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SIS日記

NPO法人SIS(シス)スタッフによるリレー形式の日記です。
「こころが動いたこと」や「共有したいささやかな出来事」など
スタッフの「想い」を定期的に更新していきます。
どうぞお楽しみに!

ひきこもりを考えるヒント連載-10


石崎さんの場合
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  とにかく、親と顔を合わせたくなかった。ひきこもりにとって、親とは一番身近な社会なのだ。社会に出るには、社会に合わせる必要がある。それと同じように、親と対面することはひきこもりである自分そのものでいられない苦痛がある。自分がひきこもりであることを尊重されないかぎり、その気持ちは消えないだろう。また、ここまで育ててくれたのに「こんな状態で申し訳ない」という気持ちが溢れてしまう。
  ※石崎森人さん 「ひきこもるキモチ」不登校新聞・ひきこもり経験者手記より

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 やむにやまれず、ひきこもった。緊急退避です。どこかシェルターや、「ひきこもり安定所」なんていう場所があるわけでないから、自室にひきこもる。自室がある自宅には、親や家族がいる。とくに親は、「どうした?」「何があった?」などと尋ねる。本人は、うまく答えられない。二、三日ぐらいならまだしも、自室こもりが長くなると親は気が気でなくなってくる。「いつまでそうしているんだ!?」「いい年をして働かないなんて」・・・

 親が言うことは、それはその通りだと本人は思っているし、わかっているのです。石崎さんは、手記「ひきこもるキモチ」の別の箇所で次のように書いています。
 『当時、自分の置かれた状況に背筋が凍ったことを覚えている。「新卒で入社した会社を辞めてしまった・・・」。すでに25歳が近かった僕は、まともなチャンスを失ってしまったと、ひどい不安に襲われた。』
 『社会の常識で言えば、働かないといけない大人が、昼間から寝ている。そんな状況にいる自分を責める。同年代がキャリアをつけているあいだに、寝ている自分はなんて愚かなのか。就職もブラック企業しか残っていないのでは? そんなところに弱っちい自分が就職できるのか? こんなヒッキーは恥ずかしくて家族にも顔を合わせられない。存在していることが罪だ・・・。』

 緊急退避したとたん、〝社会常識〟がどっと押し寄せて来る。それは、自分の内側からどどぅっと溢れるように湧いてくる。その〝社会常識〟と自分の状況、愚かで、弱っちくて、存在していることが罪であるように思える自分と、整理したいけれども整理しきれない。

 親が、「どうした?」「何があった?」「いつまでそうしているんだ!?」「いい年して働かないなんて!」と言うとしても、それは自分の中にもある声なのです。心にチクチク、グサグサ、突き刺さるような声を振り払うのに精一杯なのだと思います。

 同時に、「自分がひきこもりであることを尊重されないかぎり」という言葉があることを見逃さないでいただきたい。愚かで、弱っちくて、存在していることが罪であるように思える自分であるけれども、そこから出発するしかないのです。そういう自分とがっちり四つに組む時間が、ひきこもり滞在期です。

 ひきこもり滞在期について、次回は、山田ルイ53世の体験記です。
 (鮮)

※SISでは、ケースに応じた相談活動を行っています。
◎不登校やひきこもり、子どもや親に関わるご相談
◎職場や地域とのつきあいや人間関係に関わるご相談
など、専門的訓練を受けた SISカウンセラー がお話を伺います。
◎メール相談専用アドレス  helpline@sis-oasis.com

 

ひきこもりを考えるヒント連載-9


 緊急退避してひきこもってしまった。何てことをしてしまったのか。すると、そういう自分、ひきこもりを選択してしまった自分とどっぷり向き合わざるを得なくなる。けれども、そこにすぐ答えが見つかるわけではない。こうして、ひきこもりの第二段階が開始されます。やむにやまれず緊急退避したのがひきこもり第一段階とすれば、この第二段階はひきこもりに浸る〝滞在期〟と言えます。

 何人かの経験者が、そのとき(滞在期の最中)どんな様子・状態・思いであったか書き留めた文章があるので紹介します。


🔸とにかく、親と顔を合わせたくなかった。ひきこもりにとって、親とは一番身近な社会なのだ。社会に出るには、社会に合わせる必要がある。それと同じように、親と対面することは、ひきこもりである自分そのものでいられない苦痛がある。自分がひきこもりであることを尊重されないかぎり、その気持ちは消えないだろう。また、ここまで育ててくれたのに「こんな状態で申し訳ない」という気持ちが溢れてしまう。
  ※石崎森人さん 「ひきこもるキモチ」不登校新聞・ひきこもり経験者手記より

