水谷豊のパタリロ化を憂う。映画「王妃の館」 | 忍之閻魔帳

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映画 王妃の館 水谷豊


▼水谷豊のパタリロ化を憂う。映画「王妃の館」


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「相棒」シリーズの水谷豊が主演を務める映画「王妃の館」が今週末より公開。
パリの一流ホテルシャトー・ドゥ・ラ・レーヌ(=王妃の館)を舞台に、
倒産寸前の旅行会社が仕組んだ二重予約によって起こるドタバタを描いたコメディ。
原作は「柘榴坂の仇討」「壬生義士伝」「鉄道員(ぽっぽや)」の浅田次郎。
コメディなので、浅田原作としては「椿山課長の七日間」あたりに近いか。
監督は「探偵はBARにいる」「相棒」の橋本一。



水谷豊が「相棒」の杉下右京を演じ始めたのが15年前の2000年。
長寿シリーズを生み出すテクニックにおいては民放いちのテレ朝によって
今や水谷豊は杉下右京はイコールで結ばれる存在になった。
しかし、だからと言って「右京」と付いたキャラクターが登場する原作を
安易に水谷にあてがうのはどうか。
「王妃の館」で水谷が演じるのは売れっ子作家・北白川右京。
「相棒」は浅田次郎原作ではないのだから何の関連性もなくて当たり前なはずが
スクリーンに登場する北白川右京は紛れも無くコスプレをした杉下右京であり、
コメディのはずがちっとも笑えない本編は接待ゴルフならぬ接待コメディ。
今や東映の金看板である「相棒」シリーズを続けてもらうために
水谷をパリに連れていく大義名分として本作が選ばれたのではとすら思える。


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グランドホテル形式のストーリーでありながら
登場人物が全員ぺらぺらでビジュアルも吉本新喜劇のよう(なんだあの緒形直人は)。
それでいて、食事のシーンや美術館で右京がウンチクを垂れるシーンが異様に長い。
全編フランスロケ(22泊)で撮影された映像は確かに美しいが、
日本の作品で初めて撮影を許されたヴェルサイユ宮殿も、
ルーヴル美術館もヴォージュ広場もルイ13世の城も
映画の面白さアップには貢献していない。
「ミッドナイト・イン・パリ」や「グランド・ブタペスト・ホテル」のような
洒落たコメディを目指したのだろうが、製作費も演出力も演技力も、
何もかもが足りていないため痛々しさだけが残ってしまった。
聞いた話、原作とは随分異なる右京の衣装も水谷の考案らしい。
東映からすれば水谷に「ひとつ、よろしいですか」と言われれば
絶対に逆らえない暗黙の了解もであるんじゃなかろうか。
でなければここまで出来の悪いコメディは狙っても作れない。


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右京が書いている新作(小説)を映像化したシーンでは
石丸幹二や安田成美が登場するのだが、このサブストーリーが
本編にほとんど影響を与えず、最後まで分離したままエンドロールを迎えてしまうため
じゃあ一体何のために中途半端なミュージカルを入れたのかと頭を抱える始末。
「レ・ミゼラブル」の真似事がしたいならもう少し真面目にレッスンをしろ。
子役の何人かが後ろでむちゃくちゃダルそうな顔しながら歌ってたぞ。

これぐらいなら、水谷以下のキャスト達がフランスでショッピングしたり
豪華な料理を食い散らかす旅番組にするか、「世界ふしぎ発見!」のスペシャルで
ミステリーハンターを水谷豊にしてしてしまった方が良かった気がする。
あ、「ふしぎ発見」はTBSか。



少女マンガ版の「こち亀」とも言われている魔夜峰央の「パタリロ!」には、
本編だけでは描いていて飽きるのか、様々な派生作品が存在する。
家政婦になったり、時代劇になったり、魔夜の博識ぶりを活かした作品は
本家とはまた違った味わいがあり人気も高い。
舞台設定が変われど主人公がパタリロである点は
ファンにとって安心材料であり、下手に冒険されるよりずっといい。
と言うか、もともと本編でもタイムワープを使って縦横無尽にストーリーが展開するため
どこに枝葉を伸ばそうが違和感がないのである。
しかし、水谷豊が同じようにあっちこっちで右京を出すのは問題だ。
原作が違うし、別人物なのだから、
どうしても杉下右京が他の右京を塗り潰す形になってしまう。

このままでは「サムライスピリッツ」の橘右京や
「らんま1/2」の久遠寺右京さえも狙われかねないし
今後新作を書く宮部みゆきや東野圭吾や湊かなえは
主要人物の名前に右京と付けるのを避けた方がいい。
でなければ全て杉下右京が「ひとつ、よろしいですか」と横槍を入れてくるぞ。

いつもそつなくこなす田中麗奈が珍しく芝居に乗っていないように見えたのは
「こんなにつまらなくてごめんなさい」という、彼女なりの誠意だったと思いたい。
映画「王妃の館」は25日より公開。

*次回は、大いに笑える快作「龍三と七人の子分たち」を紹介予定。



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