10番との出会い 第3話
走りながら学校に向かう亮と稔の眼に、背の高い小学生の後姿が映った。
二人はその小学生に追いつくと、大きな声で挨拶をした。
「仁君、おはよう!」
背の高い小学生は、少し驚いた表情で振り向くと、亮と稔だということに気づき、笑顔で応えてくれた。
「オス!亮、稔。元気がいいな」
大石仁(じん)。
洋光小学校に通う6年生だ。
洋光イレブンのキャプテンでセンターハーフ、そしてもちろん10番を背負っている、みんなの憧れの先輩だ。
「仁君、決勝観ましたか?」
亮が話すよりも先に、稔が大きな声で問いかけた。
「おう。もちろんだ!」
「やっぱり」
「お前らも観たのか?」
仁を真中に挟む形で、3人は歩きながら話した。
「はい。もちろん!」
二人は、ハモりながら答えた。
「ははは。ガキは早く寝るもんだぞ」
「そんなこと言ったって~」
大人びた話し方をする仁の言葉に、戸惑い、返す言葉を探している稔の横から、亮が話しかけた。
「仁君、オレたちでワールドカップ、優勝しようよ」
「優勝?」
「そう。日本代表になって、優勝しようよ」
「ははは・・・。優勝か・・・。そうだな」
少しだけ呆れた表情で仁が答えると、今度は負けじと稔が話しかけた。
「仁君、ワールドカップに出るためには、どうしたらいいの?」
「ワールドカップに出る?」
「そうだよ。出たいんだよ!」
仁は、遠くを見つめながら考えた後、諭すように話し始めた。
「そうだな・・・。まずは日本代表にならなくちゃだめだな。でもな、日本は一度もワールドカップに出場してないんだぞ。だから、もっともっと練習して、上手くならなくちゃいけないんだ。上手くなって、強くなって、洋光イレブンが日本一になったら出れるかもな。」
亮と稔は、歩きながら話す仁の横顔をまじまじと見たあと、その視線を互いの顔に移した。
「稔、日本一だってよ」
「おう!日本一だな」
「でも仁君、どうやったら日本で一番になれるの?」
亮は真剣な表情で、仁に問いかけた。
「さぁな。オレにもわからねぇや。」
「ええ?仁君も知らないの?」
「知らねぇよ。でも、勝ち続ければ、いつかは日本一になれるだろうよ」
「そっか~。日本一か・・・。」
「稔、オレらも日本一になろうぜ!」
「そうだな!」
「頼もしいね~。4年坊は・・・。」
仁は真剣な表情の亮と稔の顔を交互に覗き込み、最後にこう言った。
「まぁ、頑張れや!」
「うん!わかった!!仁君、じゃあね!!」
二人はそう言うと、仁を残して再び全力で走り出した。
朝から元気なやつらだ。
仁は半ばあきれながらも、深夜のワールドカップを観ていたという二人を嬉しく感じた。
二人の後姿が、徐々に小さくなっていくのを見つめながら、学校へと歩を速めた。
「稔、放課後サッカーやろうぜ!!」
「そうだな。オレたちでワールドカップに出ようぜ!!」
「ああ」
校門をくぐると、そこには眩しい朝陽に照らされている見慣れたグランドがあった。
あまりの眩しさに一瞬目をつむった亮の瞼の裏には、熱狂するリバープレート・スタジアムの白い紙吹雪の映像がよみがえってきた。
第4話 に続く・・・
