『しのゼミ』 -25ページ目

『しのゼミ』

日常で出会った「気付き・笑い・学び」を綴っています

▼ トラブル発生!

「ちょっと,シノ先生,いいですか」

有無を言わせぬ感じで秘書さんが自分の部屋にやってきた。

硬質な声に思わず顔を上げると,いつも涼しげな彼女の瞳が,なんだか今日はクリッとしている。

無表情な顔つきといつもより遠くに感じる距離感が,「私,怒ってます!」と告げている。

何があったのだろう・・・・・



▼ 一致しないベクトル

主任さんから,とあるペーパーワークを頼まれた秘書さん。

病理部における業務安全マニュアルのようなものの叩き台を作ってくれとのこと。

なんか七面倒くさそう・・・と戸惑っていると,

「隣の検査部のものを参考にして,アンケートでみんなの意見を聞いてみて」と指示がある。

手渡された検査部のマニュアルをとりあえず写し始めるも,検査部と病理部では仕事内容をはじめいろんな違いがある。

そこらを訂正しながらタイピングしつつ,アンケートによる意見吸い上げが必要な部分を抜き出している。

このように書いてみれば簡単そうだが,やってみると難儀な仕事。

ああでもないこうでもないと思案する秘書さん。

すると,それを見かねたGクンが,

「それは主任さんの仕事やから・・・そこまでやらんでもええんちゃう?」

と意見する。

「でも,せっかくですから,私で出来ることはしておいた方がいいかなって思って」と秘書さん。

「注意事項の細かいコトなんて,幹部が決めてくれればええことやん?」

「はぁ~~」

「われわれ下っ端はそれに従うだけやん」

そう言われてしまうと,まさしくそうなのであって,返す言葉がない。

「・・・っという具合で,主任からやってくれと言われ,片ややらなくていいというヒトもいて・・・私は一体どうすればいいんでしょう?シノ先生,決めてください!」



▼ いろんな解釈が成り立つワケで・・・

そもそも,必要だからと作り出した業務安全マニュアル。

実際にこれに関わるのはみんなだということであれば・・・

 コトを進めるにはあくまで民主的に多数決で・・・by 主任さん。

 そんなん主任の責任放棄やんけー・・・by Gクン。

 どっちに与するワケじゃないけど,やりにくいわ~・・・by 秘書さん。

・・・表面的に解釈するとこんな感じか?

しかしながら,元を正せば「それくらいはあらかじめ決めておいた方がええんちゃう?」と自分が言い出したことに端を発するマニュアル作り。

言い出さなかったら発生しなかったトラブル・・・と言えんこともない。

そうなると,上記がすべて言いだしっぺに対するブーイングに聞こえてくる。

たとえば・・・

 何でそんな仕事,オレだけに押しつけんねん・・・by 主任さん。

 何でそんな仕事が回りに回って秘書さんがやってんねん・・・by Gクン。

 せめて言いだしっぺのシノ先生が叩き台くらいは作ってくれてもええやん・・・by 秘書さん。

・・・こんな感じなんかもしれん,現実的には。

さ~て,このこんがらかった状況をどうやって打開すべきか?



▼ 笑みは戻るが・・・

「板挟みにさせて,スマンかったなぁ」

「イエイエ・・・」

「でもマニュアルは必要やと思うし・・・・・やっぱ手伝ってもらわんとあかんわ」

「わかりました」

「まずマニュアルの叩き台としては,とりあえず検査部のモノを元にした方が楽やしなぁ・・・主任さんの言うように」

「そうですね」

「細かい項目についてはいちいちアンケート取るのもバカバカしいし,主任に一任っていうことでええんちゃうかなぁ・・・Gクンの言うように」

「・・・わかりました,それでやってみます」

秘書さんの顔に笑みが戻る。

素晴らしい解決策をもらったが如く,納得して戻って行く。

しかし・・・・・

状況的には,あまりというかまるで変わってないことにすぐ気付くかもしれん。

「やじろべえシノ」と揶揄されないよう,気をつけてフォローアップしよーっと。



「 np 」

カルテによく記載される用語。

意味は「特記すべきこと無し」で,nothing paticularの略。


「 do 」

これもカルテによく記載される用語。

意味は「同上」で,dittoの略(と言われるが諸説あり)。



▼ 頻発します

学生時代の実習で,カルテを初めてのぞいた時のことを思い出す。

いろいろ書いてあるんだが,npとdoがたくさんあって驚く。

たとえば,日付の後に Symptom:np,Mittel:do などと(ちなみにSymptomとは症状で,Mittelは薬処方)書いてあり,それが数ページにわたって繰り返されている。

