ぼくは星をつくりたいと思った。
 其れは地球と言う星に強く憧れたからだ。

 ここは、銀河系の最果て。二酸化炭素も窒素も酸素もない。ただあるのは眼前に広がる暗闇の宇宙。そこに広がる満天の星。大きく、丸く、美しかった。
 中でもぼくが一番のお気に入りに思っているのは、地球と言う星だ。ぼくはこの星に強く感動して、この星のような星を作りたいと心から思った。
 地球は、青い星だ。
 其れは、水と大気の関係だ。其処に生きている人たちは、其れを利用して生きている。ぼくが星を作る際にも、青い星を作るとしよう。
 ぼくが星に魅了されていたのは、地球があるからだ。地球には文化がある、其れが素晴らしい。其処を支配している生物たちは、ニンゲンと呼ばれていた。
 ニンゲンは、時に文化をつくり、言語をつくり、時に争う。死を悲しみ、悼み、生を尊ぶ。彼らがつくりあげる、その壮大な世界は、ぼくの心を強く引き付けた。
 しかし、ニンゲンは欲に溺れ、他者を貶め、傷つけあう。傷つき、傷つけられ、深く悲しみ、だからこそ仲間を大切にできる。
 ぼくが作りたいのはそんな星だ。
 ぼくが作る星の住人達が織り成す物語は、ぼくを魅了するだろう。

 さて、まず作らなければならないものは何だろう?
 最初に作らなければならないのは中身だ。そういえば昔遊びで作った星がある。其れを利用しよう。
 其処には地面や水や植物が必要だ。
 そういえば海がない。其れも付け加えよう。
 海のもとを流し入れるかな。塩の加減が丁度いいから。
 ああ! 入れすぎちゃった。陸をひっぱりゃなんとかなるかな?
 宝石はどうしよう? 山に埋まっていることにしよう。
 どうかな? 地球ぽくなってきたかな?
 そろそろ生き物をつくろうか。
 そういえば、地球の生き物の最初はどうなっていたんだろう。確か……火山のウイルスからできたんだっけ。でも、アダムとイブが最初だって言う人もいる。
 地球の赤ちゃんを連れてこよう。活きのいいヤツがいい。よく泣くヤツにしよう。
 まぁ、ある程度はぼくが育てるとして、次に文化はどうしよう。そう言えば、地球には「絵」って言う文化があったなぁ、其れを真似したいかもしれない。
 赤ちゃんが育ったら、絵を教えよう。そう言えば、昔かっぱらってきた絵が何枚かあったっけ。其れを元にどうにかさせようか。
 建物をつくろう。病院と、施設と、消防署。警察署、デパート、学校、集合住宅……彼らは其処で生きて、其処で生活するのかな。
 あ、忘れてた。動物を作らなきゃ。牛やら猿やらなんでもいいや。なんかこれ、火星人かも。
 さて、あとは見守ろうかな。


 其の星は「カレェ」と名付けられ、銀河の果てにひっそりと浮かんでいた。
 一万年が過ぎ、十万年が過ぎ、其処らへんで数えるのをやめた。何億、何十億、何兆かの年月が過ぎたかも知れない。そんなところでどうにも文化は発展しているらしかった。
 命の営みを見るのは、はっきり言ってすぐ飽きた。割とやりたいようにやらせておけ。どうせいいようにするだろう。
 ぼくは宇宙船の中でカレーライスを食べながら、久しぶりにそんなことを思い出していた。

 カレー、美味い。

はじめまして、メシギツネと申します。



まず、はじめにお詫びを。
長期にわたる更新の遅れすいませんでした。
後でやろうとか明日やろうって思っているうちに時間だけが過ぎ、執筆が遅れてしまいました。
言いだしっぺなのに何やってるんですかね。ホント。


さて、今回のお話はいかがでしたでしょうか?
執筆暦の浅い僕にとっての初めての先頭描写、思うように筆が進まず苦労しました。頭の中にハッキリと戦闘の光景が見えているのに……言葉が、語彙が出ないーっていう状態に何度陥ったことか。


雛蹴鞠さんがおっしゃってたようにこの企画は個人のレベル差が露呈されてしまいます。僕は語彙が少なく文体も統一できていないのでまだまだなのですが、他の作者さんと同じ土俵に上がることで技術を盗もうと画策しこの企画をやりたいとワガママを言いましたw


