『しのゼミ』 -26ページ目

『しのゼミ』

日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

「手動弁」

被験者の眼前における(観察者の)手の動きがようやく弁別できる程度で,かなり視力低下を来した状態を言う。

視力検査における視力の良し悪しの表記法の一つ。

英語ではHand movement。

通常は0.1とか1.5であるとか,数字で表現される私たちの視力。

これは5メートル離れた地点で,ランドルト環と呼ばれるC文字の切れ目を弁別する方法が一般的だ。

最もでかいランドルト環(0.1に相当)が見えない場合は,距離を近づけていって弁別できた地点で表現する(例えば2メートルまで近付いた場合は0.1x2/5=0.04とか)。

もっと悪化すると,観察者の指の本数が確認できた距離をもって表現する「指数弁」(50㎝/指数弁などと表記),さらには前述の「手動弁」となり,ついには眼前の光がようやく弁別できる状態である「光覚弁」,そして「盲」へと悪化していく。

ちなみにこの「手動」の「弁」とは,ネーミングが奇異だ。

聞いた誰もが,手で動かすバルブのこと(自動弁の反対)かと思うだろう。



▼ 自分の視力は0.7(但し眼鏡矯正下)程度です・・・

夏休みのショッピングモールは相変わらずの混みよう。

久し振りにシノ妻と二人で買い物に出かけると,そこは雨模様に行き場を失った若人ら・家族連れ・カップルなどでごった返している。

主目的である自分の買い物を先に終えて,仕事着を買いたいというシノ妻にしばらくつき合う。

と言っても,婦人服売り場前に空いている椅子にかけながら,心中「早く終わらんかなぁ」と思いつつぼんやりと待っているだけだ。

気の向くままに店内を行ったり来たりするシノ妻には,こちらへの気遣いは微塵もない。

なので,当然の帰結としてしばらくするとその姿を見失うことになる。

嬉々としてあちこち飛び回るモノを,常に視界の内に捕らえておくことは難しい。

まるで人気のないキッチン内に忙しげに飛びまわる,一匹のハエを追い続けるようなモノか。

見失ったのは視力の問題ではなく,むしろ集中力とか関心といった気持ちの問題だ。

「どこ行ったんや・・・まったくもー・・・」

しょうがないのでヒトの流れに抗って,そのまっただ中で背伸びをしながら四方八方あちこちその姿を探していると・・・



▼ 視力低下中?

こちらに向って流れてくる人混みの中に,とある一人の顔が目にとまる。

それはよく知った女性。

いつも見る姿形とは,髪型と服装がちょっと違っている。

しかし間違いない!

それは,ウチの職場の秘書さんだ。

実は,自分が彼女の姿に気付いた時には,すでに彼女の方では自分に気付いていたのかもしれない。

考えてみれば,人の流れに抗って立ちつくし,背伸びするオッサン=自分。

そんな自然の理を乱す者が前方にいて,気付かない方がおかしい。

そう思えば,自分が彼女に気付くほんの一瞬まえに,彼女が自分から急いで視線をそらしたような・・・・・なんとなくそんな気がしてくる。

しかし実際には,そんな気がしただけの上の空の話で,全くの気のせいかもしれん。

そもそも自分としては,職場の上下関係をプライベートにまで持ち込むのは好きではない。

もっと正確に言えば,病理部内のヒトに限っては,自分は少し距離を置いたつき合いをしているようだ。

なのでこんな場合に「お~,○○ちゃん」と気軽に声をかけるよりは,どちらかといえば見て見ぬふりをするコトが多い。

彼女の方もそういったフシがあり,たとえ気付いたとしても素知らぬフリをしたのか,あるいは本当に全く気付いてなかったのか・・・・・



▼ 手動弁まで低下中・・・

次の瞬間に・・・である。

そんな彼女がまるで視えないように,自分はすぐに彼女から視線をそらした。

「視ちゃいかん!」と命令されて,「ハイ!」と素直に目を閉じる幼子のように。

なぜかというと,その彼女の隣には見慣れない男性がいたから。

腕を組むでもない二人の間は,ちょうど20㎝ほど空いている。

ひょっとして親戚?かもと思うが,親しげにしゃべる姿や付かず離れずの微妙な距離感からすると,デート中というか婚活中?に違いない。

そりゃあ30過ぎ独身ともなれば,誰しもそれなりに活動するもんだ。

そうして彼女らはヒトの流れに乗ったまま,自分から2メートル程の至近距離にまで近づいたと思うと,流れのままに遠ざかっていく。

第一種でも第三・四種でもない,第二種的な接近遭遇。

そんな至近距離で視たにも拘らず,「視るな!」という心の声に忠実だったが故,二人の姿はぼんやりと断片的にしか思い出せない。

手動弁程度の視力に低下?していたのかもしれんが,少なくともこの相手男性は,外見上モヒカン風ぶっ飛びヘアーだったり,鎖ジャリジャリなヘビメタ的装飾を身にまとうような,一見するとアウトロー的風貌ではなかったことは確認できた。