たまに何か所見が書いてあるが判読不能で,英語だかドイツ語だか漢字?なのかさえも分かりづらい場合がある。

しかし当時は,なんかscientificで崇高な意味が込められているように見えたカルテ。

今になってみれば「もっとしっかり記録せんとダメやん!」と言うことができるが・・・・・

言い訳になるが,少し前までのカルテと言えば,伝言板というかメモ的な扱いをするドクターが少なくなかった。

一般には,カルテ開示なんて意識にはほど遠かったように思う。



▼ たとえば・・・

我が病院病理における自分の前任だったS先生。

ご多分に漏れずこの「ditto」を多用する先生だった。

もともと英語表記にて病理報告書を書いていたS先生。

 1) Hyperplastic epithelium with slight atypia・・・

などと報告書に記載してある下に,

 2-5) ditto

とある。

これは1)-5)と番号が振られてある5つの検体に対して,1)にはちゃんと病理変化が書いてあるんだが,2-5)は以下同文になっている。

こりゃあなかなか名案!,って言うかラクチンだ。

実はこのnpとdo,ルーチンワークあるいはメモ的な記録をする際には,最強のツールとなる。

たとえば自分が何かをメモする時には,「○○=do」とか「△△,□□,XX:np」とか使っている。

やってみれば分かるが,絶大なる時間短縮と労力軽減につながる。

しかし,たとえば子供らの夏休み自由研究に真似されるとちょっと困る。

「クワガタ観察日誌」にて・・・・・

  8/16 クワガタの様子:np, エサやり:do

・・・こんな可愛げのない日誌は,評価最低だろう。



▼ ここんところの心境としては・・・

病院病理の仕事としては,npでdoばかりがいい。

10歳の子の腫瘍が生検されたが,炎症だけのnpだったりとか・・・

胃ガンの手術後のフォローアップ検査で, 再発なしのnpだったりとか・・・

別に病理に限らず,医療機関の日常などというものは本来npがいい。

そんなnpばっかりな中で,「病理診断の知識」のために学習を重ねつつ,「病理診断の勘」という刃を研いでいきたい。



今日はnpだった,また明日もdoだといいな。


▼ 「今度,同級生の飲み会をします」

大学時代の同級生の集まりといっても,このブログで書いてきたランだとかJOだとかの悪友がたむろする,気兼ねないお気楽な会だ。

その幹事を引き受けた自分。

場所決めに悩むほどの会ではないので,ネット検索で目についた居酒屋に予約を入れる。

料理はそんなに食べないし,いちいちオーダーするのも面倒なので,3000円コースにする。

飲み放題にすると1000円アップで合計4000円か・・・

ってコトは,1000円で飲み放題か・・・安いなぁ。

生中480円を3杯飲んだら元とれるやん。

それに飲み放題メニュー内に焼酎やカクテル類が充実してるし,なかなかええやん。

っと言うことで,まったくの個人的趣味で2時間飲み放題付きにする。



▼ 「19時30分,スタートです」

さて当日,開始時間になっても集まりが悪い。

この時点で参加予定10名のうち,6名しかそろっとらん。

開始時間守れやって言うたやん!

飲み放題やから遅れてくると不利やぞって,親切に言ってやったのに。

それに,ちょっと遅めの開始時間設定なので腹も減ってるし・・・

しょーがないので,幹事采配で19時40分飲み会開始とする。

「じゃあ,今から始めて下さい」

「ハイ,飲み放題の方は,これから2時間ということにさせていただきます・・・・・」



▼ 「お飲物のご注文は?」

半年に一回ペースで顔を合わせてはいるものの,積もる話はあるもんだ。

遅れてきた輩も合流して,皆しゃべるのに夢中。

それにみんな空腹なのか,運ばれてくる料理はすぐに無くなる。

しかし,飲みのペースは遅い。

1杯目は調子よくいったが,2杯目からは一気にペースダウン。

このままじゃー完全に「飲み放題負け」やん!