ということで見苦しい文章が多いかもしれませんが今後ともよろしくお願いします。

 一行はひたすらに代わり映えの無い景色を歩いていた。小人たちが言うにはこのあたり一帯はかつて鬱蒼とした森だったらしい。だが、今はそのような面影は一切見あたらない。
「いーかげん飽きたなぁ」 
 ユースが腕を頭の後ろで組みながら言葉を漏らした。
「だいたいどこに向かってるんだよ」
「はぁ……これだからユースは」
 大げさに失望感を露わにしてため息をつくまな。その反応がシャクに触ったのかユースがわざとらしく彼女に質問をする。
「ほぅ。じゃあまなさんは俺たちの行き先をご存じなんですね?」
「そ、それは、あれだ、その……」
 先ほどまではある種の優越感に浸っていたまなだが急に落ち着きを無くし目も泳ぎだした。そして、困って目を泳がせていたまなが見つけたのはサリアだった。
「そうだ、頭脳担当のサリアが説明してくれる!」
「結局分かんねぇのかよ……」
「あ? なんか言ったか?」
「いえ……なにも……」
 まなの威圧的な態度に恐れをなし、すっかり小さくなってしまったユース。
 そんな彼をしり目にまなは高圧的な態度のままで改めてサリアに聞く。
「で、どうなんだ?」
「……うぇ!?」
 プラーをいじって半ば一人の世界に入っていたサリアが急に話題を振られたので奇声をあげてたじろぐ。
「え、えっと……あっち?」
 恐る恐る指で方向を示し、それに続き皆が視線で追う。
 だがその先は相変わらず青々とした野原のみ。目印になりそうなモノは一切無い。
 だから、サリアは不安になってしまう。
 恐らく自分の記憶は正しい。けど目印が無いから間違っているかもしれない。確実に合っているという確証が無い。みんなが注目して自分が言ったことを確かめている。間違っていたらどうしよう。自分のせいで違う道に進んだらどうしよう。どうやって責任をとればいいんだろう。
 サリアはこうして自らを追い込み、不安に押しつぶされてしまうという悪いクセをもっている。
 たとえ間違っていたとしてもそれを責めるような人間など図書館の住人にはいない。だが、常に完璧でないといけないという一種の強迫観念があり、それにより些細な事に囚われしまい結果、神経質と言われてしまうのだ。
「合ってるよね? 黒?」
 だから彼女は他人に頼ってしまう。自分の意見を肯定してくれる人に助けを求め、責任を少しでも軽くしようとしてしまう。 
 彼女は狡猾な人間などではない。彼女は心が弱いだけなのだ。
「あってるよー。でもって、もっと自信持ちなよ」
 ユースとまなは全く検討がつかなかったので後の一言は流してしまったがサリアは黒の何気ない一言に心を鷲掴みにされたようだった。
「気になったけどなんで二人とも行き先知ってるんだ?」
 その言葉に対し、二人は笑顔でこう答える。
「勘」
 もちろん、勘などではないのだが。
「大丈夫なのか!?」
「大丈夫! 女の勘をなめないで」
「あーもー好きにしろ!!」
 ユースは頭を掻きながら二人の示した方向へと大きな歩幅で歩きだした。彼は怒っている訳ではなく、蚊帳の外にされたことに対して拗ねているだけなのだ。

「おい、なんだよ……あれ」
 一人だけ先の方を歩いていたユースが何かを発見し、三人の方へ振り返る。
「……っ!」
 あまりに唐突な出来事に一行は言葉を失ってしまった。
 一面に広がる爽やかな大草原の中に一筋の赤黒い線が走っていたのである。
「これって……」
「どう見ても血だな」
 サリアは状況を飲み込めずショックを受けていたがそれに対しまなは冷静に受け止めていた。やはり戦闘の慣れ、経験の差であろう。
「あっちに向かっていったみたい」
「行くしかない……よな」
 ユースは義務感に捕らわれ、其の方向へ。
 血の臭い。
 雰囲気。
 近づく度に、アドレナリンが沸き上がる。
 徐々に辿っていた血痕は鮮やかな赤へと変化してゆく。血の彩度が高くなってゆくのと同時に一行の緊張も高まってゆく。
 一同の和やかな雰囲気はすでにない。
「居た!」
 一番目の良いサリアが発見した。
 