ヨレヨレに見えるがきちんとジャケットを身につけた,到って地味ーヘンドリックスな堅気クンであったことが,心温まるというか救いだった ゚゚゚゚゚-y(^。^)。o0○ (やさしく遠い目のつもり)



▼ そして視力回復へ・・・

次の日。

秘書さんは何もなかったように「おはようございます」と挨拶してくれ,何もなかったように黙々と事務処理を手伝ってくれる。

しかし,それ以上の会話は特に無し。

「・・・昨日さぁ,逢ったやん?」

こんな話をして欲しいのか,触れられたくないのか?

う~ん,よくわからんが,触れん方がええやろな・・・・・




▼ 中学校見学会にて

長男いっ君の属する吹奏楽部が,クラブ紹介がてら見学会に於いて演奏する。

これがいっ君の初舞台。

入部して2か月足らずだが,果してその実力は・・・?と,シノ家総出で見学に行く。

席取りを命じられた自分は,演奏開始1時間前に会場である体育館に出向く。

体育館にはすでに数十列にわたって聴衆用の椅子がきれいに並べられており,それに対峙して演奏者が座る数十の椅子が扇形に配置されている。

さすがに1時間前だと,先着は小さな子供が二人ほどのみ。

閑散とした会場の最前列にとりあえず席を取って,やれやれと思っていると・・・・・

一緒にいたはずの次女みーが,遠くから「おとーさ~ん」と小声で呼んでいる。

みーは,先ほど自分が横切ってきた,ちょうど指揮者が位置するであろう辺りにいる。

そこから「おーとーさ~~~ん」と囀っている。



▼ なにかと思えば・・・

みーが指さすあたりを見ると,そこにう〇ちがある。

微量だけれども,確かに黄褐色+特有の臭い=ヒト排泄物。

「あれ~?う〇ちやん・・・何これ?」

「おとーさん,さっきここ通ったとき,う○ち踏んでたで」

「え~?うっそー」

急いでスリッパの裏を確認するが,すでにその形跡はない。

「ねぇ,おとーさん,これってさぁ,あの子達の・・・」

・・・みーの説明によると,どうやら先客だった小さな子たちのうちの一人(推定3~4歳)が漏らしていったものらしい。

体育館の外へ様子を見に行くと,かわいそうな兄弟が人目につかないようにして,ティッシュで汚れを落としている。

「どうしたの?」とその兄弟に声をかけると,みーの説明通り。

保護者は見学会でどこへやら行ってしまうし,着替えなど持っていないし・・・・・

自分もティッシュの持ち合わせは無く,トイレは近くになさそうだ。

このままにしておけず,学校関係者に助けを求めると,適切な対応によって兄弟は保健室へ保護され,指揮台付近の汚物はきれいに掃除された。



▼ さだまさし氏によれば・・・

血液型によって,お金が落ちていた場合の対処法が変わるとか。

A型・・・誰も見てなければポケットに,誰か見てたら交番へ

B型・・・落ちてる金は自分のモノ

AB型・・・落ちてた金を交番に届けに行く途中で気が変わる!?

