
(C) 2010 森絵都/「カラフル」製作委員会
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」(2001)
「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」(2002)
「河童のクゥと夏休み」(2007)
原恵一監督の作品は、大人が持つ包容力で子供の世界を描きつつ、
大人の心の片隅にあるセンチメンタリズムも同時に刺激するものが多い。
3年振りの新作「COLORFUL / カラフル」の原作は、森絵都の同名児童文学。
ある罪を犯して死んでしまった魂が、自殺した少年の体に入り込み、
命の大切さを学んでゆく姿を描いている。
【紹介記事】愛すべき佳作。映画「椿山課長の七日間」
粗筋だけを読むと、浅田次郎原作の「椿山課長の七日間」を思い出すのだが
強い未練を残して死んだ中年男をコメディタッチで描いた「椿山課長」と違い、
こちらの主人公は青春の真っ直中で自ら命を絶った少年。
「クレしん」や「河童のクゥ」のようなコメディ要素は全く無い。
まずはその点だけ覚悟しておくべし。
「おめでとうございます、あなたは抽選に当たりました」
罪を犯して命を落とした私に声をかけたのは、プラプラと名乗る少年だった。
プラプラは、輪廻のサイクルから外れた私に再挑戦のチャンスを与えるという。
自殺した中学生・小林真の体を借り、自分の罪を思い出すまで修行すれば
再び転生することが出来るとのこと。
こうして私は、小林真としてこの世に再び戻ってきた。
病室で意識を取り戻した私(小林真)を、父は歓喜の表情で迎えてくれた。
母は嬉しさのあまり泣いていた。
なんだ、幸せな家庭じゃないか、と思ったのも束の間、
真の母親は不倫中、兄とは仲が悪く、学校に行けば孤立無援の状態。
密かに想いを寄せていた桑原ひろかは、中年男と援助交際をしていた。
なるほど確かに不幸だ。
しかし、どうせ真の体を借りて舞い戻ったなら好き放題にしてやる。
真として行動し、真の視点からこの世を見つめ直しているうちに
私の心にも少しずつ変化が出始めていた。
主人公の小林真には、「河童のクゥと夏休み」でクゥを演じていた冨澤風斗を大抜擢。
真のクラスメイトには「ソラニン」の宮崎あおい、「呪怨 白い老女」の南明奈など。
真の両親には、「純喫茶磯辺」「インスタント沼」の麻生久美子
「西の魔女が死んだ」「交渉人 THE MOVIE」の高橋克実。
挿入歌は尾崎豊の「僕が僕であるために」、
エンディングはTHE BLUE HEARTSの「青空」をmiwaがカバーしている。
学校に居場所がなく、教師が頼りならず、家庭が逃げ場所にもならない。
けれど、ひとりで生きてゆける年でもない。
中学生が目一杯手足を広げて足掻いたところで、
気が遠くなるほどの世界の広さの前には、ひたすら無力である。
もう少し生きてみれば良いことがある、かも知れない。
もう少し頑張ってみれば光が射す、かも知れない。
不確かな未来を提示したところで、今この瞬間に絶望している者を救えはしない。
暗くて深い海の底から、ぼんやりと空を見上げている小林真に必要なのは
ただ側にいて一緒に笑ってくれる友人、早乙女の存在だった。
何も言わなくてもわかってくれる同士や、愛情を注いでくれる家族の存在に気付けたのも、
早乙女が、絶望の淵から這い上がる蜘蛛の糸になってくれたからだ。
生きる気力を取り戻すための光は、たくさんなくていい。たったひとつでいい。
小林真の自殺の理由を「え?そんなことで?」と思ってしまえるほど強い方ならば、
この映画は全くピンと来ないだろう。
確かに、「甘っちょろい悩みだ」と言われればそれまでの話である。
しかし、悩みの深刻度を測る物差しはないということも、覚えておいて欲しい。
他人から見れば「たかがそんなこと」でも、当人にとっては死ぬほど辛いことは沢山ある。
桑原ひろかの抱える漠然とした不安も、なかなか周囲(特に大人)には理解してもらえないと思う。
私は、己の物差しで「たかが」と感じたからと言って些細なことと決めつけ、
「頑張れ」「もっと強くなれ」とハッパをかけるような、無粋な真似をしない大人でありたい。
と、すぐ上で書いたことと真逆のことを書くようで何ではあるのだが、
思春期特有の悩みを上手く出した作品ではあるものの、
この映画で救われたり、人生を見つめ直したり出来るのは、
心の中に僅かながらでも光の欠片を持っている者だけなのでは、と思うところもある。
一度は自殺を完遂出来た真ほど勇気を持たない者、
生きることに絶望しながら、死ぬ勇気も持てず、膝を抱えて震えているような子供達を
救い出すほどの光は、残念ながら本作からは見出せない。
早乙女のような友人も、佐野唱子のような理解者もいない、優しい家族もいない。
自分の置かれている環境を振り返ったり
他人の気持ちを思い遣ったりする余裕など全く無い者にとっては、
この映画の描く希望は、かえって残酷に映ってしまうかも知れない。
アニメーション部分に関しては、CGと背景の合わせ方が不自然なこと、
佐野唱子の風貌が「いじめられても仕方がない子」のようにデフォルメされていることなど、
気になる箇所はいくつかあったのが残念。
無理を承知で言うならば、マッドハウスあたりが作ってくれていればなぁと思う。
劇中でもコーラスとして使用されている、アンジェラ・アキの
「手紙 拝啓 十五の君へ」が泣けたという方ならかなりお勧め。
原監督の「河童のクゥと夏休み」や
最近DVD化されたばかりの「マイマイ新子と千年の魔法」がお好きな方にも。
冒頭でも書いたようにコメディの要素はほぼゼロで、
後半までの溜めが非常に長い作品なので、腰を据えて観に行くべし。
■BD:「河童のクゥと夏休み」
■DVD:「河童のクゥと夏休み 通常版」
■DVD:「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲」
■DVD:「クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦」
■DVD:「マイマイ新子と千年の魔法」
【紹介記事】大人向けの子供用映画。映画「河童のクゥと夏休み」
【紹介記事】普通ってなんだろう。映画「マイマイ新子と千年の魔法」
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タイトル:COLORFUL / カラフル
配給:東宝
公開日:2010年8月21日
監督:原恵一
声の出演:冨澤風斗、宮崎あおい、南明奈、麻生久美子、他
公式サイト:http://colorful-movie.jp/
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