🔸昼間起きていると、たとえ体は家の中にあり、外の世界と遮断、隔離されていても、娑婆の〝活気〟が侵入してくる。それを防ぐことは容易ではない。部屋の窓のわずかな隙間や、空気取りの換気口から、道を行き交う人々の気配、笑い声、学校のチャイムの音などが、それこそ放射線のように入り込んできて、脳が感知し、結果、自己嫌悪に苛まれることになる。…用事がある時以外は二階にある自分の部屋からは一歩も出ない。部屋を出るのは風呂、トイレ、飯の時くらいで、あとはずっと自分の部屋である。…非常にありきたりな言い方になるが、まさに吸血鬼、ドラキュラのようなライフスタイルである。「なんて不健康、不健全な生活なんだ!」と 断罪されそうだが、ひきこもっている人間にとって夜は最高である。頑張っている、前進している人間がいないというのは、人生を立ち止まってしまった人間にとってとてつもない安心感をもたらす。
  ※山田ルイ53世(お笑いコンビ「髭男爵」) 「ヒキコモリ漂流記」角川文庫より

🔸心の悲鳴が四六時中耳に響き、フラッシュバックが心身を苛み、これでもかこれでもかというほど記憶が暴れ出し、自分がされたこと、されなかったことへの怒り、また侮辱的な扱いを受けたことに対する許せない気持ちや、逆に自分がやってしまったことに対して詫びる気持ちや自分を責める気持ちが襲いかかってくるので、私の感情は怒りと自責の念で埋め尽くされる。それらにひたすら耐えるため、その場に立ち上がるエネルギーを使い尽くすような日々が続く。……このように、自分だけとがっちり四つに組んで、他人には分からない世界で組んずほぐれつの格闘を繰り返していると、それ以外の世界、つまり普通社会が遠い存在に感じられてきて、果ては異世界に思えてくる。普通社会の常識、そこにいるのはどういう人たちなのか、その人たちはどういうルールで関わりあっているのか、そもそもそこは安全なのか危険なのかなど、社会生活を営む上での基本情報がまったく分からなくなり、予想もつかなくなっているため、普通社会を未知の世界に感じてしまうのだ。
  ※聞風坊さん 「こもって、よし!」鉱脈社より


 今回は、3人の経験者の体験記をじっくり読んでみてください。緊急退避して、いわゆる〝ひきこもり〟に滞在しはじめたときに何を感じ、考え、どう自分と向き合おうとしているか。次回は、この滞在期の持つ意味を考えてみたいと思います。 (鮮)

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ひきこもりを考えるヒント連載-8


              
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼  ほっとするという安堵感、ゆったりするという脱力感、のびのびするという開放感、気兼ねなく振る舞えるという自在感、必要以上に意欲や感情を殺して周囲に合わせなくていい、ここにいることに条件をつけられなくてすむという安心感、誰にも攻撃されないという安全感、いつきてもこれらの雰囲気が変わらないという安定感……これらの諸感覚、自分が自分のままでいられるという諸感覚を「ある」の感覚(存在感覚)と呼ぶことができる。それはまた、一般的に自分らしさの感覚と呼ばれているものとも重なる。居場所とはそのような自分らしさ、「ある」の感覚が保証される場所を指している。
  (『居場所』芹沢俊介編「養育事典」より)
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 〝ひきこもり〟は、まず一定の場所にいたたまれなくなって緊急退避をした。これが入口であり、第一段階であると、前回書きました。
 気がついたら会社を辞めてひきこもっていた、頭では良くないと考えていても心(精神)がついて行けなくなった、そういう感覚。そのまま放置し、会社や所属集団の中に居れば自分が保てなくなる。うつ病や、精神的障害など、ほんとの病気になってどうにかなってしまいそう。そんな感覚。

 前回に引き続いて今回も『居場所』の定義を掲げましたが、あらためて次の箇所を見てください。

「必要以上に意欲や感情を殺して周囲に合わせなくていい、ここにいることに条件をつけられなくてすむという安心感、誰にも攻撃されないという安全感」・・・

 本人もある程度は頭では分かっている。会社や集団の中では「感情を抑えて周囲に合わせる」とか「連携して仕事をする限りは何かと条件をつけられるだろう」とか「ミスや失敗をすれば叱られるかもしれない」・・・そういう不安があっただろうと思います。

 しかし、あァ、ここに自分の居場所はないんだという感覚になってしまった。『白書』には、その告白がさまざまに綴られていました。


🔸失敗するのではないか、怒られるのではないかと不安で外に出られなくなる。

🔸仕事自体より、そこで発生する人間関係に対して気が重い。迷惑をかけたり、傷つけたりするのがとても怖い。気を遣わなきゃいけないのがもう疲れた。つらい、しんどい。自分を演じてしまう。信じられないほどエネルギーを使う。

🔸就労作業自体には抵抗を感じないが、各場面でのコミュニケーション、休憩時間、昼食時を想像すると身がすくむ。異質な存在になることに恐怖を感じる。


 抽出した3つの告白は、いずれも不安感や孤立感を示していると思います。それが、どんどん膨らんで来る。そのために緊急退避した。ところが、〝緊急〟の退避だから、何か出口への戦略を持っているわけではない。こうして、ひきこもりの入口に入ったとたんに、〝ひきこもりをしてしまうような自分〟とどっぷり向き合わざるを得なくなる。この状態が、ひきこもりの第二段階となる!!! そのように考えます。次回へ。 (鮮)

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