O型・・・落ちてる金に気がつかない


これを基に,「落ちてるう〇ち対処法」を推定すると・・・

A型・・・黙って物陰から観察し,誰かがう〇ちを踏んだらすかさず指摘する

B型・・・落ちてるう〇ちを避けるように交通整理をしだす

AB型・・・なんとか処理しようとトイレを探すが,面倒になってやっぱや~めたとなる

O型・・・気がつかず,落ちてるう〇ちを踏む


確かにO型の自分って・・・な―――――――んも考えてへんねん!(そこがええねん)。

ちなみに,みーは当然のごとくA型,メッチャ目敏いねん。



しばらく更新しなかったが,相変わらずの検鏡三昧な日々。

特に何も変わらぬが・・・といきたいところだが,今日は誤診を二件やらかした。



▼ 誤診その1

症例は某外科の悪性腫瘍。

比較的早期のガンなんだが,組織型の分類に迷う。

Aという診断名にしようか,それともそれに似るBにしようか・・・と迷った結果,Bにする。

しかし,部内カンファにてみんなに診てもらったところ,どうも反応がよくない。

「・・・難しいなぁ・・・・・っで,シノ先生の結論は?」

「いちおうBとしましたが」

「Bですか・・・・・HE染色ではAっぽくみえますね」

「でも特殊染色を追加すると,Bのパターンなんです」

「この本には,染色パターンが〇△×ならばAって書いてありますよ」

「う~~ん,それは読んだんですけど・・・もう少し検討してみます」

どうやら,自分の結論であるBよりも,Aを推すヒトが多いようだ。

冷静になってみると,特殊染色の結果を重視し過ぎていたようにも思える。

なので,Bという診断名に結論づけるには根拠がやや乏しく,少し強引に映ってしまうらしい。

やっぱ,みんなの言うようにAなんかもしれん・・・・・



▼ 誤診その2

とある珍しい症例について,教育的なので今度の研究会で発表したいと,某外科先生が訪ねて来た。

やはり悪性腫瘍で,Cという変化にも見えるが,診断名としては迷った挙句Dとする。

そんな迷った経緯を知る某外科先生。

発表するからには,診断がしっかりしていてブレないかを,もう一度確認しに来たようだ。

「診断名をDとして発表しようと思いますが・・・」と某外科先生。

「じゃあ一緒に検鏡してみましょうか」と誘ったのはいいが,以前に診断したモノを再びみるとまた違ったようにみえるから不思議だ。

人間だからそんなことは当たり前と言えば身も蓋もなく,ブレがあるようじゃ半人前と卑下するにはちょっと酷だし,それが成長の証と言ってはお気楽過ぎだし・・・・・

とにかく,Dと診断したはずなんだが,今日の自分には正直Cにみえる。

「う~~ん,もうちょっと検討させてください」と言って,某外科先生にはお引き取り願う。

それからあれこれ文献を調べてみる。

すると,前回に調べた時とは違う知見があれこれ出てきたりして。

もう一度頭を冷やして検鏡してみる。

すると,もうCにみえる自分を止められず,C以外は考えられなくなる。

何でDやねん,C以外の何物でも無いやん・・・・・



▼ ということで沈んでます・・・

できれば避けたい誤診が二件も判明し,その担当医に釈明のためすぐに電話する。

「・・・っというワケで,診断訂正させてもらいたいんですが・・・」

「わかりました,とくに問題はないと思います」

こちらとしては,治療変更に及ぶような結果を避けたいワケだが,それには及ばずとの返事をもらって,一息つく。

誰に迷惑をかけたワケでもなく,誰に責められたワケでもない。

しかしこんなことが二件もあると,精神的に参る。

こんな日は,いつもは厳しく接する後輩のアミ先生や,ぞんざいに扱う飼い犬に対して,妙にやさしくなる。



出張列車の旅は楽しい。

閉じられ拘束された空間だけれども,比較的自由に過ごすことができるのがいい。

しかし,今回のように特急列車でエライ目にあうこともあるワケで・・・・・



▼ 往路では・・・

指定席について,本でも読むかとシートを少し倒そうとする。

リクライニングのボタンを押すと,なぜか手ごたえがない。

どうやらボタンがバカになっている。

シートは倒そうと思えば倒れるが,それが固定されない状態だ。

ならばと空いている二人掛けシートの隣に移動するが,ご丁寧に隣席も同様の症状になっている。

なんでよりによって,両方とも壊れているワケ???

イタズラだとすると,あまり性質はよくない。



喫緊の問題は,リクライニングをどの角度に保つか・・・だ。

背にもたれかかるとどこまでも倒れてしまう。

ならば,最も倒した状態にしとこか・・・と思う。

でも,それでは「睡眠体勢」になってしまい,本を読むにもモノを書くにもやりにくい。

加えて,後ろの席のヒトの前方空間を無意味に侵しているようでなんだか申し訳ない。

自分としては,なんちゅーか,ちょうどいい角度に無理やりにでも固定させたいと思う。

そうするために,自分に「痛み」が求められても,少々ならば我慢しよう。

押しっぱなし状態になっているリクライニングやけど,そんなに大きな問題やあらへんで。

ちょっと腹筋に力を入れるだけで,ほら・・・ちょうどいい角度!

ぜんぜん問題無しやん!

・・・そんなふうに,「さもちょうどいい角度にリクライニングしましたよ」的な状態をがんばってキープしてみる。

しかし,腹筋がつらくて数分でギブアップ。

しょうがない・・・・・・・

出張先まで背もたれ無しの,ロダンの「考える人スタイル」で過ごす。

おかげでうつらうつらすることもなく,車中での読書&仕事がはかどる。



▼ 復路でも・・・

今度の席は,リクライニングは大丈夫。

一安心して,本でも読むかとカバンの中をゴソゴソしていると・・・・・

なんか臭う!

