私を工場に連れてって。映画「チャーリーとチョコレート工場」 | 忍之閻魔帳

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■BD:「チャーリーとチョコレート工場」
■DVD:「チャーリーとチョコレート工場」(2008年12月10日発売の廉価版)

誰にでも好き嫌いはある。
万人を満足させる作品などこの世には存在しないと思う。
何かについて「語る」ことを生業としている者ですら、
「好きか、嫌いか」「合うか、合わないか」という、
極めて単純な感想にあれこれと理屈をつけて形にしているだけだ。
今回紹介する「チャーリーとチョコレート工場」も、
結局は私の好みに合ったというだけのことである。
ただ、その合い方が半端ではない。
ジジィ街道をとろとろと徐行運転しているこの私が、
まるで子供のようにワクワクし、心底「夢中になった」作品なのだ。

ティム・バートンの不調を決定づけた「猿の惑星」のリメイクから2年、
2003年の「ビッグフィッシュ」で復活の兆しは見えていたのだが、
昨年「ナイトメアー・ビフォア・クリスマス」の
デジタルリマスター版が公開されたことをきっかけに、
ティム・バートンはいよいよホームグラウンドに戻って来た。
古巣に戻ったティムは、まるで若き日のエネルギーを取り戻したかのように、
楽しそうで怖い、怖そうだけどとびきり楽しそうな
毒気の強いファンタジー世界を、卓越したセンスと
最高の技術、最高の音楽でスクリーンの中に創り上げた。
スタジオジブリ作品や「ハリー・ポッター」シリーズが目指す
「打率8割の大衆向け娯楽」ではなく、
「2割から熱狂的な指示を受けるマニア向け娯楽」の作品なので、
いわゆるファンタジー映画だと思って観に行くと返り討ちに遭う危険もあるが、
バートン作品特有の苦味を承知の上で観に行くなら、
これほど楽しい作品には向こう5年、下手すると10年は巡り逢えないと思う。

敢えて1箇所だけ気になる点を挙げるとするならば、
「チャーリーとチョコレート工場」というタイトルがつけられてはいるが、
これは完全にジョニー・デップが演じる工場主、
ウィリー・ウォンカの物語になっているということだ。
「ウィリー・ウォンカのチョコレート工場」なのである。
チャーリーはあくまでも、ウォンカに招かれた子供達の中で
唯一ウォンカと響き合うだけの少年としてしか機能しておらず、
全編に渡って描かれるのは、ウォンカの歪んだ性格と
そんなウォンカを作り出した過去についてのみ。
私は原作は未読のため、原作ではどういうボリューム配分で
描かれているのか分からないのだが、
もしかするとこの辺に引っかかりを感じる方もいるかも知れない。

個人的にティム・バートンが好きということはもちろんあるが、
それでも間違いなく本年度No.1のお気に入り作品になると思う。
ただし、万人には勧めない。
甘いだけのファンタジーばかり食べさせられて
口の中がヒリヒリしている大人には最高の口直しだ。
「ベルヴィル・ランデブー」に続く大人向けファンタジーとして
一人でも多くの方に劇場で観ていただきたい。
この楽しさを家庭サイズに押し込むのはもったいない。
BD/DVDはあくまでも2度目用に。

小ネタ:劇中に登場するリスはちゃんと訓練された本物のリスなのだそうだ。
    特殊技術を使っているシーンももちろんあるが、
    並んで作業したり音に反応して一斉に振り向いたりするシーンは
    一切手を入れていないのだそうだ。Marvelous!


■CD:「チャーリーとチョコレート工場 オリジナル・サウンドトラック」

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「最上級の甘みと苦み「チャーリーとチョコレート工場」

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  タイトル:チャーリーとチョコレート工場
    配給:ワーナーブラザーズ映画
   公開日:2005年9月10日
    監督:ティム・バートン
    出演:ジョニー・デップ、フレディ・ハイモア、他
 公式サイト:http://charlie-chocolate.warnerbros.jp/
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