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『しのゼミ』

日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

「得意の時候は,最も当に退歩の工夫を著くべし.一時一事も亦皆亢龍有り」

『思いがかなった時こそ,一歩さがる工夫をすべきである.時間的にも,事柄的にも,昇りつめた龍,つまり,尊貴を極めたものは,退歩を考えておかないと必ず敗滅の悔があるものである.』

(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)






<しの訳>

得意時に一歩下がると,

他者からの攻撃の標的になりにくくなり,

自分のモチベーションが持続できるなどの

メリットがある.

政治の世界で権力中枢に長く居たければ,

「キングメーカー」になるのがよいとされるが,

これなんかも,

あえて一歩下がってトップに昇らないという,

処世術というか渡世の知恵なのかもしれない.

浮かれて天狗になってしまいがちな得意時だが,

そんな適った思いを(部分的に)あえて享受しないという,

選択肢もあることを知っておこう.



思いがかなってそれを享受したとすると,

今度は引き際のタイミングが難しい.

スポーツ選手の例がわかりやすいかもしれない.

手にした栄光が踏みにじられる形になってもそこにしがみつくか.

下り坂になる前にあるいはなってから適当なタイミングでもって退場するか.

Qちゃんはどうするんだろう・・・?

そんな余計なことを考えてしまう.

まぁ一庶民にはわからんが,

要は自分の価値観ちゅうか人生観や美学で決めざるをえないっちゅうことなんだろう.



失敗しても成功しても人生は難しい・・・・・.
今年度の研究班の分担研究申請書を再提出してくれとの依頼がきた.

どうも研究費が減額されてようで,その研究費額にあわせて申請しなおしてくれ・・・というもの.

3月の年度末にしたことの繰り返しだが,致しかたあるまい.



さてこの書類のいくつかには,公印が必要となってくる.

自分の場合は,所属機関の長である西日本大病院長の印鑑になる.

ちょっと大きめで四角くって「〇〇病院長之印」などというアレ.

印鑑なんてポンっと押せば済む・・・っと考えたくなるが,

どうやらそんな甘いもんではないらしい.

ひょっとして公印は重さ10kg程度あって3人がかりじゃないと持てないかもしれず,

朱肉も中国奥地の龍から絞り出した血の最後の10滴しか使っていない・・・というようなあり得ない程の高級なものを使っているかもしれず,

要するに実際は複数チェックのステップを踏むために結構時間がかかるワケであって,

ポンっに至るまでには様々な攻防が繰り広げられる.



今回のケースは・・・・・

第一回攻防)

どうせ再提出になるんだから・・・ええいこんなくらいでどやっ・・・的に提出した書類

結構善戦

一部に消し忘れの鉛筆の説明書きや,日付の間違いを指摘され

善戦むなしく差し戻し



第二回攻防)

指摘された説明書きを消して

日付については,この日付にしてくれという先方からの指定があったので(説明したうえで)そのまま提出

字体の不揃いと,不適切な改行を指摘(一回目に言ってくれや~)

意外に早く棄却命令



第三回攻防)

字体と改行を訂正して,満を持して提出

日付が気に入らないようで難航(この場合は日付が数日ずれたところでどうでもええんちゃう?)

日付に矛盾しない時までわざわざ待って,ようやく公印をゲット!

・・・という4日間にわたるバトルであった.



こんな攻防を決して望んでいるわけではないが,

なるべく事務的手間に時間をかけたくない自分の思惑と,

たとえ事務処理でも手抜きなどもってのほかという事務側の意図が,

ぶつかりあって双方譲らず,

けんか四つとなって膠着する.

こんな消耗戦は実に無益で不毛に見えるが,

結果的にはかっちりした書類ができるというメリットもある.

それにこんな攻防はお互い慣れっこで,

しょうがね~な~程度にしか思っていない(少なくとも自分はそう).



結局は,

この件で一番の被害を蒙ったのは,

何回もシノ側と事務側を往復し,

忠実に伝令役を果たしてくれた秘書さん.

その秘書さんが,

「次回は書類の準備は私にやらせてください」

と申し出てくれた.

なんともありがたいお言葉・・・と最初は思えたが,

よ~~く考えると,

「こんなんにつきあっとれんわ」とか,

「いい加減にしてや」というような,

三行半的な申し出にも聞こえる.

いやたぶんきっとそうかもそうでないはずがないそうにきまってる.

逃げられんように気をつけよう・・・.
次女のピッカピカの小学一年みーちゃんが髪を切った.

伸びたら切るのは当たり前だが,どうやらハサミを持ちだして自分で切ったらしい.

別室でひとり静かにしてるなぁ・・・と思ってたら,

なんかゴソゴソやってるなぁ・・・と思ってたら,

前髪が不自然に短くなっている.

その不自然さがすぐ母に気づかれて,問い詰められる.

「あれっ?・・・・・みーちゃん,あんた髪切ったでしょ?」

「・・・・・・・・」

「自分で切ったでしょ?」

「・・・・・・・・」

「こらっ・・・言いなさい!」

「・・・・・・・・」

「なんでそんなことするの?あんたはほんまにもう・・・」

母がキレて家族全員集合する.

「・・・なんやなんや」「・・・みー,なにしたの?」「・・・ハハハハ,みーアホや」・・・・・

皆が好き勝手な詮索と感想を述べる輪のまん真ん中で,

みーちゃんは小さくなっている.



みーちゃんの髪は肩にかかるほどの長さで,

いつもは後ろで束ねている.

束ね役は母の仕事.