 血痕の原因にたどり着くと、そこには少女が居た。
 手には二つの人間の死体。
 近くにあった岩には山ほどの死体。
「なにしてんだよ!」
 あまりの出来事にユースが少女を怒鳴りつける。
「あ、人間」
 後ろを向いていたはずの彼女は瞬時にユースの正面に立っていた。
「お前、なにし……」
 ユースが話している途中にも関わらず少女は右手を振りかざす。
 危険を察知した彼はとっさに体を後ろに捻り少女から距離をとる。
 僅かにだが彼の服が裂かれた。
 ユースが左手に盾を出し構えると、まな・サリア・黒も構えて少女と対峙した。
「なにすんだよ!」
「なにって、人間ですから」
「だからなんだよ?」
 少女は彼の話を聞かずに再度、右腕を振りかざし攻撃の動きをとる。
 二度目の攻撃なので今度は軽々と攻撃を回避する。
「いい加減話そうぜ?」
「……」
 少女はただ無言でゆっくりと歩いてきた。
「ユース、きっとこいつがミラージュよ」
「イカれてるね、確かに」
「なら殺すしかない」
「来るぞ!」
 ミラージュはまた同じ動きで腕を振りかざす。武器らしい物ははなにも持っていない。
 ユースは右腕に剣を出し、彼女の攻撃の軌道上に合わせる。
 かん高い金属音が響きユースが体勢を崩し地面に横たわってしまう。
「クソッ……」
「動くなよ、ユース!」
 まなの声と同時に彼の上を槍が駆け抜ける。
「そこだ!」
 しかしまなの攻撃もミラージュが腕を払うだけでいなされてしまう。
「黒、任せた」
「まかせてー」
 黒はユースとまなが戦っている間に空中に飛び上がりミラージュの死角に回り込んでいた。
 そして上空からエンジンで加速して急降下で体当たりを仕掛ける。
 黒は小柄な体型だが自由落下とエンジンの加速とで速度を上げることにより攻撃の威力を高めていのだ。
 ミラージュはユースとまなの方向を向いているので黒の攻撃には気付くことはできない。
「見えてます」
 完全に不意をついたはずであったが、ミラージュ正確に黒の方向へと振り返る。
 さらに振り向きざまに後ろ蹴りを放った。
「がぁ……」
 黒は慌ててエンジンを逆噴射して止まろうとしていたが、すでにミラージュの間合いに入ってしまっていたため
蹴りを回避することができなかった。
 蹴りの衝撃で黒は吹き飛ばされ、その場で倒れてしまった。
「黒、大丈夫!?」
 ミラージュと距離を置いた位置で銃を構えていたサリアは銃をしまい黒の容態を確かめようと走り出す。
 サリアが走る物音に気付き、まなが一瞬だけ背後を確認した。後衛のサリアが銃も持たずという異様な光景に思わず二度見してしまう。
「どうしたサリア、 落ち着け!」
 まなが声を張り上げてサリアの行動を制止する。だがサリアは動きを止めずに走り続けた。
 彼女は心の支えと言ってもいいほど信頼している黒が倒れてしまったことにより錯乱状態になっているのだ。
 まなは暴走を止めるためサリアに向かって走り出す。

