ひきこもり問題・「生きづらさ」 連載-5


  「白書」では、「生きづらさ」「コミュニケーションの困難」も聞いています。

【6】「生きづらさ」を感じるか……過去・現在 (回答者
1,679人、単一回答)
  「生きづらさ」を感じたことがあるか……アンケート回答1,679人のうち「現在感じる」87,4%、「過去感じていた」11,6%です。現在と過去を合わせると99%になります。


【7】「生きづらさ」の理由……それはどのようなものか (自由記述人)
 「生きづらさ」の理由についての自由記述は9人のみです。どんな風に生きづらいのかを書くこと自体が難しい面があるように思えます。しかし、書かれたことから浮かび上がってくることに、いくつかの特徴があると思います。それを整理してみました。

◆家族・両親との関係から……自分の現状を「理解してもらえない」
(1)、親の思い通りにならないと怒鳴り散らす(2)など、身近な家族との人間関係による生きづらさ。

◆人が怖い、好きでない……人間で嫌な思いをさんざんしてきたから、もう誰とも関わりたくなどない
(3)、自傷しながら生きてきた。人の視線が苦手(6)、自分の不安をうまく表現できない。他人が怖い(7)など、表現しにくいが「人が怖い、好きでない」状態が蓄積され継続されている。

◆発達障害の困難……発達障害で日常生活に困難を感じる場面が多い
(5)のように、「発達障害」の特性が日常的に「生きづらさ」をもたらしている。

◆漠然とした自責感……原因を探っても漠然としていて常に自責感が消えない(8)と書かれている。(3)(6)(7)の「人が怖い、好きでない」という記述に対し、「自責感」として内面化されたところから記述されているように思える。

◆僕が僕のまま存在していてはいけないの!?という思い
(9)と書かれている。これは、上記の「人が怖い、好きでない」(3)(6)(7)への振り幅が「自責感」から逆向きに振れたものと思える。「なぜ、どこへ行っても否定され続けなくちゃならないの!?」と「他責」に向いていると思える。

「生きづらさ」の感じ方について自由記述を見ると、いくつかのことに気がつきます。前回の「就労していない理由」から引き継いで考えると、「仕事先の人間関係」から場面が広がっていることです。家族関係がその一つ。それから具体的記述としては無いが、学校などの場が考えられます。また、発達障害であることによる「生きづらさ」が記述されています。そして、「人生の半分以上を自傷しながら生きてきた」(6)のように長期にわたる場合があること。よって、(7)(8)のように記述しようとしても「うまく表現できない」「言葉が出ない」「漠然としている」など、焦点的に伝えにくい。あるいは、(3)のような「そもそも人間が好きではない」や、(9)のように「僕が僕のまま存在してはいけないの!?」というような、斜めに切り口が開いたような記述もあります。

それぞれ、立ち止まって噛みしめながら考えたいと思うものです。発達障害とひきこもりとの関係についても、どこかで取り上げたいと思っています。


次回は、「コミュニケーションの困難」についてです。(鮮)