責感……原因を探っても漠然としていて常に自責感が消えない(8)と書かれている。(3)(6)(7)の「人が怖い、好きでない」という記述に対し、「自責感」として内面化されたところから記述されているように思える。

◆僕が僕のまま存在していてはいけないの!?という思い
(9)と書かれている。これは、上記の「人が怖い、好きでない」(3)(6)(7)への振り幅が「自責感」から逆向きに振れたものと思える。「なぜ、どこへ行っても否定され続けなくちゃならないの!?」と「他責」に向いていると思える。

「生きづらさ」の感じ方について自由記述を見ると、いくつかのことに気がつきます。前回の「就労していない理由」から引き継いで考えると、「仕事先の人間関係」から場面が広がっていることです。家族関係がその一つ。それから具体的記述としては無いが、学校などの場が考えられます。また、発達障害であることによる「生きづらさ」が記述されています。そして、「人生の半分以上を自傷しながら生きてきた」(6)のように長期にわたる場合があること。よって、(7)(8)のように記述しようとしても「うまく表現できない」「言葉が出ない」「漠然としている」など、焦点的に伝えにくい。あるいは、(3)のような「そもそも人間が好きではない」や、(9)のように「僕が僕のまま存在してはいけないの!?」というような、斜めに切り口が開いたような記述もあります。

それぞれ、立ち止まって噛みしめながら考えたいと思うものです。発達障害とひきこもりとの関係についても、どこかで取り上げたいと思っています。


次回は、「コミュニケーションの困難」についてです。(鮮)