こうやって、僕のエフィラージュカットはスタートしました。。。


つづく、、、、

その日から、不定期ですが時間に余裕がある時はモデルカットをして行くようになりました。。。

良く分かっていませんでしたが、ショートのモデルを3人立て続けにカットしました、、、
と言っても、教えてもらうワケでなく、自分で切って、最後に切り返されるの繰り返しでした。。。
当然、自分にとって何か少しでも理解出来てるなんて全く無い状態でした。。。

ただ、とにかく営業中、少しの時間さえあれば、とにかくKenzoが切ってるのを後ろにへばりついて見てました。手取り足取り教えてもらえるワケでなかったので、とにかく見るしかない、、、そして真似するしかありませんでした。。。
あまりににへばりついていたので、仕草なども含めて似て来たのか、お客さんには良くKenzoと兄弟と間違われてましたし、しまいには僕をKenzoと間違える事もしょっちゅうでした。とにかく見まくりました。。

そして、またまたモデルカットとなった日、、、その日はロングでした。。。
ショートも3人しか切っていないのに、、、ロングか。。。切り方全く分からない。。。。。
と言っても、また2,3メッシュ切って見せてもらうだけ、、、、、見よう見まねと試行錯誤で切っていると、、、、その時、、、指を切りました。。。自分にとっても初めてでした。。。

すると、、、、モデルが急に泣き出しました!!!
僕としては指切った事より、泣き出した事にビックリしました。
「大丈夫?」と聞いてもうなづくだけ、、、それ以上何も喋れなかったですし、、、
さすがに困ったので、Kenzoに言いに行くと、、、

僕 :「モデルが急に泣き出しました!!」

Kenzo:「放っといて良いよ、、、」

僕 :「でも、、、」

Kenzo:「良いから良いから、、、泣かせておけば良いから、、、カット続けて、、、」

僕はカットを続けました。。。もうその日はカットがどうこうという事より、その事が気になってしましました。。。

また、数日後、その日はミディアムでした、、、またいつものように頭の中真っ白のままカットをし、とりあえずKenzoを呼びに行くと、、、そうあの日はサロンが暇でした、、、
Kenzoが来るやいなや、、、スゴい勢いでカットして行きました。そして、前髪の部分に差し掛かるとモデルが、、、何やら言いました。。。「前髪は切りたくないとか短くしたくない」とかたぶん言ったんだと思います。

そして、Kenzoは一言「Non」と、、、

そして、全く気にした様子も無く切って行きます。。。モデルは泣き出しました。。。
それでも、切って行きました。。。
ホント、この人は”鬼神”だと思いました。。。
会話のやりとりは良く分かりませんでしたが、切り終わったスタイルに結局モデルは納得していたようでした。。。

終わってからKenzoが僕に、、、
「モデルはしょせんモデルなんだよ。じぶんがやりたい事をやれば良いんだよ。。。どうせ何言ってるか分からないんだし、モデルの顔色見てカットしないでよ。。。」と、、、

こうやってマニアティスのトレーニングの考え方が少しづつ理解してきました。。。

つづく、、、



この日は、僕にとってフランスで生き方を知った気がしました。
そして、少しだけマルブフサロンのスタッフの一員になれた気がした日でした。。。。。

つづく、、、、


この日を境に、自分の意識も変わって行ったので、少しづつサロンにいる事が楽しくなって来ていました。
といっても、美容としては何かが出来るようになっているワケではなかったのですが、、、

とにかく、日本と違いカリキュラムとか、教育システムとかがマニアティスにはありませんでした、、、
なので、自分がどう進んで行けば良いのかが分かっていなかったですが、、、、

まずはブローからスタートしました。当然、いきなり人頭からです。。。フランスではウィックを使って勉強するという考え方がありません。。。スタッフの頭を借りてでしたが、もちろん手取り足取りなんて事はありません。。。
正直、どっちの手でドライヤー持って、どっちの手でブラシ持つのかも良く分かってませんでしたが、見よう見まねでやりました。。。くせ毛を伸ばすというブローをやってましたが、とにかくやっては直され、やっては直されの繰り返しでした。。。
とにかく、練習、営業中スタイリストがやってるのを見る、ヘルプに入るチャンスがある時は、そのスタイリストの真似をとにかくする、、、この繰り返しでした。。。
パリでの美容経験の中でも、正直ブローが1番難しかったかもしれません。。。でも、この経験のおかげで西洋人の髪質を知る事が出来たのかもしれません。。。

こうやって、サロンでの目の前の目標も出来、少しづつ慣れて来た頃(確か、2,3週間経った頃)、、、
営業中に、、、

Kenzo :「Keigo,,,ハサミ持って来てる?」

僕  :「持ってますけど、、、」

Kenzo :「じゃ、モデルいるからカットして、、、」

僕  :「。。。。。?????????????」

この時、本当にビックリしました。。。というか何言ってるのか分からない程でした。。。
もちろん、事前に言われてたワケではありません。
当然、ブローが出来るようになったワケでもなく、僕としてはまずはブローをしっかり出来るようになってからステップアップするのだと思っていました。。。
そして、驚いたのは、僕だけではありません、、、当時の仲間であるフィリップ、イオネル、ソンドリーヌをはじめ、スタッフも驚きを隠せてませんでした。。。