ヘタにハサミを入れたがために,

不揃いになった髪を束ねねばならず,

母の仕事は増える.

その他に父にはわからぬいろんな理由もあって,

とにかく勝手に切ってはならぬようだ.



でも,

そのチャレンジ精神や良し!,

結果を考えずにとにかく挑戦してみろ!,

そんなことを日頃考える父には,

興味のあることはなんでもやってしまうみーちゃんに,

とても共感を覚える.

それに,

していることに理由はなく,

理由はないけどやってしまって,

あたかも無為に時間を浪費するように見える子供の行為は,

それがまったくの自然であって,

それに意味や理由を求めるのは,

大人の狭い了見に過ぎぬ.

「そのまんまでもええんちゃう?」

理由は知らんが切ってしまったもんはしょうがない・・・・・

不揃いのまんまが見慣れてきて自然になってくるもんだ・・・・・

しかしそんな生活感に根ざさぬ無責任な父の意見は無視されて,

不自然に切られた右側の髪にそろえる形で,

前髪は左側までバッサリ切られ,

長さが整えられた.



これで一件落着だが,

なんで髪を切ったのか?・・・はわからず仕舞い.

その後は1時間ほど落ち込んで静かにしていたみーちゃんが,

重い口を開いて教えてくれたのが,

「・・・・・・だって・・・・・・ピンで止めたかった・・・・・・」

であった.

どうやらおそらくたぶん,

片一方の髪だけピンで止めている,

だれかのマネをしたかったんだろう・・・

「自分を飾る」意識の芽生える年頃.
「凡そ遭う所の患難変故,屈辱讒謗,払逆の事は,皆天の吾才を老せしむる所以にして砥礪切磋の地に非ざるは莫し.君子は当に之に処する所以を慮るべし.徒らに之を免れんと欲するは不可なり.」

『我々が出会うところの,苦しみ悩み,変わった出来事,恥かしめをうけること,人から悪くいわれること,心に困ったと思うこと.これらのことは皆,天の神が自分の才能を老熟させようとするもので,いずれも我が修徳勉励の資でないものはない.だから,君子は,このようなことに出会ったならば,これをどう処理するかに工夫をこらすべきもので,これから逃げようとすることはいけないことだ.』

(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)






<しの訳>

人生におけるすべての事.

いいこともいやなこともひっくるめてすべてによって,

自分が試されている.

いいことで浮かれてしまっていないか.

いやなことが重なって他事までが疎かになっていないか.

これらすべてが自分に対する挑戦である.

すべては自分磨きのため.

そう思ったら,

もう少しがんばっていける.
大学病院の近くにスーパーマーケットがある.

帰宅途中に塾帰りの長男いっ君を拾う手筈になっていたが,

それまでにまだ30分ほど時間に余裕があり,

それに「ビールないよ」とのめちゃめちゃ素っ気ないメールが妻からあって,

どうも晩酌用のビールがなくなったので買ってこいという指示らしく,

せめて「ビールないよ」のあとに「。(まる)」くらい入力しろっ・・・とムッとするが,

自分の嗜好品なので無視するわけにはいかず,

ついでというかちょうど都合がいいので,

このスーパーマーケットに寄ることにした.



この際,ビール6缶入り1パック調達などというみみっちいことはせず,

ここはど~~んとビール一箱,いや二箱といってみるか・・・

・・・そんな大きな気持ちで寄ったスーパーマーケットであるが・・・・・・



入った途端,普通のスーパーマーケットとは少し違うものを感じる.

客層が若いな~って感じ.

大学近くなので,そこ関係のヒトが主な客層となっており,学生や留学生が目につくような・・・そんなキャンパス的な店の雰囲気である.



さ~てビールちゃんはどこにあるかなっと.

店内をうろうろ探していると・・・

「こんばんは,シノ先生」

「お~,〇〇さんじゃない」

「お買い物ですか?」

「まあね・・・」

「それじゃあ失礼します」

「じゃあな・・・」

偶然遭遇した5年生の女学生.

いちおう自分は教官の端くれだし,

学生の情報網はけっこう恐るべしなので,

ヘタなところは見せられん.



うまく女学生をかわして,ビール・コーナーにありつく.

人目もあるし・・・,とりあえず一箱にしておくか・・・・・

すると・・・

「あの・・・・・先生,こんにちは」

「・・・あれっ?今日ポリクリで病理に来てくれた学生さん?」

「ハイ・・・・・お買い物ですか?」

「まあね・・・」

「そうですか・・・」

「ほんじゃあ・・・」

ふう~,あぶね~・・・

もう少しタイミングがずれてたら,ビール24缶入りの箱を担ぐところをこの学生に見られたかもしれん・・・・・

ヘタに買い物も出来んな・・・・・

しょうがない,6缶入りの1パックにするか・・・・・



人目を気にしつつビール1パックを調達してレジに並び,

自分が並んだレジ係をよ~く見ると,

なっなっなんと,

これもやはり知っている学生ではないか.

・・・ツイテない・・・今日はあきらめるか・・・



少し「プチ有名人」的な雰囲気を味わえるスーパーマーケットだが,

なんか監視されてるようで,落ち着いてビールも買えん・・・

しょうがなくビールを返しに行き,

何も買わないのも変に思って,

当たり障りなく「ポッキー」を買ってみた.

昔っからポッキーは大好きで,

チョコを全部舐め取ってプリッツ状にしてよく食べてたっけ・・・

帰る道すがら,人目を気にせずに久しぶりにポッキーを舐めまくって食べた.