ビートルズの万華鏡と世界 
 
 サムが、生まれた赤ちゃんにつけた名前は、「ルーシー・ダイアモンド」でした。ビートルズの曲にある、「Lucy In The Sky With Diamonds」(ルーシーはダイアモンドをつけて空を舞う)からとった名前でした。
 
 詩的センスにあふれた歌詞で、軽やかな曲です。ルーシーは、万華鏡の目をした女の子で、ダイヤモンドをつけて空を舞うのです。実際に、ビートルズメンバーの近くにいる女の子の存在から着想した曲だということです。
 映画「アイ・アム・サム」(I am Sam)では、この曲に限らず全部で20曲のビートルズナンバーが使われています。
 また、それだけでなく、サムの頭のなかはビートルズに関するエピソードで溢れています。たとえば、法廷で「娘の養育に自信があるか」と問われたときのサムの答えで、名曲「ミシェル」誕生のエピソードが語られます。「ポール・マッカートニーから中途で渡された曲に、ジョン・レノンが『アイ・ラブ・ユー』のリフレインを付けて、名曲が誕生したんだ。」(養育についての僕の答は、『アイ・ラブ・ユー』なんだ・・・と。)
 
 自閉症者サムに限らず、私たちは大好きなことへの興味や関心を持続的に追求して、刻々と変わり、小刻みな対応を余儀なくされる現実世界とは別個の世界を持ちたくなる心性を持っています。自閉症者は、とくに、不安定なこの世において一定の揺るぎない安定した体系があるのを見いだし、こだわる傾向があると思います。
 
 私たちと自閉症者の世界は隔絶したものでなく、重なり合うものだということを、映画「アイ・アム・サム」(I am Sam)はわかりやすく示していると思います。
 
 さて、ビートルズの曲にある、「Lucy In The Sky With Diamonds」のルーシーの話に戻ります。ルーシーは、万華鏡の目をして木や空や花や光を見つめ、感じる女の子です。
 
 そんなキラキラした目に、どう寄り添って、どう守っていくのか、そういう物語でもあるように思えます。この映画は。(つづく)
 
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