ぼくは星をつくりたいと思った。
其れは地球と言う星に強く憧れたからだ。
ここは、銀河系の最果て。二酸化炭素も窒素も酸素もない。ただあるのは眼前に広がる暗闇の宇宙。そこに広がる満天の星。大きく、丸く、美しかった。
中でもぼくが一番のお気に入りに思っているのは、地球と言う星だ。ぼくはこの星に強く感動して、この星のような星を作りたいと心から思った。
地球は、青い星だ。
其れは、水と大気の関係だ。其処に生きている人たちは、其れを利用して生きている。ぼくが星を作る際にも、青い星を作るとしよう。
ぼくが星に魅了されていたのは、地球があるからだ。地球には文化がある、其れが素晴らしい。其処を支配している生物たちは、ニンゲンと呼ばれていた。
ニンゲンは、時に文化をつくり、言語をつくり、時に争う。死を悲しみ、悼み、生を尊ぶ。彼らがつくりあげる、その壮大な世界は、ぼくの心を強く引き付けた。
しかし、ニンゲンは欲に溺れ、他者を貶め、傷つけあう。傷つき、傷つけられ、深く悲しみ、だからこそ仲間を大切にできる。
ぼくが作りたいのはそんな星だ。
ぼくが作る星の住人達が織り成す物語は、ぼくを魅了するだろう。
さて、まず作らなければならないものは何だろう?
最初に作らなければならないのは中身だ。そういえば昔遊びで作った星がある。其れを利用しよう。
其処には地面や水や植物が必要だ。
そういえば海がない。其れも付け加えよう。
海のもとを流し入れるかな。塩の加減が丁度いいから。
ああ! 入れすぎちゃった。陸をひっぱりゃなんとかなるかな?
宝石はどうしよう? 山に埋まっていることにしよう。
どうかな? 地球ぽくなってきたかな?
そろそろ生き物をつくろうか。
そういえば、地球の生き物の最初はどうなっていたんだろう。確か……火山のウイルスからできたんだっけ。でも、アダムとイブが最初だって言う人もいる。
地球の赤ちゃんを連れてこよう。活きのいいヤツがいい。よく泣くヤツにしよう。
まぁ、ある程度はぼくが育てるとして、次に文化はどうしよう。そう言えば、地球には「絵」って言う文化があったなぁ、其れを真似したいかもしれない。
赤ちゃんが育ったら、絵を教えよう。そう言えば、昔かっぱらってきた絵が何枚かあったっけ。其れを元にどうにかさせようか。
建物をつくろう。病院と、施設と、消防署。警察署、デパート、学校、集合住宅……彼らは其処で生きて、其処で生活するのかな。
あ、忘れてた。動物を作らなきゃ。牛やら猿やらなんでもいいや。なんかこれ、火星人かも。
さて、あとは見守ろうかな。
其の星は「カレェ」と名付けられ、銀河の果てにひっそりと浮かんでいた。
一万年が過ぎ、十万年が過ぎ、其処らへんで数えるのをやめた。何億、何十億、何兆かの年月が過ぎたかも知れない。そんなところでどうにも文化は発展しているらしかった。
命の営みを見るのは、はっきり言ってすぐ飽きた。割とやりたいようにやらせておけ。どうせいいようにするだろう。
ぼくは宇宙船の中でカレーライスを食べながら、久しぶりにそんなことを思い出していた。
カレー、美味い。