子どもも騙せないビジュアル系ヒーロー。映画「ガッチャマン」 | 忍之閻魔帳

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▼子どもも騙せないビジュアル系ヒーロー。映画「ガッチャマン」

松坂桃李  健
綾野剛  ジョー
剛力彩芽  ジュン
濱田龍臣  甚平
鈴木亮平  竜
初音映莉子  ベルクカッツェ(ナオミ)
光石研  カークランド博士
中村獅童  イリヤ
岸谷五朗  南部博士

監督は「カイジ」の佐藤東弥。
脚本は「GANTZ」「20世紀少年」の渡辺雄介。



タイミングが悪かったことは認める。
「パシフィック・リム」に心躍らせ
「スター・トレック イントゥ・ダークネス」の先行上映に心震わせ
「マン・オブ・スティール」の試写会翌日に
この作品の試写だったことは不幸としか言いようがない。
ましてや、タツノコの黄金期をリアルタイムに知っている私にとって
「科学忍者隊ガッチャマン」の実写化と聞けばハードルは上がるわけで
ハリウッド級とまではいかなくとも
「案外いい落としどころだったのでは」であれば上等とまで譲歩していたのである。

ところが、届けられた実写版「ガッチャマン」は
これじゃあ子どもすら騙せないだろうというほどにグダグダで
テキストで再現することすら怯むほどの、お寒い台詞が満載の作品になっていた。
本作はアニメ版のファンは言うに及ばず
特撮ヒーロー好きや夏休み終盤のキッズ層を当て込んだものでもない。
松坂桃李、綾野剛、濱田龍臣、鈴木亮平というタイプの異なる美男4人に
「ガッチャマン」風のコスプレをさせたビジュアルムービーであり
そこに魅力を感じない人にとっての価値はゼロに等しい。
試写会場の女性比率が高かったのは偶然でも何でもなく
東宝の狙いもそこ(松坂&綾野目当ての女性客)にあるからだろう。
子ども達に混ざって「劇場版 仮面ライダー」をいそいそと観にゆく
大きなお兄さんなど、ハナから相手にしていないのである。

<*以下はネタバレ含んでいるため、知りたくない方は読み飛ばし推奨>

アニメ版と比較しているとそれだけで終わってしまうので
映画版だけに限定して話を進めるが、とにかく何もかもが軽い。
世界の危機などまるで気にも留めない連中が
深刻な面持ちでミッションを告げる南部博士(岸谷)をモニター越しに眺めながら
「なーにマジになっちゃってんの?ウケるー」と言っているような空気が充満している。
特に危機意識が低いのが剛力彩芽で
このジュンならその辺のコンビニの冷凍ケースに入ったり
ピザ生地を顔面に貼付けて写メすら撮りかねない勢い。
世界の危機よりも健。
健、健、健。
健を落とすことだけに命をかけている。
他のメンバーを「何でもっと普通にできないのよ」と叱りつけるシーンは
『クイーン・オブ・普通』の剛力彩芽の真骨頂とも言え、なかなか味わい深いが
あいにく私はラブコメを観にきたわけではない。
三池監督の実写版「ヤッターマン」があれで許されたのは
もともとがコメディタッチのヒーロー物だったからであり
同じ手法で「ガッチャマン」を作っちゃイカンだろう。
「ノルウェイの森」で華々しく映画界のメインストリームに復活した
初音映莉子が演じるベルクカッツェは、どう見てもフカキョン版ドロンジョの二番煎じで
やはり本作のスタッフは「ヤッターマン」を相当意識しているのだと思う。
しかし、哀しいかな出来上がったものは、原作ファン全員が殺意を抱いたと言われる
伝説の映画「デビルマン」級だったという皮肉。

【関連記事】愛がないなら原作物に手を出すな。映画「デビルマン」

初音版ベルクカッツェは、キスした相手をベルクカッツェに出来るらしい。
「お前もベルクカッツェになれー」と言いながら綾野剛にキスを迫るシーンは
本来なら緊迫感のあるシーンなのだろうが、私は笑えて仕方なかった。

笑ったと言えば終盤。
爆発寸前の敵基地から脱出しようとしたが、何と機体が基地に突き刺さって抜けない。
ではミサイルを撃ち込めと命じる健。
こんな至近距離で撃ったらヤバいんちゃうかと甚平や竜は止めるが
「死ぬなら一緒だぜ」と説得し、周りも「お、おぅ」と同調。
爆煙の中から出て来た機体はミサイルの爆発で燃え上がりまるで火の鳥のよう。
火の鳥、、、まさかと思った矢先に自信満々で甚平が言う。
「これぞ、科学忍法・火の鳥だぜ」

違うだろう。
それは絶対違うぞ甚平。

無事に戻ってきて平和が戻ったかと思ったら
ベッドで目を覚ましたジョーの目が真っ赤。
ベルクカッツェのキスによる呪いがまだ完全に解けていなかったらしい。
もしかして「スパイダーマン」のジェームズ・フランコのような形で続編に続くのか。

END

<*ネタバレ終わり>

この本と演出でちゃんとヒーロー然とした演技に徹していた松坂桃李は偉い。
逆境をはね除けての奮闘振りには殊勲賞を差し上げたい。
綾野剛は上手い下手以前に芝居の質が本作のようなアニメ・コミック原作とは合わない。
松田翔太あたりなら違和感なく聞けたような台詞でも
綾野が口にすると何とも言えない気恥ずかしさを感じるのだ。
「まだ下らねぇ話をしやがって。お前ら、最高だ!」みたいなことを言われても
背筋がすーっとする。おそらく本人も自覚しているのだろうが
続編があるとすれば間違いなくラスボスであり、出ないわけにはいかない。
それまでにオーバーアクションな芝居を覚えて欲しいところだ。
そして剛力さん、お疲れ様でした。

映画「ガッチャマン」は24日より公開。



★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:ガッチャマン
    配給:東宝
   公開日:2013年8月24日
    監督:佐藤東弥
   出演者:松坂桃李、綾野剛、剛力彩芽、濱田龍臣、鈴木亮平、初音映莉子、他
 公式サイト:http://www.gatchaman-movie.jp/
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配信中■iTMS:「虹を待つ人 / BUMP OF CHICKEN」

主題歌。
カッコ良過ぎて映画の主題歌には違和感があるが、曲単体は良い。