「サリア、どうした?」
 サリアの肩を揺らし正気を取り戻そうとする。サリアの顔は青白くなり、瞳孔も開いていた。
「だって、黒が、くろが……」
 サリアは黒の名前を呪文のように呟いていた。
「サリア!」
「……ッ!」
 まなが再び大きな声で彼女を呼ぶ。それに少し遅れてサリアは我を取り戻した。
「いいか、黒が倒れた以上サリアしかサポート居ないんだ」
「だから冷静に」
 まなは包み込むように優しく彼女を説得した。
 サリアは大きく深呼吸をして落ち着きを取り戻す。
「……うん」
「早速だが、アイツどうすればいい?」
 鋭い視線でミラージュを睨むまな。だがミラージュは全く動じずに立ち尽くしていた。
「たぶん能力はある」
「ああ」
「でも、データ少なすぎて分かんない」
「だから?」
「とにかく攻撃して」
「分かった」
 まなが前方に戻るのと同時にサリアが銃を取り出し即座にミラージュに向け発砲。一発だけでなく二発、三発と立て続けに攻撃を仕掛ける。
「無駄」
 かん高い金属音が三つ響く。
 ミラージュは避ける動作も防ぐような動作も一切見せずに全ての攻撃を無力化したのである。
 サリアは本来は狙撃手である。何百メートルも離れた位置からでも誤差を数センチ以内に収めて狙撃できるほどの技術と集中力を持っている。
 つまりサリアにとってミラージュとの僅か十メートル程度の距離では外すことなどあり得ないはずなのだ。
 サリアの心に動揺と疑問が生じる。
「ユース行くぞ」
 まなが光の槍を構えつつミラージュの左側から奇襲を仕掛ける。反対の右側に居たユースが短く「おう」とだけ返事をしてミラージュに向かい走り出す。
 サリアの攻撃に気を取られていたミラージュを左右から挟み撃ちする形になった。
 とっさの判断とは思えない程の同時攻撃。
 だが、ミラージュは全く行動していない。
 二人の攻撃がミラージュの間合いに入るかという手前で真っ直ぐ放っていた攻撃が横に逸れてしまった。まるで斜めの壁に攻撃したように。
 二人とも腕が必要以上に延ばされてしまい腹部ががら空きになってしまう。ミラージュはすぐさま二人の間を半円を描くように右腕を振る。
 すると腹部がざっくりと引き裂かれ鮮やかな赤が大量に吹き出す。ユースとまなはうめき声をあげながら地面に倒れていった。
 左手を堅く握りしめサリアは堪えていた。取り乱さず、あくまで冷静に。
 大きく喉を鳴らし、平静を保つ。
 今、自分がすべき事はなにか。してはいけない事は何か。感情任せにせず、客観的に情報の整理をしなければ。 今までの全員の攻撃に対する対応、挙動、表情、仕草。それら全てを詳細に分析する。そして対象の観察。
 僅かな異変も見逃さないようミラージュを凝視していると彼女の奥で何かが動いた。
 それは黒である。
 ミラージュから強烈な一撃を受け、倒れていたがそれは単に気絶していただけだったのだ。
 黒は体を動かさずに目のみでコンタクトをとる。
 サリアもミラージュに気取られないように自然に俯き黒に合図を返した。
「ちっ……」
 サリアはミラージュから離れる。
「弱虫」
 野次を無視してミラージュから距離をとったサリアは銃を彼女に向ける。
「これでどう?」
 そのまま撃つかと思われたが照準をミラージュから外しおおよそ関係のない方向へ銃を乱射しだす。
「とうとうおかしくなりましたか」
 哀れむような表情でサリアに言い放つ。だがサリアは口元を緩ませ軽く笑っていた。
 かん高い金属音がミラージュの背後から聞こえた。直後、左右からも同時に同じ音がする。
 サリアが明後日の方向に撃った弾丸がミラージュの前後左右、様々な方向から飛んでくる。
「手品ですか?」
 今までと同じトーンでサリアに皮肉混じりに聞くが彼女の表情が引き締まっていた。
 この攻撃はサリアの能力によるものだ。
 サリアの能力は空中に正方形の透明な箱を五つまで発生させるものだ。その箱に動いている物体が触れると反射・加速・停止させることができるのである。
 この物体に銃弾をあてることにより相手の予想しない方向、タイミングで攻撃するのだ。
「まだまだ」
 高速で銃をリロードしミラージュに行動させる隙を与えさせない。
 ミラージュは身動きがとれず防戦一方な展開に苛つきを見せはじめていた。
 直後、背後から元気な声が聞こえる。
「大盛り一丁!」
 ミラージュがサリアに気を取られている隙に黒が近くにあった岩にエンジンを付けミラージュに向け後ろから飛ばしたのだ。
「はぁ?」
 苛つきからなのか驚きからか先ほどまでの口調とは全く違う言葉遣いに変わっていた。
「なめんなよ!」
 力任せに腕を振り、岩を引き裂くミラージュ。
 岩は真っ二つに斬れてしまったが腕を振り抜いた瞬間、銃弾が彼女の足に二発命中したのである。
「当たった……」
 加速の物体を使い畳みかける。
 だが、また当たる気配がなくなってしまった。
「く……」
「……が」
 俯き何かを呟くミラージュ。
「くそがぁぁぁぁぁああ!」
 先ほどまで無表情だった少女が突如として怒りを露わにし豹変した。
「さっきからウゼェんだよ!」
 ミラージュは正面に手をかざし軽く捻るという不可解な行動をする。
「な、何よ……」
 サリアは警戒しつつも攻撃を止めずにいた。辺りを銃声が響きわたるなか
「うぅ……」
 うめき声がした。
 その出所を確認するためにサリアは射撃を止め辺りを見渡す。
 声はサリアから見てミラージュの奥から聞こえた。
 するとそこには黒が足を抑え屈んで小さくなっていた。
サリアが声を掛けようととしたとき、黒の頭に銃弾が当たる。
 何が起きたか理解できず呆然と立ち尽くすサリア。
「あーあ、フレンドリーファイアだね」
 憎たらしい表情であざ笑うかのようにサリア見下し話しかけてきた。
「お前が殺したんだろがぁ!」
 激昂するサリア。
 銃口を向けながら叫ぶが構えてる手は震え、目尻に涙を溜めていた。
「ワタシはアンタと同じことをしただけだよ~」
 その言葉の意味は理解できなかったが嫌みったらしい口調に腹が立ち銃を乱射せずにはいられなかった。
 能力なんてものは使わず直線で狙う。
「だからウゼェって!」
 先ほどとは違い手のひらを正面に掲げた。

 サリアは目を見開き動きが止まる。
 胸から熱いモノが流れてきた。
 ゆっくりと自分の胸を見るとそれは血だった。
「あ~あ一番ツラい所に当たっちゃいましたねー」
「うぁ……ぁ……」
 急いで傷口を手で抑えるが隙間から血が溢れてしまう。
 あまりの苦しさに過呼吸なるがより出血が増してゆく。
 ついに血が足りなくなり地に膝が付き、伏してしまった。