これは・・・いわゆる腋臭。

これって,自分じゃないよなぁ。

でも,意外と自分の臭いって気付かないもんやしなぁ。

っとあれこれ思っていたら,犯人が見つかる。

ちょうど前の席に座るおっさん=「臭源」。



くたびれた背広を窓側のフックに掛けているおっさんも,おそらくは出張の帰りなんだろう。

ほんの少しの空気の流れの変化とともに,そのおっさんから腋臭+ノネナールの香りが漂ってくる。

おっさんと自分との間の距離は,およそ70センチほど。

その距離が恨めしく思えるほどに,臭いは強烈だ。

ん~,耐えられん。

読んでいた本で鼻を塞ぐ。

が,このような姑息な手段では,完全に匂いの侵入を防ぐことは難しい。

自分としては,なんちゅーか,謂われなき「嫌がらせ」を受けても,少々ならば我慢しよう。

しかしこの強烈な臭い・・・・・だんだん腹がたってくる。

すると,今度は背広から扇子を取り出したおっさん。

時節柄,涼風を欲する気持ちはよ~~くわかる。

っが,扇子であおぐことによって空気の移動が起こり,その移動ベクトルとしては真後ろに着席せる自分の方向を向くことになる。

その空気の移動と共に,気化せる「臭源」物質も移動することになるという極めて自明の理に,このおっさんは気付いているのかどうか。

そんな自分の科学的分析などお構いなく,おもむろに開いた扇子をパタパタッとあおぎだしたおっさん。

やっ・・・やめんかい,コラーッ(心の叫び)

とっさの判断で,ハンカチで自分の鼻と口を防御する。

すると,その「ハンカチフィルター」が意外に効果あることに気付く。

ひょっとして,新型インフル対策にもなったかもしれん・・・・・




「ドライタップ」

骨の中にある骨髄を穿刺をして,骨髄液を吸引しようとしても引けない(=採取できない)こと。

白血病などで細胞成分が多すぎたり,線維症における線維が邪魔したりするのが原因。

ドライタップの場合は骨髄液を検査できないので,別の検査法(たとえば骨髄生検など)が選択される。



▼ 血内とは・・・

血液内科のことで,貧血やら白血病やらが主な対戦相手となる医師たち。

このヒト達と自分とは,普段はそれほど接点はない。

何故かと言えば,こういった血液疾患の診断において「血液塗沫標本」が威力を発揮するから。

この塗沫標本は,病理標本のような七面倒くさい過程を経ず,比較的簡単にできる。

ので,血内の医師自身などが塗沫標本を読んだりして,診断治療にあたることが多い。

要は,自分たち病理を経ずに医療を行う機会が多いヒト達とも言えるか。

加えて,リンパ腫などの血球系の病理は得意ではない・・・ってか,はっきり言って苦手な自分。

こんなことを言うと叱られるが,苦手も苦手。

それを自覚し克服しようとするなら救いもあろう。

が,自分の場合は周り憚らずにそれを公言している。

さらにそれを標準化・正当化しようと目論んでいるのかも・・・

っということで,あまりおつきあいはないハズなんだが。



▼ とある依頼

そんな自分に,血内の先生から電話がある。

なんだろうと思えば,先日提出の骨髄生検を一緒に検鏡して欲しいとのこと。

聞けば,診断にメッチャ困っている,とある基礎疾患を持つ患者さんがいるそうだ。

その患者さん,貧血が急速に進み,血液の中にヘンな細胞が出始めている様子。

その原因検索のため,まずは骨髄穿刺を試みる。

しかし「ドライタップ」。

なので,次なる手段として骨髄生検をしたらしい。

骨髄生検の病理診断が最後の頼みの綱,なんとか診断をつけてくれ~~という状況だ。

「・・・っということで,出来れば今日中に一緒に検鏡して意見をして頂けたらと・・・」と必死な血内医師クン。

「いいっすけど・・・あらかじめ言っときますけど,血球系は苦手なんで力になれるかどうか・・・」とはっきり伝える自分。

血球系に関しては,自分は完全に「ドライタップ」。

何を聞かれようが,自分からは何も「引けてこない」かもしれん。



▼ 分からんっちゅーねん・・・

みなで骨髄生検材料を検鏡するが,分からんもんは分からん。

ちなみに血内の助教先生は線維症を考えており,医員の先生は白血病を疑い,自分はと言えば分からんけどどっちでもないという意見。

烏合の衆から文殊の知恵は生まれない・・・か。

早々と検鏡はやめにして,彼らの持参する参考論文にパラパラと目を通す自分。

すると,一つの論文に目が止まる。

それには,いままさに目にしている骨髄像とそっくりな写真が載せてある。

「あれ~?似てるなぁ・・・」と自分。

「ほんまっすねぇ・・・これやろか?あんまりよく知らん疾患やけど」

「フムフム・・・僕も(この疾患の)経験無いけど,確かに似てるなぁ」

「これっぽいんちゃう?」

・・・

すがる者にワラが見つかる。

結局,この何とかという難しめの疾患を疑って精査を進めていく方針になる。

何もできなかったが,役に立ったかもしれん自分。

「ドライタップ」ならば,早めに見切りをつけるのも一考か。