トラウマ覚悟で観るべし。映画「野火」 | 忍之閻魔帳

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映画 野火 市川崑 塚本晋也


▼トラウマ覚悟で観るべし。映画「野火」


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戦争を題材にした映画のいくつかは『感動作』として大々的に売り出される。
しかし、現在公開中の「野火」は、
そういった商業主義に走った大作とは対極にある作品である。


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大岡昇平による戦争文学の傑作「野火」を最初に映画化したのは
巨匠・市川崑監督で、1959年に船越英二主演で公開された。
46年ぶり2度目の映画化を手掛けたのは塚本晋也監督。
登場人物の心情に迫った市川版のリメイクではなく、
学生時代に出会い衝撃を受けた原作のイメージを忠実に再現したのだという。
構想から着手まで10年以上が経過しており
経済的な理由から何度も頓挫しかけたが、
戦後70年が経ち、世の中から戦争の記憶が薄れつつあることから
監督自らが主演する自主制作の形で公開まで漕ぎ着けた。
まさに執念の映画化である。共演にはリリー・フランキー。


*一部に過激なシーンあり、再生の際はご注意を。

1944年10月20日から翌年の8月15日まで続いたフィリピン・レイテ島での戦い。
日本軍は大敗を喫するだけでなく、補給に失敗したため多くの兵士が餓死した。
レイテ戦に限らず、戦死者の約6割、実に160万人は餓死であったと言われているが
そういった死が映画やドラマで取り扱われることはあまりない。
映像的に扱い辛いし、どう転んでも感動に結びつかないからだろう。
しかし塚本監督は、凄惨を極めた現場を可能な限り忠実に再現し、
平和ボケの進んだ日本人に「さぁこれを観ろ」と言わんばかりの熱量で
スクリーンに焼き付ける。
極限状態で人がどうなってしまうのか。
そこには、映画的な嘘(綺麗事)の入り込む余地など一切ない。
空腹から来る飢餓感が理性や倫理観を呑み込み、
飛び交う弾丸によって兵士は一瞬で肉塊と化す。
耳を劈くほどの銃声や怒号が、次第に私達を目撃者にして
逃げ出したい気分に襲われるが、ここは劇場、終演まで目を背けることは許されない。
「現実はこんなもんじゃないんだぞ」と塚本監督の声が聴こえる。


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本作を観て思い出したのが、
楳図かずおの名作「おろち」の「戦闘」というエピソード。
誰に対しても親切な父親を尊敬していた中学生の息子が、
ふとしたきっかけで父の過去を知ってしまい混乱する物語。
少年の父は、日本軍の兵士としてガダルカナル島で闘っていた。
長期に渡る闘いは、敵兵ではなく感染病や飢えを脅威へと変える。
豚、鳥、虫まで喰い尽くした彼等はひとりまたひとりと力尽きて死んでいく。
何としても生き延びたい、生き延びてもう一度故郷の地を踏みたい。
少年の父が選んだのは、仲間の肉を喰らうことだった。
「戦闘」が発表されたのは、傷痍軍人の姿が街から消え始めた1970年頃。
楳図かずおが「野火」を読んでいたかは分からないが
子供ら(当時は少年サンデーに掲載)に語り継ぐ目的で描いたのは間違いない。

人間らしささえも失い、「死んだら喰われる」恐怖がどういったものなのか、
想像を張り巡らせたところで、現実はその何百倍も過酷だったろう。
塚本監督の手法のひとつである容赦ない過激な描写は、
作中の人物の痛みに出来るだけ寄り添おうとした結果の嗚咽であると私は思っている。
それはCoccoを主演に迎えた「KOTOKO」もまた然り。
愛情深い人なのだ。

仕方ないとはいえ、資金難がそのまま画に出ている部分は多い。
患っているはずの肺病が都合良く出たり引っ込んだりするなど
シナリオ面にも粗はあるので、映画としてどうなのだと言われると
佳作以上・良作未満になってしまうのが残念。
それでも、「泣けた」「感動した」で括られる戦争映画が増える中で
こうした作品が世に出ることは貴重だし、
戦争を風化させないために私達も引き受けなければならない。

映画「野火」は現在公開中。



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アプリに関してはラインナップの薄さが否定できないので
Amazonゲームスタジオの作品は
いつでもフリープレイ可能ぐらいのことをやってくれると
ゲーム好きにもアピールできると思うのだが。