単体でもイケる。映画「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」 | 忍之閻魔帳

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▼単体でもイケる。映画「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」

累計発行部数1,000万部を突破した海堂尊の東城大学シリーズの映画化。
原索が完結したことにより、これまでスペシャルや連続ドラマで
同シリーズを映像化してきたフジテレビも「FINAL」となった。
顕微鏡レベルでの検死を可能にする最先端のAiセンター発足で
お祭りムードになっていた東城医大を襲う怪死事件を
すっかりお馴染みとなった田口と白鳥が追う完結編。
出演は伊藤淳史、仲村トオル。
共演は松坂桃李、戸次重幸、栗山千明、桐谷美玲、生瀬勝久、西島秀俊。
監督は本作が映画デビューとなる星野和成。



どこから見ても「フジテレビの映画」です。

で終わってしまってはさすがにマズいか。
奇しくも本作と同日公開になる映画「白ゆき姫殺人事件」で
監督を務めている中村義洋が撮ったTBS製作の「ジェネラル・ルージュの凱旋」が
素晴らしく良い出来だったので、てっきりTBS&中村コンビも
並行してやっていくのだろうと思っていた東城大学シリーズは
フジテレビだけがシリーズを重ね、今や大半の方にとって
田口公平は伊藤淳史、白鳥圭輔は仲村トオルで固まってしまったのではないか。
ちなみにTBS版は田口が竹内結子、白鳥が阿部寛、速水が堺雅人である。

話が逸れてしまった。
オーラスとのことで、Aiセンターの完成にまつわる脅迫事件と
新薬の認可を巡る薬害事件が絡み合いながら進行する贅沢な作り。
先日終了した連続ドラマ版「チーム・バチスタ4 螺鈿迷宮」の終末医療が
そのまま映画にも流れ込んでいるので見ておくに越したことはないが、
ベターであって必須ではない。劇中で描かれる僅かな説明でも
ちゃんと前後を把握できるように作られているのは親切だ。

群発頭痛というやっかいな持病を持っている私は治験にも参加したことがある。
薬を飲んだあとの体調を細かに書いて提出しなければならなかったが
「なるほど、こうやって新薬が認可されていくのか」と感心したのを覚えている。

「999人の患者は救われますが、1人の患者に重篤な後遺症が出ます」

と言われたら、あなたはその薬の処方を頼むだろうか。
頭痛が一番酷かった頃、症状が出る度にそこら中をのたうち回り、
もうこのまま死んでしまうのかも知れないと思っていた私は
担当医の「新薬ですが、試してみますか」の声に躊躇なく飛びついた。
認可が下りたものですら個人の体質によって気分が悪くなったりするのだから
当時の私はたまたまセーフだっただけなのだと改めて今思う。

新薬の認可が1年遅れただけで救えない命が出る一方で
認可を急いだために寝たきりになる患者が出てしまうジレンマ。
「急いで手を付けなければならない案件から小説にする」と言っていた海堂氏らしく、
実際の医療現場で感じていたであろう葛藤や怒りが
ミステリーの形を借りて色濃く反映されている。
ただ、医療方面では素人の突っ込みを許さない緻密さを誇りながら
犯罪関連、特に謎解きの肝となる電力供給やPCになると
いきなり「そりゃないだろう」の嵐になってしまうのは残念。
脚本にも問題があるのでは。

TBS版贔屓の私としては、白鳥を演じた阿部寛と仲村トオルに
映画版「失楽園」役所広司→ドラマ版「失楽園」古谷一行にも通じる
グレードダウン感がどうしても拭い切れなかった。
フジ版だけをずっと見続けてきた方ならそれほど違和感はないのだろうし
4シーズンも続いた連ドラ版の実績からしても少数派であることは自覚している。
ソツなくこなす俳優陣に混ざって、松坂桃李、桐谷美玲の二人は
伸び盛りらしい成長が芝居から見えて非常に好感。

シリーズを見続けてきたファンなら劇場に足を運ぶ価値あり。
TBS版の熱烈なファンも、最後の映像化なら劇場で見届けたい。
とか言いながらTBS版での再映画化も希望。

映画「チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像」は3月29日より公開。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:チーム・バチスタFINAL ケルベロスの肖像
    配給:東宝
   公開日:2014年3月29日
    監督:星野和成
   出演者:伊藤淳史、仲村トオル、栗山千明、西島秀俊、他
 公式サイト:http://www.batista-movie.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★


▼シリーズ簡単まとめ(スピンオフ、関連作など含む)

「チーム・バチスタの栄光」
TBSで映画化、フジテレビで連続ドラマ化。
日本では最高峰と評判の医療チームで行われたバチスタ手術で
ある日を境に術中死が相次ぐようになる。
成功率100%と言われたチームに何があったのか。シリーズ第1弾。

「ナイチンゲールの沈黙」
フジテレビでスペシャルドラマ化。
小児科を舞台にした東城大学シリーズ第2弾。


発売中■DVD:「ジェネラル・ルージュの凱旋」
「ジェネラル・ルージュの凱旋」
TBSで映画化、フジテレビで連続ドラマ化(+SP版もあり)。
ジェネラルと呼ばれる凄腕の医師・速水が部長を務める
救命救急センターを舞台にしたシリーズ第3弾。

「イノセント・ゲリラの祝祭」
医療事故の審議を巡り既得権益を守らんとする思惑が絡み合う第4弾。
主な舞台が厚生労働省になっているためかドラマ化はされていない。

「アリアドネの弾丸」
フジテレビで連続ドラマ化。
東城大学医学部付属病院がAiセンターの運営に動き出した第5弾。


05月30日発売■Blu-ray:「チーム・バチスタ4 螺鈿迷宮 Blu-ray BOX」
「螺旋迷宮」
フジテレビで連続ドラマ化。
ナンバリングではなく、シリーズ2作目「ナイチンゲールの沈黙」の派生作品。
原作の主人公は田口と白鳥ではなかったがドラマ化にあたり書き替えられた。
終末医療がテーマ。

「ケルベロスの肖像」
フジテレビで映画化。
第6作にしてシリーズ最終作。Aiセンターの正式稼働が近づく中、
9人の医療関係者が同時に死体で発見される事故が発生。


発売中■Blu-ray:「極北ラプソディ」
「極北ラプソディ」
NHKでスペシャルドラマ化。
東城大学シリーズではないが、海堂原作の「極北クレイマー」
「極北ラプソディ」をドラマ化したもの。主演は瑛太。
「ジーン・ワルツ」や「ケルベロスの肖像」にも出て来る極北が舞台。


発売中■NDS:「チーム・バチスタの栄光 真実を紡ぐ4つのカルテ」

「こんなのも出てました」なおまけ紹介。
数時間でクリアできてしまうボリュームの少なさはネックだが
「バチスタ」を軸にゲームオリジナルシナリオがあり
しかも海堂作品の面々が出て来たりもする。