10番との出会い 第4話
ケンペスの活躍に熱狂したワールドカップから、7か月が過ぎた1月下旬。
息も凍るような寒さの中、亮たち洋光イレブンの選手全員は、県サッカー大会の決勝グランドにいた。
仁をキャプテンとする6年生チームが、決勝の舞台にたち、戦いの真っただ中にいた。
亮たち4年生以下全員が応援団だ。
もちろん、稔も隣で大きな声で応援している。
「なぁ、亮、仁君たち勝てるよな・・・」
「ああ、絶対に勝つさ!なんてったって、仁君がいるからな!!」
互いにチャンスは掴むものの、GKのファインセーブに阻まれ、得点を奪うことができず、ハラハラしながらもイライラするゲーム展開になっていた。
後半も残り数分という時間帯で、未だ両チームとも無得点だ。
洋光イレブンの攻撃は、いつも仁から始まる。
相手の激しいマークにあいながらも、卓越したボールコントロールでパスを供給して、多くのチャンスを作るものの、相手ディフェンスの強さにフォワードがつぶされてしまう。
たまにシュートまで行くものの、無理な体制だったり、ゴールまでの距離が離れていたりして、決定機まで行かないのだ。
本来ならパスを出した仁が、相手ゴール前まで駆け上がり、シュートを狙うのだが、相手チームのカウンターを警戒するあまり、そこまで上がることができない。
残り時間1分を切ったところで、仁からのパスが奪われ、相手の縦に速い攻撃が始まった。
素早く戻る洋光イレブンの選手たちよりも、相手フォワードが速く抜け出し、ペナルティエリアに侵入したと同時にシュートを打たれた。
鋭く低い弾道のボールが、サイドネットめがけて飛んでいく。
「やべ~~~!やられたか!!」
思わず亮が叫んだ。
稔は目を覆った。
が、次の瞬間、洋光イレブンの守護神、晃輝が横っ飛び。
ボールを両手でがっちりとキャッチした。
「晃輝!サンキュウ!!オレによこせ!!」
叫んだ仁に、晃輝が反応した。
「仁、行くぞ!」
晃輝は、素早く起き上がると、そう叫び、センターサークル付近でボールを要求している仁めがけて、ボールを蹴りあげた。
そのボールは、まるで仁に吸い込まれるかのように見えた。
仁はマークを背負いながらも、しっかりとボールをコントロールし、左サイドを駆け上がるウィングにスルーパスを出した。
すぐさま、走り出し、ペナルティーアーク内で、再びボールを要求した仁に、左ウィングから絶妙のセンタリングが上がった。
そのボールを胸でトラップし、ペナルティエリアへ進入すると、洋光イレブンにとって、最大のビッグチャンスが訪れた。
しかし、相手のセンターバックとスイーパーが激しく襲いかかる。
仁は冷静だった。
右前方約1メートルの位置にセンターバック、正面約2メートルの位置にスイーパーがいるのが見えた。
胸でトラップしたボールが仁の足もとに落ちる。
その瞬間を狙って、センターバックが猛然とスライディングタックルで突っ込んできた。
ボレーシュートか?いや無理だ!
仁は、ボールが地面に落ちた瞬間を見計らい、左足アウトサイドで軽く左前方にコントロールすると同時に、軽いフットワークで左斜め前方に跳ねた。一瞬でセンターバックとすれ違った。
ワンタッチでセンターバックをかわす見事な技術だ。
が、次の瞬間、スイーパーが右足を伸ばしながら、ボールめがけて突っ込んできた。
来たな!
仁には余裕があった。
センターバックをかわす前に、スイーパーが突っ込んでくる場所とタイミングまでも計算に入れていたのだ。
スイーパーがボールに触れたと思った瞬間、仁の左足インサイドがボールに触れていた。
やわらかなボールタッチで、右前方へボールの方向を変えると同時に、仁も右前方へと跳ねた。
スイーパーをも簡単に置き去りにしてしまった。
たったツータッチで、二人のディフェンダーを置き去りにしたテクニックは華麗だった。
「うぉ~!すげぇ~~!!ケンペスだ!!」
亮は絶叫した。
あと1人!
仁はあくまでも冷静だった。
得点までに邪魔な相手は、GK一人だけだった。
第5話 に続く・・・
