映画「不能犯」要するにイケメンな喪黒福造 | 忍之閻魔帳

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ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)

今回のメインディッシュは映画「不能犯」


▼今週発売の新作ダイジェスト

 

   

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02月01日発売■PS4:「ドラゴンボール ファイターズ」

02月01日発売■NSw:「The Elder Scrolls V: Skyrim」

02月02日発売■Blu-ray+DVD:「ドリーム」

 


▼映画「不能犯」要するにイケメンな喪黒福造

 

 

グランドジャンプで連載中の人気コミックスを

松坂桃李の主演で実写化したサスペンス・スリラーが明日より公開。

相手を見つめるだけで死に追いやる特殊能力を持った男と
彼の犯罪を立証しようとする刑事との駆け引きを描く。
共演は沢尻エリカ、新田真剣佑、間宮祥太朗。
監督は「貞子vs伽椰子」の白石晃士。

 

02月01日公開■Ticket:「不能犯」

 

白石監督と言えば、ホラー好きにとっては

「ノロイ」「テケテケ」など悪食が好むC級監督として

広く知られていたのだが、「貞子vs伽椰子」の監督に抜擢されたことで

一般層にも知られるようになった。

ホラー出身では中村義洋など、一躍人気監督になった方もいるのだが

白石監督はこれだけのキャストを与えられても全くブレておらず

むしろ松坂桃李や沢尻エリカを徹底的に無駄遣いせんとする

C級監督の意地のようなものを感じて逆に感動してしまった。

 

そもそも、松坂桃李演じる宇相吹正なる人物の設定が良く分からない。

冒頭では公衆電話ボックスに殺して欲しい相手の名前と

その理由を書いた紙を貼付けておくと依頼人に代わり殺してくれる、

という都市伝説が発端になっているのに、

宇相吹は物語の中盤であっさりと沢尻演じる刑事に住所を書いた紙を渡し

「ここに連絡ちょうだい」と言い残して去っていく。

これではバー「魔の巣」に行けば必ず会うことの出来る喪黒福造と

何ら変わりがない。(注:喪黒福造は「笑ゥせぇるすまん」の主人公)

マインドコントロールによって対象を死に導くスタイルは

変形の「DEATH NOTE」とも言え、いずれにせよオリジナリティは低い。

 

夜神月(デスノート)のように万能感と支配欲に捕われた知能犯でもないし

猟奇的に殺戮を繰り返す快楽犯でもなく、宇相吹の目的が良く分からないのも難。

刑事側のキャラ設定で性別を逆転させた理由もこれと言って見当たらず、

沢尻がそこまで宇相吹にこだわる理由も無さそうとなると、

もうタイトルの良く似た映画「予告犯」と同じフォーマット

(生田斗真が犯人×戸田恵梨香が刑事)で

やりたかったのかな?ぐらいしか思いつかない。

中盤でドロップアウトしたまま終盤まで意識不明な新田真剣佑も

「キングスマン:ゴールデン・サークル」のチャイニング・テイタム的間抜けさ。

沢尻が「おい、新人」と呼ぶ時のテンションが全く「ね、ほろよい」と同じで

その台詞が出てくる度に笑ってしまった。

沢尻をメインに出しておいてサブに矢田亜希子を置くのも

どちらがどちらか分からなくなったので止めた方が良かったのでは。

 

「サイタマノラッパー」から「ジョーカー・ゲーム」

「22年目の告白 -私が殺人犯です-」の監督へと抜擢された

入江悠のように、本作を取っ掛かりにして白石監督がメジャー作品を

バンバン撮るようになる未来は、残念ながら見えなかった。

ただ、「これからもココに居てくれるんだね」という

妙な安心感はホラー好きとして感じられたのも事実で、

そこで満足できる観客がさてどのぐらいいるかが問題。

おそらく、そう多くないと思う。

 

警察と犯人の駆け引きを楽しむには互いの仕掛けが弱過ぎるし、

アクションを楽しむには基本相手を睨むだけなので迫力不足。

猟奇犯モノとしては狂気が決定的に足らず。

犯人にもう少し人間味(哀しい過去がある、躊躇する瞬間がある等)があれば

物語に別の深みが出たのかも知れないがそれもなく

先に述べた白石監督のC級ノリを愛することの出来るファンか、

松坂桃李の悪役ぶりが見たい熱狂的なファンぐらいにしかお薦めポイントが無い。

それでもいいさと仰るなら、せめて公開日の1日に観ることをお薦め。

 

映画「不能犯」は明日2月1日より公開。


ハリウッド版「リング」シリーズ最新作も現在公開中。

 

 

Jホラーの出世頭としてハリウッドでも大成功を収めた
「ザ・リング」(2002年)「ザ・リング2」(2005年)以来、
13年振りに貞子(サマラ)が復活。
鈴木光司のベストセラー小説をベースに、
「見たものは7日後に必ず死ぬ」と言われている呪いのビデオを
見てしまったヒロインが、生き残りを賭けてサマラの謎に挑む。
監督は本作がハリウッド・デビューとなるF・ハビエル・グティエレス。

今回の復活が、キャラチェンジから再ブレイクを果たした
日本の珍現象を見てのものなのかは不明だが
ハリウッド版の第3弾は「ちゃんとしたものを作ろう」としたものと思われる。
ただし、残念ながら全く上手くはいっていない。
オープニングだけはカルトムービー「スネーク・フライト」に通じる
馬鹿馬鹿しさ炸裂で「これは期待できそうだ」と思ったものの、
開始5分で面白さを全て使い果たしてしまったようなヌルい展開で
眠気と闘いながらの106分であった。

 
続きはこちらで。
 

▼楳図かずおが仏の漫画賞「遺産賞」を受賞、日本人としては史上3人目の快挙

 
楳図作品の中では「赤ん坊少女」や「おろち」といった
純ホラーばかりが取り上げられているのだが
「14歳」や「漂流教室」、そしてこの「わたしは真悟」のように
予言書かと思うほど示唆に富んだ内容のSF群がいずれも素晴らしく
楳図=ホラー漫画家と思っている若い方にも是非読んでいただきたい。