しびれを切らして「おーいラン,次の飲み物なににする?」などと余計な世話を焼く自分。

「おー,まだあるからええわ」

「なら,JOは?」

「まだええ」

みんなー,もっと飲んでくれ~。



▼ 「空いたグラスと交換でお願いします」

仲間の噂やら近未来の医療状況やら紹介した(された)患者さんの動向やらのりP出頭やら,そんなことを延々としゃべってみな満足しているのはいいが・・・・・

途中から,みんながウーロン茶を頼みだす。

JOなぞは「オレ,水でええわ」と言いだす。

ちょっと~~!

気合い入れーやー。

ひとり気を吐く自分は,生中6杯を完飲。

ぜったい元はとったるでー。



▼ 「これでラストオーダーになりますが・・・」

開始から2時間経つ頃には,遠方から来た2名と体調不良1名が席を立つ。

そしてさらにもう一人が「明日,仕事あるんで・・・」と言いだしたのを機に,お開きとなる。

自分の活躍でなんとか元をとったが,40を越えた自分たち。

ほんとに年取ったなぁ・・・・・と痛感する。



▼ 来訪者あり

午前に自分の部屋にて検鏡していると,突然に講座の教授先生がお出ましだ。

「ハイ,何でしたでしょう?」と部屋から出ると,教授先生の後ろには見知らぬヒトが立っている。

「実はシノ先生,こちらは先日話してた中国からの先生で・・・」

どうやら姉妹校提携をしている中国の某大学から,夏休みを利用して教授先生やら学生さんやらが視察に来ているらしい。

その御一行様の中に病院病理を専門とする先生がいるので,我が病院病理を視察させて欲しい。

・・・そう言えば,そんなことを先日に言われたような気がする。



▼ いきなり言われても・・・

「ナイス・トゥー・ミー・チュー」まではいいんだが,それ以降がよろしくない。

我が病院病理のシステム見学希望のため,業務工程の流れに沿っての説明役に急遽抜擢された自分。

いきなりに加えて,英語で説明せえとムチャ言われても困るんだな,これが・・・・・。

たとえば,「VIP」が通じない。

VIPとは,ホルマリン漬けになった病変組織をアルコール漬け,それからキシレン漬けにして,最後にパラフィン漬けにしてくれる機械のこと。

それが一言で通じんので,じゃあ説明をしようとなるが,VIPって何の略だったっけ?

