赤ちゃんにミルクをあげる時間
 
  映画「アイ・アム・サム」(I am Sam)は、自閉症と知的障害を併せ持ったサム・ドーソン(ショーン・ペン)の生きざま、暮らしぶりを具体的に映し出しています。
 
 サムに子どもが生まれたのですが、母親は病院から退院したとたんに姿をくらましてしまいます。さぁ、そこからがたいへん。サムは勝手が分からず、向かいの部屋に住む中年女性・アニーに相談すると彼女は次のように助言をします。(アニーは、外出恐怖症で部屋にこもりきりです。サムは、そのことを何も気にしていない様子。アニーはアニーだというように。)
 
 『赤ちゃんには2時間ごとにミルクをあげる必要があるのよ。そうね、たとえば、児童用テレビ番組の「魔女ジニー」が始まるとき、次には○○が始まる時間、・・・』
 
 これは、『時間の構造化』ということですね。「時間」そのものは見えるものでなく、時計などで可視化され、抽象的な数字で表されている。それを、テレビ番組表という暮らしのなかにある手がかりに置き換えてサムに伝えたのです。
 
 サムにとって、赤ちゃんが存在するということは全く新しい事態です。それは、君の行いの結果だと言ったとしても「新しい」事態であるのに変わりなく、またサムでなくても成人男性の誰にでも起こり得ることです。
 
 それを、『環境調整』として分かりやすくサムに伝えたのです。激変した環境(赤ちゃんの誕生)と、サムがサムとして変わらないこととの調整・接着剤として伝えたのです。
 
 こういうことが、ポッと出てくるところに外出恐怖症であるアニーの知性と人となりがうかがわれます。ただ、その辺りは深彫りされてはいません。
 
 もし、あらためて映画「アイ・アム・サム」(I am Sam)をDVDで観ることがありましたら、アニーの存在とアニーの言葉を注視してもらうのも一興かと思います。(つづく)
 
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