「ドライタップ」
骨の中にある骨髄を穿刺をして,骨髄液を吸引しようとしても引けない(=採取できない)こと。
白血病などで細胞成分が多すぎたり,線維症における線維が邪魔したりするのが原因。
ドライタップの場合は骨髄液を検査できないので,別の検査法(たとえば骨髄生検など)が選択される。
▼ 血内とは・・・
血液内科のことで,貧血やら白血病やらが主な対戦相手となる医師たち。
このヒト達と自分とは,普段はそれほど接点はない。
何故かと言えば,こういった血液疾患の診断において「血液塗沫標本」が威力を発揮するから。
この塗沫標本は,病理標本のような七面倒くさい過程を経ず,比較的簡単にできる。
ので,血内の医師自身などが塗沫標本を読んだりして,診断治療にあたることが多い。
要は,自分たち病理を経ずに医療を行う機会が多いヒト達とも言えるか。
加えて,リンパ腫などの血球系の病理は得意ではない・・・ってか,はっきり言って苦手な自分。
こんなことを言うと叱られるが,苦手も苦手。
それを自覚し克服しようとするなら救いもあろう。
が,自分の場合は周り憚らずにそれを公言している。
さらにそれを標準化・正当化しようと目論んでいるのかも・・・
っということで,あまりおつきあいはないハズなんだが。
▼ とある依頼
そんな自分に,血内の先生から電話がある。
なんだろうと思えば,先日提出の骨髄生検を一緒に検鏡して欲しいとのこと。
聞けば,診断にメッチャ困っている,とある基礎疾患を持つ患者さんがいるそうだ。
その患者さん,貧血が急速に進み,血液の中にヘンな細胞が出始めている様子。
その原因検索のため,まずは骨髄穿刺を試みる。
しかし「ドライタップ」。
なので,次なる手段として骨髄生検をしたらしい。
骨髄生検の病理診断が最後の頼みの綱,なんとか診断をつけてくれ~~という状況だ。
「・・・っということで,出来れば今日中に一緒に検鏡して意見をして頂けたらと・・・」と必死な血内医師クン。
「いいっすけど・・・あらかじめ言っときますけど,血球系は苦手なんで力になれるかどうか・・・」とはっきり伝える自分。
血球系に関しては,自分は完全に「ドライタップ」。
何を聞かれようが,自分からは何も「引けてこない」かもしれん。
▼ 分からんっちゅーねん・・・
みなで骨髄生検材料を検鏡するが,分からんもんは分からん。
ちなみに血内の助教先生は線維症を考えており,医員の先生は白血病を疑い,自分はと言えば分からんけどどっちでもないという意見。
烏合の衆から文殊の知恵は生まれない・・・か。
早々と検鏡はやめにして,彼らの持参する参考論文にパラパラと目を通す自分。
すると,一つの論文に目が止まる。
それには,いままさに目にしている骨髄像とそっくりな写真が載せてある。
「あれ~?似てるなぁ・・・」と自分。
「ほんまっすねぇ・・・これやろか?あんまりよく知らん疾患やけど」
「フムフム・・・僕も(この疾患の)経験無いけど,確かに似てるなぁ」
「これっぽいんちゃう?」
・・・
すがる者にワラが見つかる。
結局,この何とかという難しめの疾患を疑って精査を進めていく方針になる。
何もできなかったが,役に立ったかもしれん自分。
「ドライタップ」ならば,早めに見切りをつけるのも一考か。