藤井隆、11年振りのニューアルバムが完成 | 忍之閻魔帳

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▼藤井隆、11年振りのニューアルバムが完成


06月17日発売■CD:「Coffee Bar Cowboy / 藤井隆」

椿鬼奴、レイザーラモンRGとユニットを結成したり
独自のレーベルを起ち上げたりと、このところまた音楽活動が盛んになってきた
藤井隆が、6月に11年振りのニューアルバムを発売する。
藤井のセフルプロデュースだが、共同プロデューサーとして
ノーナ・リーヴスの西寺郷太、冨田謙がクレジットされ、
収録曲には宇多丸(RHYMESTER)、YOU、乙葉、松田聖子など、
藤井の人脈(嫁を人脈と言っていいのか)を活かしたメンバーが揃えられた。
このメンツならキーボードは清水ミチコを頼むべきだったのでは、と戯言はさておき、
藤井隆の音楽活動は一般的に誤解が多いので少しだけ触れておきたい。

藤井隆の歌手デビューは2000年。
浅倉大介プロデュースの「ナンダカンダ」がいきなりヒットし
そこで記憶が止まってしまっている方が大半ではないか。
しかし、この浅倉大介の楽曲は2ndの「アイモカワラズ」で終わり。
「歌う芸人」としての藤井隆はここで終了し、
3rdシングルの「絶望グッドバイ」からがアーティスト藤井隆のスタートと言える。
「絶望グッドバイ」は松本隆x筒美京平の歌謡界を代表するゴールデンコンビの作で、
記念すべき1stアルバム「ロミオ道行」は何と松本隆のプロデュース作品である。
松本隆がプロデュースした南佳孝、薬師丸ひろ子、裕木奈江などのアルバムは
いずれも名盤として知られており、当時の私は”松本隆プロデュース”の広告だけで
「買い」を即断し、発売日にCDショップに駆け込んだのを今でも良く覚えている。


発売中■CD:「ロミオ道行 / 藤井隆」

期待に違わず、いや期待以上に「ロミオ道行」は名盤だった。
何しろライター陣がすごい。
堀込高樹(キリンジ)、本間昭光(ポルノグラフィティなど)、
田島貴男(オリジナル・ラブ)、コモリタミノルとそうそうたる顔ぶれ。
バラエティ豊かな楽曲を松本氏の詞がひとつの世界観に束ね、
藤井隆の魅力を最大限に引き出している。
明らかに異質な浅倉大介の2曲もボーナストラックとして
収録されているが、私はこれを外して聴いていたし
今もiPhoneにこの2曲は入れていない。
アルバムの世界観がめちゃくちゃに破壊されてしまうのである。

先日、「冬の旅」のリリース記念で行われたUstream番組の中で
松本隆がこんなことを言っていた。

「今はまた、震災とか色々とあって世の中が暗くなってきたけど
 一時期は『絶望』って言葉が死語になってたのね。
 絶望なんて世の中にないほど浮かれてるのに、でも簡単に口にしちゃう。
 だからそんな軽くなった『絶望』って言葉を
 アイドルっぽい藤井君が口にして歌ったら面白いかなあって思ったの」

偉大過ぎる1stアルバムの後、さてどうするのかと注目していたら
5thシングルに持って来たのがキリンジ堀込高樹の作詞・作曲による
「私の青い空」だった。


配信中■iTMS:「わたしの青い空 / 藤井隆」

「ロミオ」の延長線で来るのだろうという予測は良い方向に裏切られ、
スタイリッシュな路線で攻めて来た。
当時の藤井は看板番組の「Matthew's Best Hit TV」が絶好調で
芸人としても飛ぶ鳥を落とす勢いだったのだが、
番組にゲストで招いたthe brilliant greenとの出会いがきっかけで、
Tommy february6こと川瀬智子のプロデュースによる
6thシングル「OH MY JULIET!」がリリースされる。



その後もいくつかのコラボを発表したが音楽活動は徐々に縮小し、
久々のシングルリリースの報が届いたのが2013年の6月。
松田聖子の作詞・作曲による「I just want to hold you」が
映画「くるみ割り人形」の主題歌に起用された。



タワレコで行われたインストアライブにも参加した。
ちゃんと藤井と握手もしてもらい、「CD全部持ってます」と言ったら
例の嘘くさい笑顔を全開にして「ありがとうございます!」と応えてくれて大満足。
(嘘くさいは褒めてます)

そして昨年、やってきたのがtofubeatsとのコラボレーション。



神戸が生んだニューカマー、tofubeatsの指名を受けて
久々に音楽に戻って来た藤井隆は、相変わらずの藤井隆だった。
tofubeatsに胸を貸すように、20代の作り出すデジタルサウンドで
余裕すら見せながら歌う藤井はすっかり大物ミュージシャンの風格。

藤井隆は無類のアイドル好きとして知られるが、歌い手としての魅力は
シティ・ポップスでもAORでもいけてしまう柔軟性の高さ。
どんな大物と組んでも、自身のアイデンティティを失わないまま
プロデューサーの世界観にマッチさせてしまうのだ。

11年振りのアルバムは、ポップスの旨味を知り尽くした
藤井の作曲が5曲も収録されるとのことで、仕上がりには期待が持てそう。
6月17日が楽しみ。