「あなた弱いですよ。色々と」
 平静を取り戻したミラージュが朦朧としているサリアに語りだす。
「意志が弱すぎです」
「仲間が攻撃される度に動揺って……お友達ごっこですか?」
「あげくの果てに未知の敵に総攻撃って」
「戦闘をバカにしすぎでしょ」
「あと決定力不足」
「銃ばっかに頼って」
「あなた自身は相当弱いんじゃないですか?」
 改めて欠点を指摘され悔しさが募るサリア。
 気づくと歯を食いしばり、銃をキツく握りしめていた。
「あなたの責任ですよ。これは」
 ミラージュは倒れている黒、まな、ユースを見渡し最後にサリアを見下ろす。
「だから一番苦しんで死ぬべきなんです」
「さよなら。頭でっかちさん」
 後悔、無力感、自責の念に飲み込まれサリアは動かなくなった。
 
あとがき


なにこのまとまりのなさwwwwwwwww
みなさんお久しぶりです、雛蹴鞠です。四人で合作行って、ようやく一巡しました。なんとなく嬉しく思ったり、なんとなく先は長いと思ったり。

この企画(modified library)は、あくまで合作なので自分の書きたいシーンを書こうとしても書けないときがありますね。いやまぁ、その分ほかの人が書いたらこうなるのかぁ、なんて感覚も覚えるんですけど、今回は戦闘シーンを見越してわざと此処までで筆を止めた感じですかね。ふむ。

いままでの小説人生のなかで、わざと筆を止めて他の人に任せる、なんてことしたことありませんから、今回の流れが本当に正しいのか間違ってるのか、ものすごくふわふわしてます。あぁでも、プロットはつくっておいてよかったと改めて実感しました。本作は誰かがつくったプロットにみんなでのっかって執筆する。というシステムなので(今回は例題的に私のプロット)、筆が進まないことはあっても、行き詰まることはない(はずな)んです。「合作小説って行き詰まることが多いよね」、「合作小説ってバラバラになりやすいよね」って概念を払拭する為のこの企画なので、まぁ、ある種、腕のない人こそこういうことをするべきだと思いますね。

というかその分この合作、ものスゴい勢いでレベルが露呈されていきますので、そこはそこそこ恥ずかしい。つっても言い出しっぺ(ではないか立案者なだけで)ですし、やんなきゃいけない立場なのですが、今回は……うーん、なんかすかすかというか、ちゃぷちゃぷというか。
まぁ繋ぎの場面ですから浅くてなんぼなのですけど、はぁもっと面白い描写が書きたいな、なんて思いつつ、まぁ後ろがそういうのは書くことになるだろうし、それはそれで面白いかも、なんて思ったり。この肯定は正しいのか?と自分で自分に思ってみたり。色々。

お読みいただく方は、そんなところも気にして読んでみたらどうでしょ、と。

では、また来月あたりに。たぶん今度は戦闘シーンのはず
 小人の家は小さかった。お茶も茶菓子も物足りない。
 黒は自前のひょうたんを飲み、小人たちを驚かせた。
 中身は無論燃料である。
「うぁ……」
 小人全員が苦い顔をして、中には気分の悪そうな顔をする者も。小人たちは招いてくれた自分たちの家だというのに、とても居心地が悪そうに、固くなっていた。
「不味くないんですか……それ……」
 金輪のフライは思わず敬語になっていた。彼女の目から黒という人物は、きっと恐ろしい獣のように見えるのだろう。
 黒の突撃は四段階存在する。四つまで扱うことのできるジェットエンジンを、装着すればするほど速く飛び、その速度はただひとつでも相当で、二つを喰らったフライは、異変の影響を受けて、能力を得ていたにも関わらず、相当苦しそうである。
「うーん不味い。もう一杯」
 といって、黒はひょうたんにさらに燃料をつめかえた。途端狭い家中に臭さが充満して、再び小人たちが、
「うぁ……」
 と漏らした。

「ところで、お前たちはなにが目的だったんだ。以前、白雪姫は死んだと耳にはしたが……」
 まなが口を開いた。まなの質問は、この空間の居心地を、さらに悪くする。
「白雪姫を殺したのは、林檎女王。それは間違いないんだな」
 ユースが追求した。そのユースの表情は、いつもとは違い、真剣なもので、小人たちを怯えさせるに十分の迫力を持っていた。
 黒はげっぷをした。
「くろ、汚い」
 サリアがツッコんだ。