え~っと,Vは確かバキュームで・・・あとは・・・知らんし・・・

わからんので,思いつくまま「パラフィン・ブロック・メーキング・マシーン!」と言ってみる。

すると,「・・・Oh! tissue processor?」と逆に切り返される。

「That's right!」と言いながらも,アホなことを言ってしまってちょっとへこむ自分。

だが,かえってこのアホな一言が場を和ませて,あとはスムーズに説明していくことができた。



▼ そう言えば・・・

自分の留学時代のボスが,日本に短期滞在したことがある。

大学の研究室に来て,いろいろ研究面のアドバイスしてくれるのはありがたいんだが。

それが休日ともなると,あちこちに観光に行きたがる。

やめればいいのに,レンタカーまで借りて自分で運転すると言ってきかない。

今週末はA神社に行ったかと思うと,次週末はB寺にお参りして・・・と過密なスケジュール。

少しはじっとしてろー・・・っと,当時は思ったもんだが,実のところは同伴していた奥さんを慰めるためムリしてたのかもしれん。



▼ 大ウケしたボス

これは,そのボスがとある神社を訪れた時のこと。

前日に詳細に地図を書いてあげたんだが,そこは老夫婦が異国の地をドライブするワケなので,当然のことながら迷う。

迷っても強みなのが,この老外国人たちは平気で道を聞くことができる。

田舎の道路でどうやって見つけたのかは知らんが,若いヒトを捕まえて道を尋ねたらしい。

「スイマセーン,〇〇ジンジャ,ドコデスカ?」

すると,その若い日本人は丁寧に道を教えてくれたそうだ。

「この先のトンネルを抜けて,すぐに右折して・・・・・」

その説明を英語でしてくれたそうなんだが,どうやらその通りすがりの若い日本人,やはり説明途中に英単語が出てこなかったらしい。

具体的に言えば「トンネル」の英訳をド忘れしたらしい。

「トンネルって英語でどういうんだっけ・・・え~っと,トンネルっ~てぇ~と~・・・・・」

おそらくこんな風にあれこれ思い悩んだんだろう,その日本人クン。

しかしエライのが,迷った末にも何とか英語で説明を続けてくれたそうだ。

「・・・え~っと,あそこのマウンテン・ホールの向こうで・・・」

マウンテン・ホール=山の穴。

これすなわち,トンネルのこと(らしい)。

この説明を聞いた我がボスは,メッチャウケて,大爆笑したらしい。

それで意気投合した彼ら。

なんでも一緒に車で神社に詣でたらしい。



ユーモアは,国境を超えた潤滑油。


「理到るの言は,人服せざるを得ず。然れども其の言激する所有れば則ち服せず。強うる所あれば則ち服せず。狭む所有れば則ち服せず。便ずる所有れば則ち服せず。凡そ理到って人服せざれば,君子必ず自ら反りみる。我れ先ず服して,而る後に人之に服す。」

『道理の行き届いた言葉には,誰でも服従しないわけにはいかない。しかし,その言葉に激しいところがあると,聴く人は服従しない。無理に押しつけるところがあれば,服従しない。身勝手な私心を挟むところがあれば,服従しない。言う人の便利をはかろうとするところがあると,服従しない。
凡そ,道理が行き届いている(と思う)にも拘らず,人が服従しない時には,君子は自ら反省する(ものだ)。先ず,自分自身が心から服従して,しかる後に人は服従するものである。』

(「言志四録」佐藤一斎著/川上正光訳 講談社学術文庫)






<しの訳>

▼ 伝えるコトは難しい・・・

ヒトに対してアドバイスやら意見やらを言おうとしたとき。

その内容が理に適っている必要があるのは言うまでもない。

が,それにも増して「伝え方」が大切だとするのは卓見だ。



▼ 正しく伝えるために その1

そもそも,伝えようとすることを正しく理解しているか?が大事。

意外に伝えようとするそれは,ヒトの受け売りだったり,書いたもののコピーだったりする。

それじゃあダメと言うつもりはないが,それを自分なりに噛み砕いて血肉化しておくことが必要だ。

じゃないと,単純なコメントや質問にしどろもどろになったりする。

そうなったら,せっかく良いことを言ってくれてるらしいのになんだかなぁ・・・と,説得力が半減することになる。



▼ 正しく伝えるために その2

伝えることに,心底共感・心酔しているか?も大事。

そうすると,伝えたい!という気持ちが前面に出やすくなって,説得力がアップする。

意外に,この場面ではこう言っておいた方がいいという常套句を並べたり,上辺だけのつじつま合わせで済まそうとしてしまう。

結果として,言ってることがブレたり,朝令暮改的な矛盾が生じる。

そうなると,良いこと言ってくれてるのにおかしいなぁ・・・と,これも説得力がなくなる。



▼ 正しく伝えるために その3

伝える際の心構えが大事。

伝え方には,伝える側の心構えが反映されやすい。

それは,伝えられる側にはけっこう敏感に伝わるもんだ。

「イライラしてるなぁ」とか「機械的やなぁ」とか「上から目線でイヤやなぁ」とか。

察することの得意な私たちにとってみれば,内容以前にそれは目に飛び込んできがちだ。

もしもそれらが伝えられる側の感情面に負に働くと,けっこう致命的かもしれん。

そうなると,せっかく良いこと言ってるのに一体何だあの態度・・・と,すべてが台無しになる。



伝える態度・心構えまでが相揃ってのみ,ヒトを従わせることができる。

真剣に「伝えよう!」とするならば,相手に要求するよりも,我が身をそこまで磨くことが大事。