しかし、迷ってる暇なんかありません。。。

Kenzo :「シャンプーして、、、」

よーく考えてみたら、シャンプーもちゃんとやったことない。。。
アプロンティの子達も、焦って教えてくれながら、どうにかシャンプーをしました。。。
(フランスのシャンプーは日本と全く違います。本当に汚れを取るだけという感じです。日本のように”気持ち良さとかは無いですし、耳に水が入るのは当たり前だし、ゴシゴシ洗うなんて事もしない簡素な感じです。シャンプー練習も実際1日位なもんです。。。)

どうにか、シャンプーを終えると、、、

Kenzo ;「じゃ、切って、、、」

僕  :「、、、、、、、、、、、、、、、、」

てっきり、ハサミの持ち方やメッシュの取り方や、切り進め方や、こんなスタイルを作るんだよ的なモノは教えてくれるのかな、、、と思っていたんですが、、、、、、

困惑してる僕を見て、、、

Kenzo :「ここの量取って切って行けば良いんだよ」といって2.3メッシュ切り、、、、

   :「じゃあ、カット終わったら呼んで」と言ってその場からいなくなりました。。。。

本当にどうして良いのか分からなかったです。。。黒髪のフリーゼ(ウェーブのあるクセ)のミディアムのモデルさんでした。。。
まず何より仕上がりが想像出来ない。。。
とりあえず、見たようにやってみる、、、切っても何が変わっていってるのか?良く分からない。。。。
モデルもさすがに、不安そうな顔をしている。。。。でも何も言えない。。。。
頭の中真っ白になりました。。。。。(本当に記憶が若干欠如してます、、、)
覚えているのは、あまりに心配そうに、仲間達が何度も遠くから覗いていた事、イオネルがさすがに少し教えに来てくれた事だけです。。。
正直、どう終わったか、どんなスタイルだったのかも覚えていません。。。(きっと、何も出来ないまま、時間が経って見に来たKenzoが切って終わったのだと思います。。。)

こうやって、僕のエフィラージュカットはスタートしました。。。


つづく、、、、


後々、僕にとって大きな存在となりました。。。

つづく、、、

美容経験の無い僕が出来る事、、、
パリではサロンは完全分業制です。僕はカット、スタイリングのフロアに基本的にいました、、、当時マルブフには11名位のカット専門のスタイリストがいて、僕含めて3人のアシスタントがいました。。。(ジェロームもいました、、、)
その3人の中で自分が何が出来るか???答えはホント驚くほど簡単でした。。。

開店準備と掃き掃除でした。。。パリは朝礼とかありません。もちろんタイムカードなんてありませんから、開店までに来れば良いんです。ベテランになれば遅刻?なんて当たり前ですし、アシスタント、アプロンティ(学生兼シャンプー担当)も何の決まりもありませんから、大体ギリギリに来るんです。
なので、僕は毎日誰よりも早くサロンに行き開店準備をしました。。。別に得点稼ぎをしたいワケでなく、本当にやれる事をと思っていました。
そして、掃き掃除、、、11名のスタイリストがいましたから、結構な頻度になります、、、
他の2人より、とにかく早く掃き掃除をしようと思いとにかく、掃き掃除なら1番と思いやっていました。。。
その他の時間はとにかく、Kenzoを中心にとにかく後ろにへばりついてカット、仕事を見ていました。

そうホントに3日目位だったかな、、、Kenzoがカットが終わり仕上げをしている時に、、、

Kenzo : 「Keigo ラック持って来て、、、、」

僕  ;「。。。。。(ラックて何だろう????スタイリング剤だよな、、、)」

Kenzo : 「ラックだよ、ラック!」

僕  :「分かりません、、、、、」

Kenzo : 「スプレーだよ!!」

当時、サロンにはスプレーが2種類、ミスト(スプレーラックと表記されていた)ありました。僕は当然ミストを持って行ってしまいました。。。
結局、Kenzoは自分で取りに行きました。。。

Kenzo : 「スタイリング剤の名前位、フランス語で早く覚えろ!!!」と怒られました。。。

その日からスタイリング剤のカタログを持ち帰り、覚え、そして仕事を見ながら、ヘアスタイル、髪質にあったスタイリング剤選び、そして各スタイリストの好みを覚え、出来る限りスタイリングが始まったら用意するという事をしていきました。

もちろんソロンジュにもしました。。。他にも彼女はカット椅子に好みが他のスタッフより強く持っていて、僕はその椅子をいつも用意するようにしたりもしました。。。。

そんな事を続けて行ってるある忙しい日、、、

ソロンジュに,,,「Keigo,,,,,,,このお客さん仕上げて。。。」

本当にびっくりしました、、、まず名前を知っていていた事、そして読んでくれた事。。。
でも、あまりにも急な事、驚きとで何も分からなかった僕は「出来ない」と言ってしまいました。。。この時の事は本当に今も後悔しています。。。何でチャレンジ出来なかったのだろうと、、、

でも、たぶんソロンジュは見てくれていたんだと思いました。
ソロンジュにとっては、”誰だか分からないアジア人が、どんな人間なのか?じゃぁ、何するの?それが分からなければね、、、だったんだと思います。そして、僕がとっていた行動を見て、初めて名前が付いた人間になったのだと思います。

「言葉でも国籍でも無い、、、自分という人間、個性、そして行動があって初めて1人の人間として認められる。。。そして、その行動を良いも悪いも評価してくれる。」これは、僕にとって大きな事でした。。。
そして、「行動すれば、チャンスを与えてもらえるかもしれない、、、そのチャンスを必ず活かさなければならない」という事も同時に学ぶ事が出来ました。

この日は、僕にとってフランスで生き方を知った気がしました。
そして、少しだけマルブフサロンのスタッフの一員になれた気がした日でした。。。。。

つづく、、、、