 どう考えても異変の中心に近づいていた。彼女たちのこれほどの力。そして、一行が知っている、本当の白雪姫とのあまりの差異。本来、白雪姫にこのような登場人物は存在しない。
 一行の知る白雪姫といえば、鏡に写るこの世で最もきれいな女性、白雪姫を妬む王妃が、白雪姫に毒の林檎を食べさせる。白雪姫は永久の眠りについた筈であったが、眠った姫に王子がキスをすると、姫が目を覚ます、というもの。
 しかしどう考えたとしても、この小人たちはおかしい。能力を有し、人に害を及ぼす。小人は小人としてあるが、ただその役割を持っているだけで、本の内容を無視し、自分たちの意志で動いているようである。
「俺たちは白雪姫を護ろうとした。でも白雪姫は助からなかった。王妃の力は絶対的で俺たちでは太刀打ちできない。不服だが、王妃のもとで生きるしかなかったんだ」
 火輪がそう漏らした。
 ……あらすじはこうだ。
「林檎女王は、王妃だ」
「彼女が能力を有して、白雪姫を殺してしまった」
「毒林檎を喉に詰まらせて、呼吸困難になり、瀕死になっていた姫を此処で引き取ったのだが、王妃に見つけられてしまい、死んでしまった」
「王子の行方を見たものはいない。王子はもう恐らく、俺たちの目の見えるところにくることはない」
 林檎女王こと王妃は恐怖政治を行っていた。彼女の力さえあれば、軍も政治も必要ないらしく、王妃の統治するところに住む者たちは、ただ恐怖を感じ続ける毎日。
 そこを出ようとする者たちは、罠で囲ってしまっていた。女王の目はどこへ行っても逃れることができず、逃れようとすれば殺される。
「年貢とかは?」
「そういうのは特に求められない……、ただ」
「ただ?」
「捕まると、女王に喰われる。喰われて、見るも無惨な姿になって死ぬ」
 女王のカニバリズムが、どうやら最も恐れられているところらしかった。
 そもそも白雪姫本文で、王妃は塩茹でにして白雪姫の臓器を食べたがる、という描写がある。この現象は恐らく、王妃がそういった不気味な本能に目覚めたということなのだろう。あまりにも王妃は強くなりすぎてしまっている。だからなにをしても許される。なにをしても許されるから、どんなことでもしてしまう。少なくともこの王妃の考え方は、誰も得へと導かない。
「きも……」
 燃料を口から接種する黒がそう吐いた。ガソリンなどの燃料というのは元を取れば動物の死骸からつくられたものであるのだが、そんなことを理解している黒であっても、自分たちと同じ種族を食べる、ということには嫌悪感を抱かずにいられなかった。
 単純に、気持ちが悪い。
「王妃は、誰にも関心がないんだ。誰を助けたいだとか、誰を愛したいとかいう感情がもうない。完全にイカれてしまっている。しかも誰もそれに逆らうことができない。俺たちも、白雪姫も、王子も」
「チーユちゃん」
 黒が口を開いた。突然そういったので、黒以外の人物が全て口を閉じた。七人の小人たちに関していえば、そのあまりに出来すぎた間に、少し希望というか明るみというか、そういったものを感じさせられてしまう。はっとした小人たちが全員黒の方を向くと、とても真剣な顔をしていた。先ほどの燃料を飲み込んでいたときと比べ、その姿は随分と凛々しく、立派で、優秀そうであった。一方、黒以外の一行が思うのは、その希望を生む言い出しに関してよりも、七人の小人の名前を覚えていた黒に対する驚きであったかも知れない。
「ボクたちはこの世界の住人じゃない。それで、実は君たちも元の世界の姿じゃない。この世界の名前は白雪姫っていって、毒林檎を食べさせられた白雪姫が王子のキスで目を醒ますっていう話なんだ」
 小人たちが動揺した。
「それでボクたちはこの世界を元に戻す為に此処へきた。元々君たちの憎んでいる王妃は憎まれモンで、白雪姫に嫌がらせをする役目。君たちは本来、その白雪姫が毒林檎を飲み込んだ後それを引き取る役。君たちは白雪姫側なんだよ。いまのままじゃ役目が違う」
 小人は、なんのことだか判らないような顔をしていたが、それでもいいたいことは伝わっているらしかった。
「林檎女王は倒さなきゃいけない、それはボクらも同意するよ。ボクたちも林檎女王を倒さないといけない。君たちも林檎女王を倒さないといけない」

