大人の絵本「いのちの時間」 | SIS日記

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NPO法人SIS(シス)スタッフによるリレー形式の日記です。
「こころが動いたこと」や「共有したいささやかな出来事」など
スタッフの「想い」を定期的に更新していきます。
どうぞお楽しみに!

いのちを巡る緊密な言葉(詞) 〔絵本のさんぽみち〕 

※絵「生まれたてのたまご」
 

「大人の絵本」というジャンルが、私の住む市の図書館にある。どこの図書館にもあるかどうかは知らないが、以前から私はこの一角の書物を気にしていた。ショーン・タンによる想像上の生きものが跋扈する魅惑的な絵本など、お薦めしたいものもある。

さて、「いのちの時間」と題した絵本。ブライアン・メロニー・作、ロバート・イングペン・絵、藤井あけみ・訳、新教出版社・刊の絵本。その1ページ目を開く。言葉(詞)と絵とが、くっきりとしていて分かちがたく結びついている。

「いのちには、はじまりとおわりがあって その間を“生きている”という。」


「その間を“生きている”という。」という言葉を見ながら、たまごの絵を見る。たまごは温かくて、もうすぐにでも中から鳥の雛が殻を叩いて出て来そうな気がする。

2ページ目。
「いま、こうしている間も たくさんのいのちが どこかで生まれ どこかでおわりをむかえている。」

貝殻がぐるりと円のようにして描かれている。もう風化しかけている貝殻に目が行く。

3ページ目。
「そして、いつもそのまん中に、生きている時間が満ちている。」
※絵「熱帯魚」

「いつもそのまん中に……生きている時間が満ちている」という言葉がくっきりとしている。それは、一つの個体を表す言葉でなく、私たちのこの世界のことを表している。

4ページ目。
「これは、花、人、鳥、魚、木、動物 すべてのいのちにとって、まぎれもない真実。」「どんなに小さな虫にとっても。」
※絵「アリ」
3ページ目の「生きている時間が満ちている」を受けて、書かれている。「どんな小さな虫にとっても」と継がれ、アリに目が行く。

この後、いのちにとって困難が生じる、「生老病死」のありさまが書かれ、とくに「死」についてのページとなる。

「死はとても悲しいこと でも、それは生まれる前から 花、人、鳥、魚、木、動物 すべてのいのちに約束されたこと。」「どんな小さな虫にとっても。」
※絵「アリ」

ここは、3ページ、4ページの「すべてのいのちにとって」「いつもそのまん中に……生きている時間が満ちている」のネガ(暗転)になっている。「死」は、すべてのいのちに約束されている。そして、「どんな小さな虫にとっても」と継がれ、アリに目が行く。ここで描かれているアリは、骸(むくろ)だ。

最終ページは、次のようにして閉じられる。
「長くても短くても いのちの時間にかわりはない。はじまりがあっておわりがあり その間には“生きている時間”がみちている。」最終ページの挿絵は、メガネや指輪などの遺品、魚の剥製など。“生きている時間”が存在していた痕跡を表す物が描かれている。

無駄の無い、実に緊密な言葉で構成された「絵本」だ。ずっしり、重い「絵本」だ。