「だから協力して、絶対やっつけるから」
「……!」
 それをいう黒の表情は、いままでになく清々しくて、頼りがいがあった。小人たちはそれに驚いた。
 希望を持てる発言であった。自分たちが奇襲を仕掛けた相手が、共感し、味方してくれる。なんとも不躾というか、常識外れな話であるが、互いの利害は一致していた。小人たちは小人たちで、一行を襲わずにはいられない事情があったのだろう。
 一行は特に彼女たちに対して怒るつもりはなかった。事情を感情で怒るくらいに落ちぶれてはいないし、それに、彼女たちはもう十分制裁を受けたから。
「協力……します」
 小人たちはしばし間を空けてそう答えた。申し訳ない、だとか、信用できない、などの思いがあっただろうが、それは彼女たちのあまりに悲惨な事情で薄まった。この現状を脱したい。その思いが強くあったようだ。
 元々彼女たちは優しい。その優しさは白雪姫を助けるほどに。異変が起きてその姿が変わってしまったとしても、彼女たちの中にそれはまだ残っている。
 だが、黒にはなにか別の思惑があるようで、
「だから、これが終わったらボクもそのメンバーに入れて……」
 と、槍が突き刺さってもいい続けた。



「ぴゅーぴゅー血ぃ出たよ! ぴゅーぴゅー!」
「うるさい! お前は少し黙れ!」
 全力で怒られ、槍を刺された黒ではあるが、やたらと天然ぶり、それをまなは怒る。
「あの、黒さん。大丈夫なんですか……?」
 申し訳なさそうに小人が聞くが、頭から垂れる血が目に当たって、それどころではなさそうであった。
「それで、敵っていうのは一体どこにいるんだ? 林檎女王は?」
 ユースが仕切り、小人たちに訪ねた。
 答えるのは勇敢な赤色だった。
「林檎女王は、判らない。彼女の居場所を知ってるのは彼女の配下だけ」
「その配下ってのは? 体格とか、話が判るとか」
「……」
 赤のチーユは一旦口ごもり、あまり話したくなさそうにした。元々話したくない話をしているのだから、無理もないのだが。
「名前は、ミラージュ」
「ミラージュ?」
「そういう名前の女の子。性格は……林檎女王に忠実。林檎の配下はこの一人だけ。それでもこれがすごく強い」
「説得はできないのか? 弱みだとか」
「無理だね。あれはあれで林檎と同じくらいイカれてる。出会ったら最後。戦って勝つか、死ぬか」
「そいつ強いのか?」
「強いよ。女王の次に強い。殺すことを躊躇わない。っていうか寧ろ率先して殺しにくる。それでいて、なんの攻撃も利かない」
「なんの攻撃も利かない?」
 そうでもなかったら自分たちはとっくに反発している。彼女たちはこう訴える。
 一行の耳にミラージュという言葉が強く印象づいた。その不気味な能力は、小人をとても苦しめているらしい。彼女たちの反応は芳しくなかった。
「じゃあ、ミラージュを倒して、林檎女王の居場所を聞き出して林檎女王を倒せばいいんだな?」
「強いよ、それも恐ろしく強い。あなたたちでも、きっと誰か彼か死ぬ。全滅するっていう恐れも十分に考えられる。それでも?」
 この質問は今回の戦闘を行うことが、あまりに無謀だと訴えるようである。いままで誰が林檎女王・ミラージュに挑んで死んでいったか知らないからそのような軽率な口が叩けるのだ、と、口にしたくもないらしく。
「心配してそういってくれるのはありがたいけど、やるぞ。俺たちは。元よりその為にきたんだから」
 一行にはこれを果たす義務があった。この異変を解決しなければ、異変は本から飛び出し、図書館にまで及ぶ。自分たちが生きる為に、それを行う。まさしく相互の利害は一致している。
 戦うこと、それは一行に対しては色々と未知な部分が多い。今回は、戦った。なんなく倒すことができた。しかしいつも能力を駆使して勝ってきた訳ではないし、これからの戦いで勝てるという確証はない。強いか弱いか、というのは結果論にすぎなく、自分たちが強い、と謳えるほどに、一行に実戦経験はない。
 それでもユースが迷いもなく、戦う、というのは、自信があるからではなく、そうすることしかできないから。この世界を実際に救うことに導けるかどうかはともかく、そう導こう、と思うことができるのは最早一行しかいない。
 だから、一種のハッタリだった。戦う、とはいったものの勝つとは言い切れない。とはいえ、情報を得なければならないし、いずれ勝たなければならない。どれだけ血みどろの戦いを行うかどうか、覚悟していない訳ではないが、このユースの信念には大きなネガティブな要素も含まれていた。
「任せるよ。勝って貰いたいから」
「応」
 金輪が話を続けた。
「ミラージュは狂ってる」
 不吉な言葉だった。
「ミラージュっいうのは、ある日突然現れた女なんだけど、とにかく見境なく人間を襲うんだ。王妃直属の配下なんだけど、彼女以上の権限を持つ人でも、もう誰も彼女に顔が上がらない。やりたい放題で、あまりに不気味」
「どういう風に?」
「人間の首を落とし、身体を切り開く。臓器を取り出し、塩茹でにして王妃に渡す」
「うげぇ……」
 サリアが青い顔をした。
「あたいたち小人は、人間じゃないからそういった対象にはされなかったんだけど、ミラージュはもう誰でも彼でも襲って殺してる。あんな危ないのがここを仕切ってるなんて、酷過ぎる」
「化け物が仕切る化け物政治だな」
「そう。そして誰も勝てない」

 白雪姫は地獄だった。
「ミラージュはどこにいるんだ?」
「草原。もともとは森だったんだけど、木が枯れて草原になってしまった。あたいたちはもう危なくてあんなところに行きたくない」
「判った、悪かった。ありがとう」
 黒は茶菓子に燃料をかけて食べた。ひたすら美味そうな表情をするのだが、まなに殴られると白目を剥いた。

「ねぇ、ミラージュってさ」
 小人たちの家を出て、一向は話をしていた。サリアがいったその言葉、その内容を黒は理解していた。
「うん、たぶん鏡のことだよね。擬人化したってことなんかな」
「鏡? 鏡よ鏡よ鏡さんの鏡ってことか?」
 ユースがそういうが、黒は半分以上無視して、自分の話をした。
「元々王妃の持ち物だから、異変で人間の型を得たのかもしれない。王妃の唯一の味方、って立場にも頷ける」
 サリアが返す。
「どうしてミラージュは草原にいるんだと思う?」
「多分戦闘になにか有利な部分があるか、草原の近くに村があるから、そこで人を襲うからなんだと思う」
「ミラージュの能力って?」
「予言か、予測、かなぁ……なんて思ってるけど。持ち主の見たい光景を映し出す鏡だからね。でも多分外れてる。行ってみてから考えることにするよ」
「ミラージュになにか目的はあるんだろうか? 意志っていうか」
「林檎女王をもっと偉くしたいって思ってるとは思うけど、虎の威を刈る狐かっていったらそれも違うと思う。それならそんなに積極的に活動しないし。だからどっちかっていったら多分娯楽犯的。出会い頭にいきなり襲ってくるくらいの感じじゃないかな、躊躇いなしに」
「そっか、なるほど。二人はなんかある?」
 サリアが突然矛先をユースとまなの方に向けたので、
「い、いやぜんぜん……」
「つづけてくれ……」
 と、苦しそうに二人はいった。
「なぁまな、黒って一体どういう扱いをするのが正解なんだ……? ついていけない」
「同感。変態だからあんなに言葉巧みなのかな……」
 変態、というのは黒に対していえば不思議に喜ばれるバッドワードであるが、彼女が言葉巧みにあれほど喋ることが出来るのは、決して変態だからではなく、人がなにを考えているかについて分析すること長けるからである。おおよそ会話の初めを聞けばどのような会話が行われるかが理解出来るという彼女は、つまり相手がなにをいってほしいかを理解出来る。彼女の生き方に対しては賛否両論が存するが、其れは人が決めることであって、彼女の求めるものは、彼女自信にしか追求出来ない。

 彼女は、本を書きたいと思っていた。
 図書館にいる、という役柄上、本に対しての思いは強い。世界を生み出すことの出来るくらいの、その強大な情報の塊は、彼女の、書いてみたいという気持ちをくすぶっていた。作家になりたい、などという気持ちではないが、自分が面白い、と思うことができる本をつくることが、彼女にとっての夢である。
 小説か、自伝か、はたまた絵本か新聞か写真集か、なにひとつ決めてはいないが、本を書きたいという気持ちだけはあって、それに対する彼女なりの方法は、インプットを増やすことだと思っている。
 生活の上で様々な体験をし、考えを豊かにし、自分の表現したい世界を広める。彼女の理想はとても高く、だからこそいつまで経っても筆を動かせないのであるが、それでもいつかはそれをするのを夢見ている。
 筆を動かしても、すぐに置いてしまう。いまのところではその程度のものであっても、いずれは必ず、それを書ききれると信じていた。
 ひとつの夢、これは彼女のひとつの夢だが、強く頭の中にある思いから成るものであるのだ。
「そういえば黒、プラーに能力が登録されてるよ」
「そうなの? まぁ、しばらくは保留にしておく」
 サリアは発見したらしく、黒にいうも、黒があまり興味を示さないのでサリアはひとりその器具を弄くり回した。
 とはいえ、折角主張をしてくれたので、なにか返さなければ可哀想と思った黒は、
「サリア」
「ん、なに?」
「ボクって子供っぽいと思われてんのかな?」
 素朴な疑問を思ったので、サリアに尋ねた。
 するとサリアは、
「くろは……そうだな、皮肉っぽい」
「うん」
「で、意地悪」
「それは判ってるよ、ただボクって子供っぽい部類? それとも大人っぽい部類?」
「どっこいどっこい」
「わ、その言葉サリアっぽくない」
 一行は草原へ向かった。